この記事では、輸出におけるラッシングについて解説します。
輸出におけるラッシングとは、海上コンテナ内の貨物が荷崩れしないように固定することです。
輸出する貨物には様々な荷姿があるため、固定する道具や方法はその時の状況によって様々です。
では、具体的にラッシングはどんな道具が必要でどんな方法で作業するのがよいのでしょうか?
この記事では、そんな疑問にお応えするため、ラッシングの道具から方法、費用など物流初心者の方でも分かりやすいように解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、輸出におけるラッシングについて詳しく知ることができます。
目次
輸出におけるラッシングとは?
輸出におけるラッシングとは、冒頭のとおり海上コンテナ内の貨物が荷崩れしないように固定することです。
具体的には後述しますがラッシングベルトやラッシングバー、木材や角材といったようなラッシング材を使用して貨物の固定を行います。
このラッシング作業が甘いと貨物が荷崩れを起こしてしまい輸送事故に繋がってしまいます。
たとえば、カートン荷姿で荷崩れが起きると、製品が潰れて使い物にならなくなってしまったり、輸入者がデバンニング(コンテナから貨物を取り出す作業のこと)をする際にコンテナの扉を開けた途端カートンが落下してきて作業事故が起きてしまったり、といったようなケースは珍しくありません。
このように、ラッシングはコンテナで貨物を輸送する際に輸送事故が起こらないようにする重要な作業です。
ちなみに、ラッシングは輸出コンテナだけに限らずトラック荷台の貨物を固定する場合にも同様な意味合いで使用される言葉です。
ラッシングの道具(ラッシング材)
輸出におけるラッシングに使用する道具はラッシング材と呼ばれます。(以下、ラッシング材)
ラッシング材の種類はたくさんありますが、一般的に使用されるラッシング材は以下の通りです。
■一般的に使用されるラッシング材
①ラッシングベルト
②ラッシングバー
③ラッシングパレット
④エアバッグ
⑤角材やベニヤ板
⑥カートン段ボール(端材)
ラッシングベルトやラッシングバーは、どのような貨物でも固定しやすいため、頻繁に使用されるラッシング材です。
一方で、ラッシングパレットやエアバッグは、コンテナ最後尾(扉側)にスペースができた場合、
そのスペースを埋めるために使用されることが多いです。
また、角材やベニヤ板、カートン段ボールは、微妙な隙間を埋める際に非常に便利です。
適切なラッシング材の選び方
ラッシング材を選ぶ際には、次のポイントを考慮する必要があります:
- 貨物を引っ張って固定する必要があるか?
- それとも隙間を埋めて固定する必要があるか?
これらを判断することで、貨物に最適なラッシング方法を選択できます。
注意点
木材を使用する場合は、虫が湧かないよう燻蒸処理した物を使用しなければなりませんので注意が必要です。
また、このようなラッシング材の重量は、2016年7月発行の改正SOLAS条約により、
貨物重量、コンテナ自重と合わせて搬入票へ記載が必要となりますので覚えておきましょう。
ラッシング方法
ここでは、前述のラッシング材を使用した具体的なラッシング方法をご紹介します。
これらの方法は、輸送中の安全を確保するために頻繁に使用されるものです。
■ラッシング方法
①ラッシングベルトを使用する
②ラッシングバーを使用する
③ラッシングパレットを使用する
④エアバックを使用する
⑤角材やベニヤ板使用する
⑥カートン段ボール(端材)を使用する
比較的よく使用されるラッシング方法ですので、是非参考にしてください。
それでは、以下で順番に解説します。
ラッシングベルトを使用する
コンテナ内には、ラッシングベルトを通すための専用フックが設置されています。
このフックにラッシングベルトを通して貨物をしっかり固定することで、さまざまな形状の荷姿に対応できます。
例えば、ドラム缶、IBCコンテナ、フレコンバッグ、カートン、ロール状の製品など、幅広い貨物の荷崩れ防止に役立ちます。
ラッシングバーを使用する
ラッシングバーを使用することで、航海中の揺れによる貨物の前後方向のズレを効果的に防ぐことができます。
このバーはコンテナの左右の壁に突っ張り棒のように設置します。
固定時に隙間ができた場合は、ストレッチフィルムや段ボール端材を使って補強しましょう。
また、木材をコンテナ内寸(約2300mm)にカットしてラッシングバーの代用とすることも可能ですが、ハンマーで固定する必要がある場合があります。
