イタリアといえばファッションを思い浮かべる人が多いと思いますが、イタリアからの輸入品は1位が食品・飲料・たばこ、2位が繊維・衣料品・皮革製品、3位が輸送用機器となっており、日本からの輸出品目は1位が輸送用機器2位が一般機械、3位が医薬品であり意外な結果になっています。イタリアはEUに加盟しているので輸出する際はイタリアの法令のほかにEUの法令にも注意する必要があります。この記事ではイタリアに輸出する際のポイントや注意点を解説していきます。(JETRO2020のデータよりhttps://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/0e98cb4a809a27a6.html)
目次
輸出に際し注意すべき法令
輸出に際しては日本国内の法令、EU圏内の法令、イタリア国内の法令に留意する必要があります。これらをクリアしていないと最悪輸出、輸入ができないという事態に陥りますので事前の調査は必須です。以下にて順に解説をしていきます。
日本国内
日本から商品を輸出する際は、イタリア向けに限らず守らなくてはならない法令があります。それが「貿易管理令」です。輸出する商品がこの「貿易管理令」に該当する商品かどうかを事前に確認し、必要な場合は経済産業省などに輸出許可の申請をしなくてはいけません。
貿易管理令は、日本から海外に製品や技術を輸出する場合に、国際平和と安全保障の維持のために遵守しなければならないルールを定めた命令です。
主な内容は以下の通りです。
- 輸出を規制する貨物や技術のリスト(輸出貿易管理令別表)があり、これらを輸出するには経済産業大臣の許可が必要。
- 輸出する製品や技術が軍事転用される恐れがある場合、事前確認が必要。
- 輸出先や needs 者が治安維持の観点から問題がある場合、許可が下りない。
- 許可なく戦略物資等を輸出すると罰則が適用される。
この法律の目的は国際平和を守ることです。輸出者はこの法律に従い、禁輸品の輸出防止に努めなければなりません。この貿易管理令の中に出てくる輸出貿易管理令別表については以下に詳しく説明しました。
輸出貿易管理令別表とは、規制対象となる貨物や技術のリストです。主に、武器や双用品(軍事及び民生の両用途に用いることができる貨物)がリスト化されています。リストに掲載された品目を輸出する場合、経済産業大臣の許可が必要となります。別表には15項目が記載されており、1項は武器、2項は天然ウランなどが規制対象となっています。貨物の他、技術やソフトウェアも規制対象としています。リストは国際レジームに合わせて定期的に更新されています。ですから自社の輸出品がリストに該当するか注意して確認する必要があります。リストは経済産業省のウェブサイトでも確認できます。
このように、輸出貿易管理令別表は、国際平和を守るための重要なリストとなっています。
EU圏内
EU域内への商品輸出には、EUの域内流通を意識した関税と消費税の処理が必要です。
具体的には、EU加盟国間の貿易で適用される「関税同盟」のルール下、域内移動の場合は関税が課されませんが、日本からの輸入の場合は「共通関税」が課税されます。EU関税同盟は、EU域内の流通においては関税が存在しないルールです。EU加盟国間では商品の自由な移動が保障されています。他方、共通関税は、EU域外からの輸入に対して課せられる統一された関税率のことです。EU外の国々からEU加盟国に商品を輸出する場合、この共通関税が課税の対象となります。
共通関税の税率は、EUが各商品に対して一律のパーセンテージで設定しており、域外輸出国ではこの税率を踏まえた上で輸出価格の設定が必要となります。
また、EUDirectivesと呼ばれる欧州指令において、製品の安全基準や表示ルールなどが規定されており、これに適合しなければEU全域での販売ができなくなります。EU Directives(欧州指令)とは、EU法の一つで、加盟国に特定の目的を達成するために国内法制化を義務付けるものです。
例えば、製品の安全性や環境基準など、共通ルールをEU域内で担保することを目的としています。
指令が制定されると、EU加盟国の政府や企業は指令に定められた要件を国内法に取り入れる必要が生じます。
したがって、EU市場で事業を行ううえで、自国の法だけでなく、EU指令の内容も熟知しておくことが極めて重要です。特に指令で定められた基準に違反していると、EU全域での販売ができなくなることがあり得ます。事前確認が必須です。
