暫定措置法第8条とは、日本のアパレルメーカーが世界において価格的に競争力を保てるように設定された措置法です。人件費の安い東南アジアで製造される、海外メーカーの衣類に対抗できるように定められました。国際貿易において輸出入時にかかる関税は、商品の小売価格に大きく反映されます。そのため暫定措置法第8条を適用することで、日本の原材料(生地など)を海外工場で加工し、完成品を再輸入するときに関税が軽減され、海外メーカーとの価格競争に負けないよう工夫されています。
暫定措置法第8条とは
暫定措置法第8条とは、簡単に言うと「加工再輸入減税制度」と言われています。海外工場で製品を製造することを目的に、日本の生地を日本からインドネシアの海外工場に輸出したとします。その後インドネシアの工場で加工されて完成した商品を、日本に再輸入したときにかかる関税が軽減されるのです。
本来であれば、完成品を日本に輸入したときに、完成品に対して関税が課せられます。しかし、完成品に使っている生地は日本から輸出したもの。そのため、生地の輸出時に税関に加工目的であることを伝えれば、完成品輸入時には生地分の関税が無視されるのです。
暫定措置法第8条は、暫八(ざんぱち)とも呼ばれています。
暫定措置法第8条とEPA
EPAとは、経済連携協定のことです。お互いの経済発展を目的に、EPAを締結している国家間同士の貿易には優遇された税率で取引ができるよう協定が組まれています。
しかしEPAを適用するには、複雑な手続きを必要とする「原産基準」を満たさなくてはいけません。そのため輸入申告時に基準がクリアできず、本来のEAPの優遇税率が適用されずに高い税率が適用されるリスクもあります。
暫定措置法第8条を利用するには
暫定措置法第8条を利用するには、税関への申告が欠かせません。日本から原材料を輸出すタイミングで、
①輸出申告:輸出する原材料名、輸出先工場、輸出する原材料の量
②輸入申告:輸出した原材料を使った量、完成品はなにか
の2つを税関に申告します。
再輸入が前提での申告なので、輸出のときに輸出入申告の2つをセットで行わないと暫定措置法第8条は適用されません。
必要書類
暫定措置法第8条を適用するために、必要な書類をご紹介します。
- 輸出申告書
- 輸入申告書
- インボイス
- パッキングリスト
- 加工・組立輸出貨物確認申告書
- 輸出許可書
- 契約書、注文書
- 付属書
- 原材料の見本
以上のすべての書類を2部ずつ用意するのを忘れないようにしましょう。1部は自己保管用、もう1部は税関への提出用です。
原材料の見本は、完成品が再輸入されたときに同じ原材料が使われているかを照合するために必要です。この原材料の見本は、税関提出後に職員によって専用の袋にいれて封印されます。この封印された袋は、完成品が輸入されるまで絶対に解かないように注意しましょう。開封してしまうと、減税が適用されません。
まとめ/日本のアパレルメーカーを救う暫定措置法第8条
人件費が安く製造された、海外メーカーの衣類の価格競争に対抗すべく設定された暫定措置法第8条。日本へ再輸入することを前提として、日本の原材料を海外工場へ輸出し完成品を再輸入するときに、日本から輸出された原材料分の関税が免除される制度でした。暫定措置法第8条が存在していることで、日本のアパレルメーカーは製造過程の費用を抑えることができ、今日も世界のメーカーと戦えていることがわかりますね。