国際輸送において、確実に代金を回収できる決済方法を選ぶことは非常に重要です。
取引先との信頼関係を考慮しつつ、時間的、金銭的なリスクとコストが低い決済方法を選ぶには、決済方法の種類と、それぞれの特徴について理解することが必要です。
この記事では、貿易取引における信頼性と代金回収のリスクと、決済方法の種類、各決済方法の特徴や、メリット・デメリットについて詳しく紹介をしていきます。
目次
貿易取引における信頼性と代金回収リスクとは
貿易取引にどのようなリスクがあるかをまず知ることが、国際輸送における決済方法を決める上で大切です。
決済に関するリスクは2つあります。
- 取引先企業の信頼性リスク
- 代金回収リスク
それぞれについて見ていきましょう。
信頼性リスクについて
貿易における取引相手は外国企業であることから、当然、言語、商習慣、法律、社会情勢などが大きく異なっています。そのため、日本企業と取引する時よりも慎重な与信管理が必要です。
契約を行う前に、信用調査機関を利用して取引先の信用状態を調査することで、代金を確実に回収できるようにしましょう。
また、商品の価格、梱包、品質条件、納期、支払い方法と時期、貨物保険や輸送費などといった条件を契約書に記載しておくことも必要になります。これは、海外の企業は契約書に書いていないことはやらない場合があるためです。
代金回収リスクについて
国内取引と違い、輸送距離の長い貿易取引では、商品の受け渡しと同時に代金を回収することが難しいです。一般的には、商品の受け渡し前か、受け渡し後に支払いを行います。
前払いと、後払いのリスクは下記になります。
- 前払いの場合は、輸入者が商品の受け取り前に支払いを行うため、商品を受領できないリスクがある
- 後払いの場合は、輸出者が商品を出荷した後に代金回収を行うため、代金が未収になるリスクがある
信頼性と代金回収のリスクを回避するためにも、最適な決済方法を決める必要があるのです。
どのような決済方法があるかについて見ていきましょう。
信用状L/C付荷為替手形決済とは
信用状L/C付荷為替手形決済とは、輸入者と輸出者との売買契約の内容に基づいて、輸入地の銀行で発行された信用状L/Cを使用した決済方法です。
信用状L/C付荷為替手形については、別記事で詳しく解説をしているのでご参照ください。
国際輸送において、輸出者は商品の輸出から輸入者が支払いを行うまでが代金回収のリスクになります。一方で、輸入者にとっては、代金を支払ってから商品を受け取るまでが、資金的なリスクです。
信用状L/C付荷為替手形を使用した決済を行うことが、双方にとってのリスクを軽減する上で有効です。
信用状L/C付荷為替手形による決済では、信用状L/Cの発行銀行が輸入者による支払いを保証し、万が一、輸入者が支払いを行えない場合の保証人になってくれます。
さらに、輸出者は荷為替手形の輸出地銀行への提出時に、銀行から代金を回収することができます。
銀行の保証があるため、輸出者は確実かつ迅速に代金を得ることができるのです。
一方で、輸出者は輸入者との売買契約内容に基づいた船荷証券を輸出地の銀行に買い取ってもらう必要があるため、輸入者は確実に売買契約書通りの商品を受け取ることができます。
信用状L/C付荷為替手形による決済のデメリットは下記になります。
- L/C開設のための銀行手数料が発生する。
- 銀行が間に入ることで工数が増え、商品受け渡しに時間がかかる
補足情報となりますが、新興国にある銀行が信用状L/Cを開設する場合には、先進国にある銀行に信用状L/Cを確約してもらった方が良い場合があります。仮に発行元銀行で支払いが行えない場合は、確約を行なった銀行が決済の保証をしてくれるからです。
信用状L/Cを使用しない荷為替手形決済とは
信用状L/Cを使用しない荷為替手形決済には2種類あります。
- D/P(Documents against Payment)決済
- D/A(Documents against Acceptance)決済
それぞれの特徴について見ていきましょう。
D/P(Documents against Payment)決済とは
D/P(Documents against Payment)決済では、輸入者が、為替手形代金の支払いを輸入地の銀行に行うことで、船荷証券を受け取り、商品の引き取りを行います。
