「サードウェーブ」と呼ばれる上質でこだわりを持ったコーヒー豆を使用した流行が始まってから数年、最近では輸入者様が自社で買付け~輸入することも多くなってきました。
今回はコーヒー豆、特に焙煎する前の生豆輸入について、日本に到着してからどのような流れでお手元まで届くかを説明します。
◆こんな方におすすめ
- コーヒーショップを開店し、国内商社さんから仕入れていたけど、他店でも似たような豆が多くなってきた。そろそろ差別化を図り産地からこだわった豆を選定したいが、国際輸送と言っても方法が分からない…という方
- 今まで通関業者に丸投げしていたが、どういう流れで輸入されているか分からない。もしかするとコストカットに繋がるかも…という方
- コーヒーが大好きな方!
- ここでは国際輸送業者が行う業務通関での流れをご説明します。国際宅急便(FedexやDHLなど)でのサンプル輸入とは違う場合があります。
目次
日本到着からお手元に届くまでの大まかな流れ 6つのステップ
コーヒーが日本到着からお手元に届くまで、大きく分けて以下のような6つのステップがございます。
- 国際輸送業者や航空会社・船会社を通じて外国から商品が日本に到着
- 到着空港・港の検疫所で植物防疫を行う
- 食品届の申請
- 税関で輸入申告
- 空港・港の倉庫から商品引取り
- 指定場所まで配送
*すんなりいけば到着から納品までおよそ4-5営業日。食品届の申請で少し時間がかかる場合があります。
必要書類
輸送時に必要となる書類は、以下の通りです。
- 航空貨物運送状(AWB:Air Waybill)または船荷証券(B/L:Bill of Lading)と到着案内(A/N:Arrival Notice)… 国際輸送業者や航空会社・船会社から発行
- インボイス・パッキングリスト… 輸出者で作成
- 成分表(原材料表)… 輸出者で作成(輸入者での作成も可)
※ 生豆は基本的にコーヒー豆100%ですが、その旨を明記 - 製造工程表 … 輸出者で作成(輸入者での作成も可)
※ナチュラル・ウォッシュドなど製法が分かれる場合はそれぞれ明記
※デカフェはカフェイン抽出方法も明記 - 植物検疫証明書(フィトサニタリー)… 現在は無くてもOK。但し今後予告なく提出を求められる可能性もありますので、輸出者が取得してくれる場合は受け取っておきましょう
基本的な書類はこれだけです。あとは私たち国際輸送業者等にご依頼頂ければ、面倒な手続きは行いますのでご安心ください。
より詳しく知りたい方は、輸入許可までの流れ順に個別の業務を見ていきましょう。
国際輸送業者や航空会社・船会社を通じて外国から商品が日本に到着
輸出者から事前にAWBやB/Lを入手しておけば、日本でも到着予定日の確認は可能です。船便の場合は到着直前に国際輸送業者や船会社からA/Nが発行されます。
到着空港・港の検疫所で植物防疫を行う
最初に日本に到着・荷下ろしした空港・港の管轄検疫所で植物防疫を行います。
商品の一部を採って実物での検査を行いますが、重量や個数により検査量が変わります。
バキュームパック(密封梱包)でも開封されます。
例)60kg未満の場合
- 検査量:10%以上を採取
- 開封個数:3梱包以上は3梱包を開封
- 1梱包の場合は1梱包、2梱包の場合は2梱包
- 1輸出者につき3梱包を検査。品目やロットが違う場合はランダム採取し、合計3梱包の開封が基本
- 開封個数:3梱包以上は3梱包を開封
- 検査方法:専用のふるいにかけて虫や異物をチェックし、問題無ければ元の梱包に返却
- 立会いの通関業者に頼んでおけば、テープなどで再封は可能。
食品届の申請
次は食品衛生法に基づく審査です。成分表(原材料表)や製造工程表を元に厚生労働省の検疫所に「食品等輸入届出書」を提出します。
コーヒー生豆は特別な製造方法や添加物を使用することがあまりないので、書類さえ整っていれば、問題ないはずです。検査の要請が無ければ「食品等輸入届出済証」が発行され、次のステップに進みます。
ただし、ここで最大の難関が待ち受けているのです。
モニタリング検査
「食品等輸入届出書」を提出すると、検査を要請される場合があります。
食品衛生法に基づいた商品かどうかを判断するために所定の試験検査を受けることになりますが、コーヒー生豆の場合は命令検査・自主検査よりも、モニタリング検査の確率が非常に高いです。
