マレーシアへの輸出は、2023年には世界需要の低迷で前年比7.3%低迷しましたが、
2022年時点において前年比27.8%の伸びを示しており、総額約85兆4512億円の取引が行われました。
今後、世界需要の回復に伴い輸出量は増加することが予想されます。
マレーシアへ輸出する場合「輸出する際の確認事項」と「マレーシアの輸入規制」を確認する必要があります。
注意事項を含め、以下にてそれぞれ確認しましょう。
目次
輸出する際の確認事項
マレーシアへ輸出を行う際は、以下について確認する必要があります。
- 輸出を規制している品目
- リスト規制・キャッチオール規制
- 動物検疫
- 植物検疫
輸出を行う際には「輸出規制品目」のほか、「リスト規制」と「キャッチオール規制」を確認する必要があります。これらの規制は、大量破壊兵器の開発や武器などがテロリストなどの反社会的集団の手に渡ることを防ぐために設けられている規制です。
輸出禁止品目
以下のものは関税法において輸出を禁止されています。違反した場合は、関税法などで処罰されますので、注意してください。
- 麻薬、向精神薬、大麻、あへん、けしがら、覚醒剤児童ポルノ
- 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成者権を侵害する物品
- 不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで又は第10号から第12号までに掲げる行為を組成する物品
輸出規制品目
日本において以下の品目は規制されているので、許可もしくは承認が必要です。
- 農林水産物やその加工食品
「外国為替及び外国貿易法」および「輸出貿易管理令」において、農林水産物やその加工食品について、許可もしくは承認を受けなければならない品目があります。
- 野生動物およびそれに関するもの
ワシントン条約によって、絶滅危惧の恐れのある野生動物の保護のために、輸出許可が必要な品目があります。
参照:ワシントン条約
リスト規制
リスト規制は、武器などの軍事転用可能な製品や技術が国外に渡ることを規制するものです。その名の通り、輸出を規制するものがリスト化されており、記載のある品目を規制するものです。
対象品目は「武器関連」「大量破壊兵器とその関連資材(核兵器、化学・生物兵器およびミサイル)」「通常兵器関連汎用品」です。
リストに載っている品目に該当する場合は、安全保障上、経済産業大臣へ届出を行い輸出許可をとらなければなりません。
キャッチオール規制
キャッチオール規制は、リスト規制において規制品目を確認したうえで、リストに記載がない品目や技術であったとしても、大量破壊兵器などの開発や製造に使用される恐れのあるものは、経済産業大臣の輸出許可が必要になる規制です。
軍事転用できないものであっても、使途によっては大量破壊兵器などの開発や製造に使用される恐れのあるものです。
そのため、食品・木材を除く輸出するすべての品目や技術について確認する必要があります。
キャッチオール規制において、規制対象外とされる「ホワイト国」があります。
ホワイト国との貿易においては、キャッチオール規制の確認は必要ありませんが、リスト規制の確認は必ず必要になります。
以下はホワイト国です。
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国
動物検疫
「家畜伝染病予防法」「狂犬病予防法」に該当するものは、輸出検疫を受けなければ輸出ができません。
あらゆる動物だけでなく、その動物を原料とする加工製品も含まれます。
以下のものは、家畜伝染症予防法によって輸出規制を受けている品目です。
- 動物および動物の死体
鶏・あひる・七面鳥・うずらおよびがちょう・犬・蜜蜂・兎・偶蹄類の動物および馬 - 鶏・あひる・七面鳥・うずらおよびがちょうの卵
- 1の動物の骨・肉・脂肪・血液・皮・毛・羽・角・蹄・腱および臓器
- 1の動物の生乳・精液・受精卵・未受精卵・ふんおよび尿
- 1の動物の骨粉・肉粉・肉骨粉・血粉・皮粉・羽粉・蹄角粉および臓器粉
- 3を原料とする加工製品(ソーセージ・ハムおよびベーコン)
植物検疫
マレーシアへの植物の輸出する際に「植物検疫証明書」の取得および提出が義務付けられている品目があります。マレーシアの植物検疫要求に従って検査を行ったうえで「植物検査合格証明書」を発行する必要があります。
「マレーシアの輸入規制」の確認
マレーシアは、輸入禁止令に則り、特定製品の輸入を規制しています。
現在、マレーシアから日本へ個別に規制をかけられている製品はありません。
以下の品目は、すべての国に対して規制を行っている品目です。
完全に輸入禁止品目
輸入禁止品目とは、絶対に輸入することができない品目です。
- 鉛及び銅成分が 1 リットル当たり 3.46 ミリグラム含有さ れた酒
- 原則全ての国 全てのピラニア属
