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海上輸送における共同配船とは 単独運航やスペースチャーターとの違いとともに解説

船腹と呼ばれる、船舶の貨物積載スペースは1社、複数の船会社、または、船会社と非船舶運航業者によって運用がされています。

貨物の大きさ、航路と寄港地の需要、積載効率や船腹の回転率などの要素によって、共同配船にするか、単独運航にするか、複数の非船舶運航業者に積載スペースを売るかが決められます。

共同配船、単独運航、スペースチャーターそれぞれの特徴とメリットを見ていきましょう。

共同配船の特徴とメリットの解説

共同配船とは、1隻の定期船を複数の船会社が運航することです。

船会社ごとに船積スペースを提供して、荷受量に応じた運航コストを各社で分担しています。

共同配船のメリットをまとめました。

  • 最小限の船舶保有数で運航できる
  • 複数の船会社が貨物を受けることで貨物の積載量が上がる
  • 船舶1隻ごとの荷受量(積載率)が上がるので、貨物ごとの輸送コストを減らせる
  • 少数の船舶を高頻度で運用できるので、顧客にとっての利便性が上がる
  • 船腹の利用率が上がる
  • 採算の合わない運航をしなくてよくなる
  • 他社の航路や寄港地を使うことができる
  • 船社同士が競合関係にならない
  • 本船の運用率を上げることで、寄港地が多いことによる燃料費や入出港費の負担が減る

共同配船の特徴をさらに見ていきましょう。

  • 他社船舶を共同利用している船会社もある

他社船舶に共同配船している船会社は、自社に割り当てられた船腹スペースに対して荷受とB/L(船荷証券)の発行を行います。

  • 本船の運用は本船を運航している船会社が決める

共同配船で使用される船の運航スケジュールは、本船の運航を行っている船会社が決めています。

他の船会社には航海中の寄港地、寄港する曜日も含めて運航についての決定権はありません。

運航船会社以外にとっては、航海日数が長くなってしまったり、定曜日機構サービスができなくなったりするデメリットがあります。

本船を運航する船会社は、共同配船する船会社の意向を可能な限り尊重する必要があります。

  • 他社に割り当てられた船腹スペースは使用できない

1つの船会社で使用できる船腹スペースは割り当てによって決められており、他社が使用するスペースを使うことはできません。

共同配船の例

共同配船の1つの例として、グアム・サイパンを含めたミクロネシア航路があります。1つの船会社でコンテナ船1隻を使用するには採算がいいとは言い難い航路です。

そこで、コンテナ以外の貨物を積載できる多目的船を共和海運社、FSM Line社、WESPAC-Kyowa Shipping社が共同配船することで、アジア各港からミクロネシア諸港に様々な貨物を海上輸送しています。

ミクロネシア航路の運航は3隻の多目的船を中心に運用がされています。

多目的船と共同配船を併用することで、コストを抑えた効率のいい運航ができるのです。

アライアンス-経営戦略としての共同配船

近年、大手の船会社が提携して共同配船を行うことが主流になっています。

船会社には顧客ニーズの多様化と高度化に対応できる運航サービスが求められています。

しかし、船舶の造船と運航には大きなコストがかかるため、多くの船会社が共同配船を経営戦略に取り入れているのです。

船会社はかつて、コンテナ船不足によって海上運賃が値上がりした場合は、造船をすることで保有隻数を増やし、値下げをしていました。

しかし、結局は船が再び余ってしまうようになるため、この方法では採算が合いません。

莫大な費用がかかるコンテナ船の大量造船と、過度な値下げ競争により2016年には多くの船会社が赤字になりました。

船会社が経営状態を改善するためには、アライアンスと呼ばれる共同配船提携を組むことによる輸送の効率化と荷受率の向上が必要だったのです。

現に、世界全体で使用される船舶の積載スペースの8割は3つの海運アライアンスによって使用されるまでとなりました。

3大海運アライアンスは下記になります。

  1. 2Mアライアンス
  • 海運業界で1位の船腹量を持つマースクと2位のMSCのアライアンス
  • 合計TEU(20フィートコンテナで換算した貨物量)は874万
  • 業界シェア34%
  1. オーシャン・アライアンス
  • 保有船腹量3位のCMA-CGM、4位のCOSCO、6位のEVERGREENによるアライアンス
  • 合計TEUは775万
  • 業界シェア30%
  1. ザ・アライアンス
  • 保有船腹量5位のハパックロイドと7位のONE(日本郵船、商船三井、川崎汽船3社によるアライアンス)、8位の現代商船、9位のヤンミンで構成されている
  • 合計TEUは475万
  • 業界シェア19%

アライアンスには大きな収益効果があります。

海運業界の再編と、共同配船による運航の効率化は今後も続くことが予想されています。

一方で世界の海上輸送量は増加傾向にあります。公益財団法人日本海事広報協会発行の「SHIPPING NOW 2021-2022」では、2020年の輸送量は110億トンです。

限られた船腹で、増え続ける貨物量に対応していくということもあり、以前のように船賃が安くなる可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。

荷主は、自社に必要な積載スペースの確保と海上運賃の2つの要素を考慮しながら、船会社との輸送契約を行なっていく必要があります。

単独運航の特徴とメリットの解説

単独運航とは、定期航路運航を1社のみで独占的に行うことです。共同配船やスペースチャーターでは対応できない自動車やLNGなどの大型貨物輸送を行えるメリットがあります。

スペースチャーターの特徴とメリットの解説

スペースチャーターとは、自社で定期船の運航をしていない非船舶運航業者が、本船運航船社から譲り受けた船腹スペースを荷主に売ることです。

非船舶運航業者はNVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier )と呼ばれることもあります。

スペースチャーターと共同配船の違いは下記の表を参照して下さい。

運用形態 運航会社 船腹スペースの割り当て
スペースチャーター 1つの船会社による運航 船会社が自社で使用するスペース、非船舶運航業者に売るスペースの割り当てを行う
共同配船 複数の船会社による運航 共同運航している船会社同士で割り当てを行う

スペースチャーターでは、例えば、船腹スペースの40%を運航会社が使用、残りの60%を複数の非船舶運航業者が使用することで荷受を行います。

非船舶運航業者は、運航会社からのスペース買取価格に自社のマージンを乗せた金額を荷主に請求します。

スペースチャーターのメリットは、船の運航会社だけで荷主を探さなくて済むことです。

また、スペースチャーターのB/L発行の仕組みは下記になります。

  • 船会社が非船舶運航業者に対して、荷受した全貨物を対象にしたマスターB/Lを発行する
  • 非船舶運航業者が荷主ごとにハウスB/Lを発行する

マスターBLの荷送人は非船舶運航業者、荷受人は非船舶運航業者の現地会社や、現地代理会社です。

一方で、ハウスB/Lの荷送人は非船舶運航業者の顧客、荷受人は顧客の取引相手です。

万が一、輸入地での非船舶運航業者から船会社へのマスターB/Lの提出や、手数料の支払いが遅れてしまうと、ハウスB/Lの発行を受けた荷主の貨物引き取りも遅れます。

まとめ

今後も船会社は多様化する荷主のニーズ、増加する貨物量、自社にとっての採算性に合わせて船の運航をしていくことが予想されます。

海運業界の動向は海上輸送料金、日数に関わってくるため、荷主側も常に把握しておいた方がよいでしょう。

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