海外への輸送では、日本から出荷されるパレットやカートン、木箱、木枠などに「ラベル」が貼られています。
このラベルはどのように使い分けたらいいのでしょうか。
日本国内で輸送されるのとは違い、世界各国の貨物が日夜、空港や港で積み下ろしされています。
どこからどこに向けて輸送されている貨物なのか、外箱に目印がなければ倉庫で実際の荷役作業をしている作業者には伝わりません。
どこのだれが見ても、書類と照合できるように外箱に貼り付けたり印刷した印のことを「荷印(ケースマーク)」といいます。
今回はこのケースマークについて、詳しくご紹介していきます。
目次
荷印(ケースマーク)の役目は?
貨物の外装に表示されるマークのことを、荷印(にじるし)またはケースマーク(Case Mark)、シッピングマーク(Shipping Mark)と呼びます。
どれも同じ意味で使われ、国際輸送において欠かせない情報表示のひとつです。
ケースマークがなければ、貨物がどこへ運ばれるか、何個あるかが外見から分からず、現場での仕分けや積み替えに大きな支障をきたします。
港や空港、倉庫では毎日大量の貨物が動いているため、作業者は外装に記された情報だけを頼りに貨物を取り扱います。
そのため、ケースマークがあることで、たとえば「この貨物は〇〇行きで、全部で20箱ある」といった情報が一目で把握できるようになっているのです。
ケースマークは、目につきやすい位置(通常は側面)に大きく明確に表示されます。
また、国際輸送ではコンテナを経由して複数の拠点で積み替えられることも多く、同じコンテナに異なる宛先の貨物が混載されている場合もあります。
そのようなときに、ケースマークが**書類と貨物を正確に照合するための目印”**としても活躍します。
では実際に、どのようなケースマークが使われているのか、次の章で具体的に見ていきましょう。
荷印の記載事項
ケースマーク貼付けの目的は、下記のようなものが挙げられます。
- 梱包された貨物の中身の判別ができるようにする
- 積み下ろしの際、貨物の仕分けをスムーズにする
- 取り扱いに関する注意喚起をする
- 保管時の特別指示なども可能
- ケースごとの重量や容積が判別できる
- 複数の貨物に連番を付け、紛失を防止する
- 書類と実際の貨物の情報を照合しやすくする
では、こうした目的を達成するためには、ケースマークにはどのような情報を記載すればよいのでしょうか。
記載事項には決まりがある?!
基本的に、ケースマークに記載する内容は法律などで明確に定められているわけではありません。
そのため、情報を多く載せたほうがよいように思えるかもしれません。
しかし、情報量が多すぎると、かえって現場で混乱を招くことがあります。
なぜなら、ケースマークは貨物に付けられるだけでなく、書類にも記載されなければいけないからです。現物と書類は必ず一致しなければいけないので、あまりにも多くの情報を載せてしまうと、現物のケースマークは見にくくなり、書類のほうは記載を間違えやすくなってしまうリスクが出てきます。
また、信用状(L/C)取引や荷受人からの指示がある場合には、指定されたケースマークその通りに表示する必要があります。
その時は、指示に従って、指定されたケースマークを貼り付ける必要があるので、一度ケースマークを作成し、写真などで先方に確認してもらうのも一つの方法です。信用状取引の場合は、特に気をつけて一言一句、間違いの無いようケースマークを作成しましょう。
*注意:日本から出荷するからといって「MADE IN JAPAN」の記載には注意が必要です。
原産地の情報は重要で、真に日本製でない商品に MADE IN JAPANを表記してしまうと、相手国で輸入許可が下りない場合もあります。
危険品のラベルには細かな規則がある
一般的な貨物と異なり、危険品(Hazardous Materials)を輸送する場合は、国際的なルールに従った専用のラベル表示が必要です。
たとえば、リチウム電池や化学薬品、可燃性ガスなどは、国連番号(UN No.)やクラス(Class)を明記した標準ラベルを貼付しなければなりません。
これらは国連の「危険物輸送に関する勧告」や、IMO(国際海事機関)、IATA(国際航空運送協会)などの規定に従って表示する必要があり、貼り方・サイズ・位置にも細かなルールがあります。
表示が不十分だったり、間違っていた場合、通関がストップしたり、輸送自体が拒否されることもあるため、危険品を扱う場合は専門業者への確認や法令チェックが必須です。
代表的な荷印の決め方