特に食品の場合、 contained 残留基準など独自の規制基準が設けられているので、事前確認が必要不可欠です。EUの農薬残留基準(MRL)について、説明します。EUでは、食品および飼料に含まれる農薬の残留量について、独自の上限基準値を設けています。これをEUの農薬残留基準(MRL)といいます。日本とは異なる独自基準があるため、これに適合しない農産物はEU市場に出荷できません。基準は農薬および食品ごとに numeric 値で定められていて厳しいものが多いです。例えばリンゴの場合、多くの農薬で 0.01ppm 程度までと非常に低い値となっています。したがって農産物のEU向け輸出には、個々の商品のEU基準値を事前に確認し、基準適合を証明する残留農薬検査などの準備が欠かせません。
このようにEU圏内の基準および法令をまずはチェックする必要があります。
イタリア国内
イタリアでは食品に関する安全基準を独自に設けている場合が多く、その確認が必要です。
例えば日本の基準値よりも厳しい残留農薬基準を設定している食品があり、これに違反すると販売できません。
また食品添加物などにも独自規制があり、表示義務となるものが日本とは異なります。輸入食品の表示ルールもあるので確認が必要です。イタリア向け食品輸出における注意点ついて、より詳しく説明します。
イタリアでは食品衛生法の下、食品や添加物に対する独自の基準値や規制を設けています。特に残留農薬や食品添加物、微生物数等の許容基準がEU基準よりも厳しいものが多数存在します。例えばトマトの農薬残留基準値はEUの5倍近く厳しいものが一部に設定されています。また原産地表示や製造工場名、輸入業者名を表記する義務もあるなど、表示規制もEU各国の中で最も厳しい部類に入ります。
こうしたイタリア国内基準や表示ルールの確認を怠ると、市場で流通ができなくなるリスクが生じます。イタリア当局もこの点の取締りを厳しく行っていると言われています。日本国内とは異なる規制基準を事前にチェックし対応することが鍵となります。
工業製品でも、EUの指令に加え、イタリア国内法の安全基準をクリアする必要があります。イタリアでは、他のEU加盟国同様、さまざまな工業製品に対して、安全性や品質管理などに関する基準が定められています。
特に、電気電子機器や化学製品、自動車などの分野では、イタリア国内法またはEU指令による認証取得が義務付けられており、これらの認証なくしては販売が禁じられています。
例えば、ある電気製品をイタリアで販売する場合、電気用品安全法(LVD) に適合していることを示す「CEマーク」の表示が必須とされています。CEマークは、European Conformity(ヨーロッパ適合性)の略で、製品がヨーロッパの法規や安全基準に適合していることを示すためのマークです。イタリアを含むヨーロッパ諸国では、CEマークがないと製品を市場に出すことが難しい場合があります。以下は、CEマークについての基本的なポイントです。
CEマークについて以下にて説明します。
CEマークは、ヨーロッパ経済圏内で自由な貿易を促進し、安全で効果的な製品を確保することを目的としています。
- 製品の範囲:CEマークは、特定の製品カテゴリーに適用されます。異なる製品には異なる規制があるため、製造業者は対象製品ごとに適切な規制を確認する必要があります。自己宣言と適合性評価:製造業者は、製品が適切な基準に適合していることを保証する責任があります。これには、自己宣言と呼ばれるプロセスが含まれます。
- 適合性評価の方法:製品の種類により異なりますが、一般的な適合性評価の方法には、モジュールA(内部製造規則に従う)からモジュールH(品質保証の取り決めに基づく)までがあります。
- EU指令と基準:各製品は特定のEU指令に基づき、それに従った基準を満たす必要があります。例えば、機械指令、低電圧指令、EMC指令などがあります。
- 技術文書の作成:製造業者は、製品に関する技術文書を作成し、当局に提出する必要があります。この文書には製品の設計、製造、性能などに関する情報が含まれます。
- CEマークの取り付け:適合性が確認されたら、CEマークを製品に取り付けることが許可されます。このマークは一般に製品の上に容易に可視できる位置に配置されます。
- 市場監視:製造業者が製品を市場に投入した後も、市場監視が行われ、製品の安全性や適合性が継続して確認されます。
CEマークは、ヨーロッパ市場にアクセスするために重要な要素であり、製造業者はこれらの規制に従い、製品の安全性と適合性を確保するために努力する必要があります。
このように、イタリアでは国内法やEU指令に基づく認証や表示を商品に付与することが、法的な市場アクセス条件として要求されているという点に注意が必要です。
イタリアに輸出する際に特に注意する点
注意する点を以下にてまとめました
