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日EU EPAとは アパレル(繊維製衣類)輸入を知る

外国から日本へモノを輸入する際に避けて通れないのが、関税ですね。

しかし最近ではこの関税を引下げ・撤廃して自由な貿易を目指す方向に動きつつあります。

特定の国や複数の締約国間で、関税撤廃だけでなく、サービス業の規制緩和や投資環境の整備、ビジネス環境の整備などを促進する条約が、「EPA(Economic Partnership Agreement)」と呼ばれる経済連携協定。その中でも2019年に日本とヨーロッパ連合(EU)で発効されたのが日EU EPAです。

関税が安くなったり、ゼロになったり。輸入者にとっては大きなメリットを持つEPAですが、お使いになっていますか?

OTS JAPANはイタリアが本社のフォワーダーなので、とくにヨーロッパからの輸入は得意中の得意です。

特にアパレル商品はEPAを利用するとほぼ無税(Free)になるので、使わない手はないですね。

今回は2019年に日本とヨーロッパ連合(EU)で発効された、日 EU EPAについて、特にアパレル製品での申請方法に特化して、より簡単に見ていきましょう。

この記事はこんな方におススメです。

  • とにかく関税を下げたい!という方
  • どのサイトの記事や本を読んでも、輸出の事しか書いてない、自分と関係のない商品の事でピンとこない、という方
  • なんとなく通関業者に頼ってEPAを使っているが内容が分からない、という方

日EU EPAの特徴

これまでのEPAの多くは「原産地証明書」を使用したものでした。

輸出者側の商工会議所など第三者機関で発行される公的な書類なので、この書類自体が効力を持っていることから、不備さえなければ輸入時に提出するだけで該当のEPA税率が適用されます。

しかしこの日EU EPAの最大の特徴は、この「原産地証明書」の発行が無いことです。

ではどのようにヨーロッパ産ということを証明するのか、それは「自己証明」です。

輸出者、または輸入者が「この商品は日EU EPAが適用される商品です」と言えば、使用できるのです。

簡単なようにみえて、実はこれほど面倒なことはありません。

ルールに基づいて適用されるのかを調べ、時にはエビデンスを取り寄せ、書類作成など、自己責任で行う部分が増えてしまいます。場合によっては輸入担当者にかなりの負担がかかってしまいます。

では日EU EPAを使用するにはどうすれば良いのか、具体的に見ていきましょう。

日EU EPAの申請の仕方

申請に必要な書類はシンプルです。取り揃えてフォワーダーや通関業者に頼めば後はお任せです。

  • インボイス・パッキングリスト・・・通常の輸入時と同じです
  • 商品の原産性を証明する資料・・・EUで作られたものかどうかの証明です

* 申請を始める前に、2点確認しましょう。

  1. 申告価格…20万円以下の場合、少額として原産性の証明は不要です。
  2. 輸入商品の関税率…最初から無税(Free)の場合、証明は不要です。

ここで気を付けるのは、例え商品が「Made in Italy」でもEPAのルール上では必ずしもEPA税率が適用されるわけではないということです。

  • Made in Italy・・・商品として製造され国がイタリア
  • 日 EU EPA・・・糸や生地など素材を含む原産国がEU圏内かどうか

日 EU EPAの最大のポイントは、いかにして商品の原産性を証明するかどうかです。ここに全てがかかっています。

証明の方法は2種類あります。

輸入者が証明する

もしメーカーや輸出者から商品の製造工程や素材の仕入れ先・製造国など詳細を聞き出すことが可能な場合、「原産品申告書」と「原産品申告明細書」を輸入者が作成・提出することで証明できます。

原産品申告書 https://www.customs.go.jp/roo/procedure/eu_shinkoku.docx
原産品申告明細書 https://www.customs.go.jp/roo/procedure/eu_meisai.docx

輸出者が証明する

輸出者が作成するインボイスなど書類上にEU原産という宣言文を入れてもらい、証明とすることが可能です。

メーカーにとって製造工程や素材の仕入れ先の開示は機密事項として社外に出したくない情報です。

2019年2月にEPAが発行された当初は①の方法しか認められていませんでしたが、情報を得られない事が多く、またアイテムごとに書類を作成する必要があるため、EPAの利用が進まない原因のひとつでした。

2019年8月からは②の方法も可能となり、現在ではこちらの申請方法が主流になっています。

以下は②の方法でインボイス(別紙作成でも可)に宣言文を入れてもらう場合です。

<インボイスに記載する宣言文>

——————————————————————————–

The exporter of the products covered by this document (Exporter Reference No.XXXXXXXXXXXX) declares that, except where otherwise clearly indicated, these products are of EUROPEAN UNION preferential origin.