一番厄介なのは、検査で採取された豆は返却されないこと。義務とは言え、高い豆を引き取られるのは頭の痛いところですね。
検査の対象・頻度
コーヒー生豆の場合、成田空港や東京港など、管轄税関ごとの年間検査量の計画が作成されており(未公表)、内容は主に残留農薬やカビ毒(アフラトキシン)の検査です。
同一国・同一農園・同一梱包者でなければ、都度検査の対象となります。
また、同じ農園のコーヒー生豆でも、工程違い・ブランド別・グレード別などで区別されるものは商品ごとに対象となります。
- 採取者:厚生労働省検疫所
- 検査費用:国が負担(立会料や手数料といった通関業者からの請求は発生)
- 検査期間:数日(検査の結果が出る前に次に進んでもOK。但し検査結果で輸入不可になった場合は回収が必要)
- 検査頻度:対象品であれば輸入の都度。
検査量
- 残留農薬:50袋以下の場合=3袋から合計1kgを採取
- カビ毒(アフラトキシン): 20kg/袋以上・280袋以下の場合=32袋から合計5kgを採取
※袋数が基準に満たない場合は全ての袋から平均的に採取
※2品目の場合は2品とも対象。
検査方法
全て粉砕し、偏らないように混ぜてから必要量を検査で使用します。採取した豆は使用不可として返却はありません
コーヒー豆の価値についての考慮
全ての輸入コーヒー生豆を対象とするため、バキュームパック(密封梱包)などの梱包形態・商品価値についての考慮は無く、採取量の減量も不可です。
検査回避の方法
全ての輸入者を対象とするため、基本的に検査回避は不可能です。
ただし通関業者を通じてや、輸入者自身が検疫所へ回避のお願いをすることはでき、次回の明確な輸入計画(B/L発行済みなど)がある場合は、次回検査を条件に回避できたケースもあります。
検査後の処置
検疫所では再封などは行いませんので、立会いの通関業者などにできるだけ空気を抜いてのテープ補修を依頼することがベターです。
税関で輸入申告
無事「食品等輸入届出済証」を入手できれば、最後の砦、税関への輸入申告です。
輸入申告書を作成・管轄の税関へ提出すると、審査官が書類を見て輸入許可、または検査の実施を判断します。
管轄省庁が違うため、検査もそれぞれで必要です。(植物検疫:農林水産省、食品届:厚生労働省、税関:財務省)
税関検査では、申告通りの商品が入っているか、輸入禁止の商品が入っていないか等のチェックを行います。検査種類もいくつかあり、代表的なものをご紹介します。
- 見本検査… 指定された一部の商品を検査場に持ち込み開封
- 全量検査 … 輸入量全てを検査場に持ち込み開封
- 大型X線検査 … Ⅹ線の検査装置にかけて中身をチェック
* 検査自体は無料ですが、検査場への運搬費・通関士の立会い等で別途費用が発生します
検査で問題が無ければ、いよいよ輸入許可書が発行されて手続きが完了します。
空港・港の倉庫から商品引取り
国際輸送業者の仕事はもう少し続きます。
無事輸入許可となった商品を、最後までお届けするべく、空港・港の倉庫からトラックに積込みます。
もちろん細心の注意を払って積込みますが、引取り時に貨物にダメージが見つかる場合があります。
箱のつぶれや破れ、パレットの破損など、輸送時に発生するものが主ですが、万が一商品にダメージが及んだ場合、事前に付保しておけば保険を適用することも可能です。
指定場所まで配送
基本は翌日・遠い場合は中1日~3日で指定の場所までトラックで納品します。
納品先では車上渡しと言って、荷下ろしはお客様のお手配でお願いすることが多いです。パレットのまま降ろす場合はフォークリフトのご準備やパワーゲート車の手配が必要です。
また、バラで降ろす場合は開梱作業費や、使用済みパレット等の引取りにも料金がかかりますのでご注意ください。
無事、商品をお受取り頂きましたら、ここで国際輸送業者の仕事は終了です。
まとめ
一口に輸入と言ってもこれだけの作業が必要です。
OTS JAPANではコーヒー生豆の輸入ではたくさんの実績を持っています。
生産国出荷~輸送~通関~配送まで、一貫してお取扱いが可能ですので、何なりとお問い合わせください。
長文お読みいただきありがとうございました。
さあコーヒーを淹れて、一息ついてください。
私たちの口に入るまでの長い道のりを想像すると、また違った味わいになると思いますよ。
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