また、ラッシングバーは木材をコンテナ内寸横幅(約2300mm)にカットすることで代用が可能です。
ただし、突っ張り棒の形で固定するときに木材が入りづらいことがあるので、ハンマーなどで打ち込む必要があります。
ラッシングパレットを使用する
不要になったパレットを利用して隙間を埋めるラッシング方法です。
貨物同士の間に挟むか、コンテナ扉と貨物の間に設置してズレを防ぎます。
専用パレットがない場合でも、廃材パレットを転用することで効果的な固定が可能です。
エアバックを使用する
エアバッグは、貨物間に挿入して膨らませることで固定する方法です。
空気圧を調整することで固定力を微調整でき、特に人が入れない狭い隙間の固定に適しています。
なお、エアバッグの使用にはコンプレッサーが必要ですので、事前に準備を忘れないようにしましょう。
角材やベニヤを板使用する
角材やベニヤ板は、貨物の形状に応じて多様なラッシングに対応できます。
特に重量物の場合、パレットの四隅に角材を固定することで貨物の揺れによるズレを防止します。
ラッシングベルトと組み合わせることで、縦方向・横方向の両方のズレをカバーすることができます。
カートン段ボール(端材)を使用する
不要になったカートン段ボール(端材)は、隙間を埋める補助材として活用できます。
例えば、高さが不揃いな貨物に対して段ボールを畳んで壁を作ることでズレを防止できます。
ラッシングバーや角材と併用することで、さらに強固な固定が可能です。
ラッシングのコンテナ費用
コンテナのラッシング費用は、主に以下の2つの要素で構成されます:
- ラッシング作業料
- ラッシング材料費
ラッシング作業料
ラッシング作業料の計算方法は企業ごとに異なりますが、一般的には以下の方式が採用されています
- 1㎥あたりの単価
この作業料は、貨物の荷姿やラッシングに要する時間に大きく影響を受けます。
特殊な形状の貨物や、複雑なラッシングが必要な場合には、作業料が高くなる傾向があります。
ラッシング材料費
ラッシング材料費は、以下の要素を考慮して決定されます:
- ラッシング材の仕入れ値
- 仕入れにかかる手数料(例:仕入れ価格の〇%)
使用するラッシング材の種類や量によって材料費は変動します。
例えば、高品質なラッシングベルトを大量に使用する場合や、特殊なエアバッグを利用する場合には、材料費が増加します。
費用の変動要因
ラッシングのコンテナ費用は、コンテナに積み込む貨物の荷姿や使用するラッシング材によって大きく異なります。
例えば、以下のような要因が費用に影響を与えます:
- 貨物の形状(不規則な形状や重量物)
- 使用するラッシング材の種類と量
- ラッシング作業に要する時間
ラッシングとショアリングの違い
ラッシングとショアリングは、どちらも貨物を固定するために使用される用語ですが、その意味と方法には明確な違いがあります。
以下で詳しく解説します。
ラッシングとは
ラッシングは、これまでご紹介したように、ラッシング材を使用してコンテナ内の貨物を固定する方法です。
ラッシングベルト、ラッシングパレット、角材など、多様なラッシング材を用いて、貨物を効率的かつ安全に固定します。
ラッシングの特徴は、主に貨物の形状や配置に応じて柔軟に対応できる点です。
ショアリングとは
ショアリングは、木材や角材を使用して貨物を固定する方法です。
床に釘打ちをすることで、貨物の移動を防ぐことができます。
この方法は、特に重量物や不規則な形状の貨物の固定に適しており、物理的に頑丈な支えを提供します。
作業範囲
ラッシングは、コンテナ内で行われる貨物固定作業全般を広義に指します。
ショアリングは、その中でも特に木材や角材を使用して固定する作業を指します。
使用する材料
ラッシングでは、ラッシングベルトやパレット、エアバッグなど、多様な材料を使用します。
ショアリングでは、主に木材や角材を使い、床に固定する場合が多いです。
適用する貨物の種類
ラッシングは、軽量貨物から重量物まで幅広く対応可能です。
ショアリングは、特に重量物や形状が特殊な貨物に適しています。
まとめ
この記事では、輸出におけるラッシングについて解説しました。
輸出におけるラッシングとは海上コンテナ内の貨物が荷崩れしないように貨物を固定することです。
ラッシングに使用するラッシング材は、
①ラッシングベルト
②ラッシングバー
③ラッシングパレット
④エアバッグ
⑤角材やベニヤ板
⑥カートン段ボール(端材)
などのように、様々あります。
ラッシングのコツは貨物の荷姿の特徴をつかみ、上記の様なラッシング材を駆使して如何にコンテナ輸送中に貨物がズレないように固定することです。