特に決まった様式のないケースマーク。では、どのようなものが一般的に使用されているのでしょうか。
ここでは、ケースマークの具体的な記載例を何例か挙げてみたいと思います。
一般的には下記のような情報が記載されることがあります。
- 仕向地(DESTINATION)
- 荷主名(SHIPPER/COMPANY NAME)
- 重量(NET WEIGHT, GROSS WEIGHT)
- 容積(MEASUREMENT)
- 通し番号(C/NO.〇〇)
- マーク(ひし形や長方形、丸に囲まれたマーク)
具体例1)
USA, CHARLOTTE
OTS ASTRACON
C/NO.1-30
G.W.30KGS
意味:USAのCHARLOTTE向け、荷主は、 OTS ASTRACON様、ケース(またはカートン)が1から30まであり、重量は1箱30キロあります。という意味になります。
具体例2)
意味:BUENOS AIRES向け、荷主は OTS INTERNATIONAL様、パレットが1から2まであります、という意味になります。
荷印と書類の一致
ケースマークは、梱包後の貨物に貼り付けます。そして、通関書類や船積書類にも記載しなければいけません。
通関書類であれば、パッキングリストへ「Mark」として、また保険証券や原産地証明書、税関申告書類などにケースマークを記載されます。
船積書類であれば、B/L(船荷証券)または航空貨物運送状(AWB)のMark欄へ記載されます。この時、どちらの書類も英語で書かれますので注意しましょう。
例外として、中国向けなどは漢字を入れたケースマークで出荷される荷主様もまれにいらっしゃいます。しかし、国際貨物では荷役作業者がわかりやすい、また判別しやすい言語を使うことも想像に難くないでしょう。
では、実際に英語ではどのように書くのか、上記の具体例を使って表記してみましょう。
具体例1)英訳
USA, CHARLOTTE
OTS ASTRACON
C/NO.1-30
G.W.30KGS
具体例2)英訳
BUENOS AIRES
OTS
INTERNATIONAL
P/#.1-2
(IN DIA.)
このように、枠でかこまれたものはその形も表記します。
○の場合は、IN CIRCLE。△の場合は、IN TRIと書きます。
ケースマークは、カートンで出荷する場合はカートンの外装に貼ります。
パレットの上に積んで出荷する場合は、パレットに載っているカートンをしっかりとラップで巻いてその外装にケースマークを貼りましょう。(カートンそれぞれに貼ると、書類のケースマークと相違が出てきてしまいます。)
LCL(小口貨物、混載便)の場合はケースマークが無いと、海外で貨物の紛失のリスクが上がってしまうので、引き受けてくれない混載業者さんがほとんどです。
FCLとLCLで異なるラベル表示とは?
国際輸送では、コンテナ単位で貨物を輸送するFCL(Full Container Load)と、複数の荷主がコンテナを共有するLCL(Less than Container Load)の2つの方法があります。
この違いにより、ラベルの貼り方や記載内容も変わってきます。
FCL(コンテナ貸切)の場合:
FCLでコンテナまるまる一本の中に貨物を積み込んで、荷受人のもとへ届けられるまで荷下ろしされない貨物については、ケースマークを必ずしも貼付けする必要はありません。その場合は、書類にN/M(NO MARK)と記載します。
基本的に荷主が自由にラベルやケースマークを決められるため、企業ロゴや独自のコードを使うことも可能です。一方で、コンテナ番号やシール番号の管理が重要になります。
LCL(混載便)の場合:
他社貨物と一緒に運ばれるため、仕向地・荷主名・通し番号などを明確かつシンプルに表示する必要があります。
倉庫での仕分けミスを防ぐため、視認性の高いラベルが求められます。
輸送形態に応じて、適切なラベル表示を使い分けることで、誤配送や紛失のリスクを抑えることができます。
まとめ
国際輸送におけるケースマーク(荷印)は、貨物を確実に目的地に届けるために重要な役割を果たします。
基本的な記載事項を押さえ、書類との一致を徹底することで、トラブルのないスムーズな輸送が可能です。輸送先や輸送方法に応じて適切にケースマークを記載し、貿易実務を円滑に進めましょう。
海外から輸入される時に目にする段ボールも、ケースマークをよく見てみると段ボールの中に何が入っていたのか、想像するのも面白いですね。
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