Origin criteria used : C-3 *

Place and date : 発行者の住所・発行日

Printed name of the exporter : 発行社名

輸出者の氏名または名称・サイン等

* Origin criteria は商品の原産性の基準(A~E)のいずれか

——————————————————————————-

ポイント①

Exporter Reference No.:REX番号と言われる「登録輸出事業者」の番号で、日本の輸出入社符号のようなものです。輸出者が登録していれば番号を持っていますが、持っていない場合は空欄で提出可能です。

輸出者によっては登録に時間がかかると言われる場合がありますが、今後制度が変わる場合も想定して、継続して取引する場合は取得を依頼しておきましょう。

ポイント②

Origin criteria : 原産性の基準をコードで表して記載します。原産性の基準はA~Eに分かれ、それぞれ意味を持っています。

A:完全生産品
B:原産材料のみから生産される産品
C1:品目別原産地規則のうち、課税分類変更基準を満たす産品
C2:品目別原産地規則のうち、付加価値基準を満たす産品
C3:品目別原産地規則のうち、加工工程基準を満たす産品
C4:品目別原産地規則のうち、自動車部品についての特別な基準を満たす産品
D:累積
E:許容限度(デミニマスルール)

今回の商品はアパレル(繊維製衣類)と考えた場合、主に使用するのは「B」か「C3」です。

商品は全て税番によって分類されており、それぞれの税番によって使用する基準に条件がある場合があります。

主にアパレル製品で使用する税番の61類や62類の場合、大きく分けて「紡ぐ」・「織る」・「裁断する(縫製する)」の工程のうち、2つの工程をEU圏内で行っていることが必要になります。(「二工程ルール」)

  • 糸・生地・製造の全ての工程をEU圏内で行った場合・・・Bで適用可。
  • 中国で生産された糸を(「紡ぐ」)使用し、イタリアで加工した生地(「織る」)を仕入れて、イタリアメーカーが製品(「裁断(縫製)」)にしたものを日本へ輸入した場合・・・C3で適用可。
  • インドで生産された糸を(「紡ぐ」)使用し、中国で加工した生地(「織る」)を仕入れて、イタリアメーカーが製品(「裁断(縫製)」にしたものを日本へ輸入した場合・・・1工程しか行っていないため、EPA適用は不可。

原産性の基準の部分をEUの輸出者側が理解してくれていれば、不備無く書類の作成は可能なはずです。そのまま税関で申告すれば、問題無くEPA税率を適用できます。

「検認」について

日EU EPAの最大の特徴は「自己証明」ということは前述した通りです。

では、日本の税関はそれをそのまま受け入れるのでしょうか。

いえ、その証明が正しいのか後でチェックが入ります。

第三者機関で発行される「原産地証明書」と違って「自己証明」はあくまで輸入者・輸出者の自己申告に基づくもの。虚偽の申請が無いとも言い切れません。

そのため、税関では「検認」と呼ばれる制度で国を超えてチェックすることも可能になりました。これも日EU EPAの特徴のひとつです。

申請方法が輸入者からの「原産品申告書」「原産品申告明細書」の場合

輸入者にその商品の原産性の基準を示すエビデンス(輸出者から取り寄せた情報)をチェックしますので、その時に備えて書類やメールは残しておくようにしましょう。

申告で使った書類の保管期間は輸入者側は許可の日の翌日から5年間です。

申請方法が輸出者からのインボイスの場合

税関が輸出側の税関を通じて、輸出者に原産性の基準を示すエビデンスなどをチェックします。ある日突然検認が入る場合があるため、輸出者にもエビデンスはすぐ出せるように伝えておいた方が良いですね。

輸出者側での書類の保管期間は、作成の日から4年間です。

さて、ここで理不尽なお知らせです。

もし輸出者の作成した原産性の基準に不備や虚偽があり、税関でEPAの適用が認められなかった場合、以前輸入したEPA税率が取り消される可能性があります。

そうなると当然払うべき税金が変わってきますので、日本の輸入者がそれを支払うことになります。延滞税に加え、金額によっては加算税も発生します。また、修正申告を行うため通関業者にも再度手数料を支払う必要も出てきます。

輸入者からすると、輸出者が証明したものを信じて申告をしただけ、しかもそのエビデンスは機密事項として輸入者には知らされない情報です。それでも支払う義務があります。

もちろん輸入者が輸出者にその税金分の請求を行うことは可能ですが、あくまで両社の話合いになりますので、そうならないためにもあらかじめ良い関係を築き、正確な情報で書類を作成してもらう必要がありますね。

最後に

2019年に始まった日EU EPAですが、このような複雑さから書類作成を敬遠したり、輸出者側の協力を得られないパターンもあって、まだまだ利用されていない輸入者も多くいらっしゃいます。

一筋縄ではいかないことも多いですが、利用できれば数万円から数百万円の税金カットも見込めるメリットの大きな制度です。

アパレル製品だけでなく、OTS JAPANでは他にも様々な種類のEPAの利用実績がございますので、なんでもお問い合わせください。OTS JAPANはお客様と一緒に問題を解決して参ります。

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