コンテナ船輸送で大きな働きをする「ドック・レシート」。
ドック・レシートはコンテナ船輸送の取引の流れの中で、あらゆる方面で活躍する書類です。
貨物がコンテナ輸送の契約をされてから港を離れるまでの流れに沿って、ドック・レシートがどこでどのような働きをしているのか、特徴や注意点を中心にご紹介します。
目次
ドック・レシートとは?
ドック・レシートは、コンテナ船特有の書類です。
(現在は電子化されていますが、以前は紙媒体でしたので次のような流れて作成されていました。)
港にあるコンテナを保管するエリア(コンテナヤード/CY)に貨物を搬入したあと、海貨業者が船荷証券(B/L)をもらうために船会社に提出する書類を「ドック・レシート」と呼びます。
ドックレシートのドックは「Dock=波止場」の意味をもち、 D/Rとも略されます。
ドック・レシートの特徴
コンテナ船で使われるドック・レシートならではの特徴を主に3つお伝えします。
特徴①船荷証券(B/L)の引換券
ドック・レシートは、船荷証券(B/L)の引換券のような役割があります。
「船会社が海貨業者からドック・レシートを受け取った=CY(コンテナヤード)での貨物の引き渡しを確認した」という意味になり、船会社にとってドック・レシートは貨物の受取証明書になります。
海貨業者が船荷証券(B/L)をもらうためには、船会社へのドック・レシートの提出が必須です。
提出したドック・レシートの内容に基づいて、船荷証券(B/L)が発行されます。
特徴②1セット8枚の書類
ドック・レシートは1セット8枚綴りになっていて、業者がドック・レシートを受け取ると1枚ずつ手元に残していきます。
1回のやりとりで終わる書類ではなく、海貨業者や船会社、CY、税関、発送元といったあらゆる業者の手に渡る書類のため、1セット8枚で構成されています。(現在は電子化されており、船社専用フォームで申請します。)
特徴③FCLとLCLで発行先が異なる
同じコンテナ船でも貨物輸送の流れが異なるFCLとLCLでは、ドック・レシートの提出先が異なります。
FCLの場合
FCLの場合には、ドック・レシートとコンテナ明細書をCY(コンテナヤード)オペレーターに提出します。
FCL(Full Container Load)は輸送船をまるごと1つ借りるので、自社の貨物以外は搭載されません。
そのため貨物は直接CYに運ばれるので、ドック・レシートをCYオペレーターに引き渡します。
LCLの場合
LCLの場合は、ドックレシートをCFS(コンテナ・フレート・ステーション)オペレーターに提出します。
LCL(Less than Container Load)は、FCLと違いコンテナ船をまるごと1つ借りない輸送方法です。
そのため一旦貨物は、CFSという貨物を混載する場所(倉庫)に集められ、コンテナに詰めてからまとめてCYに運ばれます。
他社の貨物と合わせて輸送されるLCLの場合には、直接貨物がCYに運ばれるわけではないため、中継地点のCFSオペレーターにドック・レシートを引き渡します。
ドック・レシートの動き
コンテナ船が輸送されるために必要なドック・レシートの全体の動きをご紹介します。
- 発送元からシッピングインストラクション(船積依頼書)を受け取った海貨業者は、船会社にドック・レシートを発行する
- 税関から海貨業者に輸出許可書がきたあと、船会社はドック・レシートを海貨業者に戻す
- 海貨業者は、船会社から受け取ったドック・レシートと貨物を一緒ににCY(またはCFS)に搬送する
- 貨物の船積み後、税関にドック・レシートを提出(税関は船積みが完了したことを認識する)
- 残っているドック・レシートは海貨業者に戻す
- 海貨業者が船会社に、残っているドック・レシートのうち1枚を渡すと、船会社から船荷証券(B/L)が発行される
- 船荷証券(B/L)を受け取った海貨業者は、船荷証券(B/L)とドック・レシートを発送元に渡す
以上が、コンテナ船において使われているドック・レシートの流れです。
ドック・レシートはあらゆる場面で必要とされているため、すべてのシーンで1枚ずつ減っていきます。
ドックレシートの記載内容
ドックレシートは船荷証券(B/L) のもとになる書類なので、記載内容やフォームが船荷証券に類似しています。
ドック・レシートの記載内容は、以下のようなものが挙げられます。
- 発送人名(会社名など)
- 予約番号(ブッキング番号)
- 荷受人名(会社名など)
- 荷受人住所
- 船積み港
- 荷揚げ港
- 貨物の個数、重量、大きさ
- 商品内容
- B/L発行地
受け取った貨物に損傷や個数の過不足など異常があった場合は、必ずドック・レシートにその内容が記載されます。
ドック・レシートの注意点
あらゆるシーンで活躍するドック・レシートには、主に3つの注意点があります。
注意点①なくすと大変
ドック・レシートは船荷証券の基礎データであるため、なくすと大変です。(現在は電子化されています。)
船荷証券(B/L)に引き換えることができなくなってしまいます。
一方で、ドック・レシートの発行を必要としない船会社もあります。
注意点②船会社によってフォームや規定がある
ドック・レシートは、船会社によって定められたフォームに沿って記入します。
記入方法も船会社によってルールが存在するため、書き間違いのないよう注意しましょう。
またドック・レシートは、シッピングインストラクション(船積依頼書)や船荷証券(B/L)と深く関わる書類です。
これらの書類の規約やフォーム変更があると、それに伴いドック・レシートのフォームも変更されます。
スムーズな取引のためにも、記入するドック・レシートが常に最新の状態であるかを確認しましょう。
注意点③在来船にはドック・レシートを使わない
ドック・レシートを使うのは、コンテナ船で輸送するFCLとLCLのみです。
コンテナを輸出入する設備の整っていない港への輸送や、コンテナに合わない形状の貨物を輸送するときに使われる在来船では、コンテナ船輸送と違ってドック・レシートを使わないので注意しましょう。
ドック・レシートとシッピングインストラクションの違い
「ドック・レシート(D/R)」と「シッピングインストラクション(S/I)」の記載内容は似ていますが、活躍するタイミングが異なります。
「シッピングインストラクション」は、発送元が海貨業者に発行する書類です。
貨物の情報や通関依頼など、発送元が海貨業者に指示を出す書類になります。
「ドック・レシート」は、海貨業者から船会社に発行される書類です。
海貨業者が発送元から受け取ったシッピングインストラクションに基づき、ドック・レシートは船会社に発行されます。
ドック・レシートとシッピングインストラクションの違いを知るには、コンテナ船の船積書類の流れを把握することが大切です。
まとめ/コンテナ船で大活躍のドック・レシート
コンテナ船特有の種類である、ドック・レシートについてご紹介しました。
ドック・レシートの特徴をおさらいすると、以下の通りです。
- 船荷証券(B/L)の引換券
- 1セット8枚の書類
- FCLとLCLで発行先が異なる
ドック・レシートは、発行元からのシッピングインストラクションを元に作成され、船荷証券(B/L)のもとになる、取引の橋渡しの役割があります。
書類の全体の流れから、しっかりドック・レシートの特徴や注意点を把握しておくことで、スムーズな取引に貢献できます。
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