- 原則全ての国 亀の卵
輸入ライセンスが必要な品目
輸入ライセンスがあれば輸入が認められる品目は以下の41品目です。ライセンスは、税関及び税関の代理人機関である農業省(MoA)・保険省(MoH)・貿易商産業省(MITI) にて発行できます。
ライセンスを必要とする42品目に関して、以下の品目が含まれています。
- 米及び雑穀
- 米粉、ひき割り米、米ぬか、 米のパスタ
- 砂糖
- サッカリン及びその塩
- たばこ及びくずたばこ
保護措置が必要な品目
国内製造会社を保護するために、マレーシアでは輸入ライセンスを必要とする21の品目があります。ときには、国産品保護のために輸入許可証が発行停止になることもあります。
輸入許可証の発行は、税関もしくは、税関の代理人機関である農業省(MoA)・保険省(MoH)・貿易商産業省(MITI)で行えます。
- 液状のミルク(還元乳、着香 したものを含む)
- 粉乳(フレーバーミルク)
- キャベツ
- コーヒー豆 (ローストされていないもの)
- 穀粉(小麦粉及びメスリン粉)
一定条件のもとで輸入が可能な品目
「警察への届出もしくは、管轄官庁の指導の下、輸入を行わなければならない危険物資および品物」「有資格者によって取り扱われなければならない製品」は、
輸入の仕方に条件(輸入条件)が付けられることがあります。
動植物、食料品、廃棄物、銃刀などであり、具体的には「家畜、小麦粉、生魚、牛乳・乳製品、動物性油脂、ソーセージ、野菜類」などが該当します。
上記の品目において、以下に該当するものは、条件付きで輸入が認められます。
- 家畜(生死の別、またその一 部であるかを問わない。食用 のくずを含む)
:獣医サービス局長またはその代理人によって発行された輸入許可証 - 有害な小動物
:農業局長またはその代理人によって発行された輸入許可証
書類の準備
マレーシアへの輸出に向けて以下の書類を準備する必要があります。
1.Invoice
Invoiceとは、商品をいくらで販売するかを記載したものです。Invoiceをもとに輸出通関手続きを行います。関税はInvoiceに記載された金額から算出されるので、間違いのないようにしましょう。
2.Packing List
輸送する品物の詳細について記載した書類です。品物の個数・荷姿・重量・サイズ・容積・外装に付したマークなどを記載した書類です。
3.非該当証明書
該非判定証明書とは、輸出する品物について、外国為替及び外国貿易法において規制されている貨物や技術に該当するのか判定を行い、輸出許可の有無を記載した書類です。輸出を行う会社にて各自が確認する必要があります。
4.Shipping Instruction
どのような貨物を、いつどの船に積み込むのかを記載したものです。B/Lを作成する際に必要な書類であるため、間違いのないように正確に記載する必要があります。
事前に準備を行うことで輸出を円滑に行うことができます。
マレーシアへ輸出する際の注意事項
商品の輸送に関してだけでなく、流通時に求められる表示を遵守する必要があります。輸入規制についてだけでなく「取引表示法」や「消費者保護法」についてもしっかり確認を行いましょう。
取引表示法
取引表示法では、取引を行う際の表示について以下項目を表示しなければなりません。取引表示(製品または製品の一部の製造・生産・加工または再調整場所)について虚偽の申告があった場合、担当大臣はマレーシアへの輸入禁止命令を出す恐れがあります。
- 特質または名称
- 数量大きさ寸法
- 製法、生産方法、加工方法、整備方法
- 成分構成
- 目的適合性、強度、性能、習性または精度
- 貴金属製品の適合基準
- その他物理的、技術的特徴
- 製品の有効期限
- 第三者による検査と結果
- その他の品質
- 第三者による承認や適合評価
- 製造地・製造日・生産地・生産日・整備地・整備した日
- 製造者・加工業者・生産者・整備した者
- 元の所有者や使用歴を含む過去の記録
消費者保護法
消費者保護法とは、製品の原産地に関する虚偽または誤解を招く表示を禁止する法律です。ラベリングなどの安全に関する要求事項を規定しています。違反した場合には以下の罰則が設けられています。
- 法人に対して:
初犯は25万リンギ以下
再犯は50万リンギ以下の罰金が科される - 個人に対して:
初犯は10万リンギ以下もしくは3年以下の禁錮またはその両方
再犯は25万リンギ以下もしくは6年以下の禁錮またはその両方が科される
5.まとめ
ここではマレーシアへ輸出を行う際に必要な確認事項および注意事項を紹介しました。
輸出に直接かかわる事項だけでなく、マレーシアで商品を流通させるための「表示」についてもしっかりと確認を行うことが重要です。
輸出に当たって必要な準備をあらかじめ行い、円滑に輸出を行ってください。
不明点などある場合は、弊社へご相談ください。