輸出者にとっては商品を受け渡す前に、代金を回収できることがメリットです。
ただし、何らかの事情で輸入者が受け取りを拒否した場合には、積み戻しや、他の販売先を探すことになるといったデメリットがあります。
一方で、輸入者は支払いを行わないと、売買契約書通りの商品であるかどうかの確認ができないことから、不利な契約条件であると言えるでしょう。
D/P決済は、輸入者が手形を一覧してから決済を行うことから、一覧払手形(At Sight手形)と呼ばれることがあります。
D/A(Documents against Acceptance)決済とは
D/A(Documents against Acceptance)では、輸入者が、輸入地の銀行に対して、為替手形の代金を期日までに支払うことを約束することで、船荷証券の受け取りと、商品の引き換えを行います。
決済を行う前に船荷証券と商品を受け取れるため、輸入者にとっては有利な条件であると言えるでしょう。
反対に、輸出者にとっては、代金回収前に商品の所有権が輸入者に移るため、未収のリスクがある決済方法となります。
D/Aの支払日は下記の2種類です。
・一覧後定期払い
輸出者が、輸入者に対して、為替手形受領後◯◯日後に支払うことを要求するものです。
支払い期限である〇〇の日付は、輸出者が決めます。
例えば、為替手形に「At 60 days after sight」と記載されている場合は、輸入者は手形を受け取ってから60日以内に支払いを行うことが必要です。
・確定日後定期払い
「At △△ days after 〇〇 date」というかたちで表記されます。
〇〇に記載された確定日後の、△△日後に輸入者は支払いを行わなければなりません。
〇〇にはB/L Dateなどが記載されることが多いです。
電信送金(T/T)決済とは
電信送金(T/T)決済とは、輸入者が商品代金を、輸入地の銀行(仕向銀行)から、輸出者の取引銀行(支払銀行)に送る海外送金のことです。
仕向銀行から、支払銀行への支払指示が電信(Cable)で行われることから、電信送金(Telegraphic Transfer 略称:T/T)と呼ばれています。
電信送金(T/T)決済は、荷為替手形決済(信用状L/Cあり、なしを含む)に比べて、下記のメリット、デメリットがあります。
メリット
- 銀行手数料がL/Cより安い
デメリット
- 輸入者が契約通りに送金するか分からないリスクがある
- 輸入者が全額を送金しても、輸出者が契約通りに出荷しないリスクがある
時間とコスト的な利点はありますが、信用性のリスクが存在するということです。
リスク回避のために、送金を商品受け取り前と、受け取り後の2回に分けるのが一般的です。
取引先との信頼関係に基づいて、前金と後金の割合が決められます。
補足になりますが、海外送金には、電信送金(T/T)決済以外に2種類あります。
普通送金(Mail Transfer 略称:M/T)
仕向銀行から、支払銀行への支払い指示を、電信ではなく、郵便で行うものです。
電信に比べて手数料は安いですが、郵送のため時間がかかります。
送金小切手(Demand Draft 略称:D/D)
仕向銀行が発行した送金小切手を、輸入者が輸出者へ送付し、輸出者が支払い銀行で現金化します。
決済方法はどう選ぶべきか
取引先との信頼関係、所在国固有のリスク、商品受け取りや、代金回収の希望時期などを総合的に判断した上で、輸入者と輸出者双方にとって合意可能な決済方法を選ぶことが必要です。
例えば、初めての取引の場合には、確実な代金回収を行うために、信用状L/Cを使用して決済を行うことが多いです。
信用状なし(D/P、D/A)決済の場合には、貿易保険を掛けることで、代金未収のリスクに備えることができます。
どのメリットを選び、どのリスクを避けるべきかを慎重に判断した上で、最適な決済方法を選びましょう。
まとめ
信頼性、代金回収のリスクを避けるためには、それぞれの決済方法について理解することが必要です。
最小限の時間、コスト、リスクで取引を進められるようにしていきましょう。
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