- 貿易管理令を必ずチェックする
- イタリアの安全規格認定を取得する
- 製品の電源仕様をEUの規格に合わせる
- イタリア語による取扱説明書を同梱する
- ステッカーや印刷された包装紙へのイタリア語表記
- プラスチック製や金属製品の有害物質規制への適合
- 消費者保護法に基づく欠陥製品の無償修理義務
- 製造物責任法の下での補償責任とリコール調査権限
- 「Made in Japan」の標記と国別表示規則を確認
以上が主なポイントです。認証取得と安全基準適合が必須不可欠な点に注意が必要です。日本、EU、イタリアそれぞれの法令に注意を払う必要があります。
船積手配
具体的に船積み手配の手順を船の場合と飛行機の場合に分けて説明いたします。分かりやすくするために東京とミラノを例に挙げて説明します。
船便の場合
東京からミラノを例に挙げて説明します。東京港からイタリアのミラノ港まで海上輸送する場合の所要日数は、およそ以下の通りです。
- コンテナ船の場合: 25~30日程度
- 貨物船の場合: 30~35日程度
大まかな目安としては上記のとおりです。コンテナ船の方がややスピード重視型の船舶デザインのため、所要日数は貨物船よりも短くなっています。ただし実際の日数は、寄港地の有無や航路選択、運航する船舶によって多少の増減が生じます。また混雑シーズンなども所要日数に影響します。一例として、コンテナ船でシンガポール・ロッテルダム経由で30日程度、貨物船では33日程度の日数がかかる例もあります。
東京からイタリアのミラノへ船便で商品を輸出する手順を、説明します。
- イタリアの企業と契約を締結します。
- 船会社との間で、運賃やスケジュールを確認した上で輸送契約を結びます。
- 通関に必要なインボイスやパッキングリストなどの書類を作成します。
- 工場で商品をコンテナに詰め、東京港の埠頭まで陸送します。
- 東京港で船会社に対して書類を提出し、税関の出口通関手続きを行います。
- 船積みされた商品が船便でイタリアのミラノ港まで海上輸送されます。
- ミラノ港で入口通関が行われ、輸入通関書類を税関に提出します。
- ミラノ港からイタリア国内の輸入業者の工場等に陸送されます。
以上が基本的な流れです。
飛行機便の場合
東京(成田)空港からイタリアのミラノ空港へ航空便で商品を輸送する場合、所要日数は以下の通りです。
- 直行便の飛行時間は約12-13時間
- 週に2-3便程度の直行便が就航
- 1泊2日の行程で成田発ミラノ着まで2-3日
- 荷物数により、寄港便を利用する可能性も
上記の通り、航空機の場合は船舶の1/3程度の日数でミラノへの輸送が可能です。
寄港回数や使用機材にもよりますが、おおむね2-3日程度でイタリア到着できることがメリットです。輸送日数を優先する場合に有効な手段といえます。東京(成田)からイタリアのミラノへ航空機で商品を輸出する手順を解説します。
- イタリアの輸入者と航空輸送契約を締結します
- 成田空港の貨物取扱会社に輸送申込みと通関書類を提出します
- 商品を工場から成田空港までトラックなどで輸送します
- 成田で税関の出口通関手続きと安全審査を受けてもらいます
- 航空機でミラノ空港まで輸送されます(通常2~3日)
- ミラノ空港で入口通関(本通関)と、税関検査を受けます
- ミラノ空港から輸入者指定の工場や倉庫に配送されます
以上が基本的な手順です。
輸出後のフォロー
日本からイタリアへの製品輸出後に、日本側で行うべき業務やフォローについて説明します。
- 船積み書類をメールかFAXで相手企業に送付
これによりイタリアでの輸入通関がスムーズに行われます。
- 代金決済の確認
輸出代金の入金が問題なく行われているかを必ず確認します。
- クレームへの対応
製品の不具合でイタリアからクレームが寄せられる可能性があるので、迅速な対応が必要です。
- イタリア輸入者との継続取引交渉
今回の輸出実績を基に、イタリア側に追加発注を働きかけるなど、継続取引につなげる交渉を行います。
- 実績データの記録と分析
今回の輸出事例をデータ化し、次のイタリア向け輸出業務に活用していきます。
以上が主なポイントです。イタリア側とのパイプ作りが鍵になります。
まとめ
イタリアに輸出するときのポイントや注意点を解説してきました。実際の輸出業務は乙仲を利用すればスムーズに行うことができます。特に注意すべきは日本国内、EU圏内、イタリア国内の法令や制限です。事前にしっかりと調査して早めの対応をしておきましょう。法令は急に変わることもあるので事前の調査が重要です。早めの対応と事前の調査をおこないスムーズな輸出業務を進めてください。