IATAとは、国際的な航空ルールを定める世界最大の団体です。
安全を最優先にして、貨物・旅客などの航空輸送の国際基準を設定しています。
コロナ禍の現在では、航空機内で必要な感染症対策の方針や支援体制の構築などを世界の航空会社に導入しました。
本記事では、世界の航空輸送の安全と発展に欠かせないIATAの役割や歴史についてご紹介します。
目次
IATAとは?
IATA(イアタ)とは、安定的な国際航空輸送を目的にした団体のことです。
世界の民間航空会社で構成されていて、セキュリティ対策や環境配慮など航空運送のルールや方針を定めています。2022年現在、世界120ヶ国以上の約290社が加盟し、定期国際航空運送輸送量の82%を担っています。
IATAはInternational Air Transportation Associationの略であり、日本では国際航空運送協会と訳されます。
IATAの役割
航空運送の安全かつスムーズな活動推進が目的であるIATAの、具体的な役割を4つご紹介します。
①運航スケジュールの策定
IATAは、夏ダイヤと冬ダイヤの国際線運航スケジュールを策定しています。欧州のサマータイムを基準にこのスケジュールが決められており、各国のリクエストを聞きつつも最大限に航空輸送が活かせるダイヤ調整を行っています。
②空港コードの統一
IATAは、世界の空港を3文字のアルファベットで表す空港コードを統一しました。羽田空港であればHND、ロンドン・ヒースロー空港をLHRと、現在では当たり前のように使われているスリーレターです。
上記の空港コードに限らず、IATAではIATAコードと呼ばれるルールが使用されています。このIATAコードには、預け入れ荷物を識別するための手荷物コードやIATAに加盟している航空会社の会社コードなども導入されており、どの国のだれにでもわかりやすくチケット情報やフライト情報が共有されています。
③航空輸送に危険な貨物を策定
爆発の可能性や人に危害を与える可能性がある貨物、飛行機の運航に支障を与える可能性のある貨物などは、IATAにより危険品として輸送時の基準が設けられています。危険品のなかには、航空輸送が禁止されているものと数量制限を守れば輸送可能なものに分けられ、ルールを守らないと輸送ができません。花火やライター、放射性物質や殺虫剤なども危険品に振り分けられており、品目の詳細はIATAの危険物規則書に記載されています。
④航空運賃の策定
IATAに加盟している航空会社では、IATAが決定した航空運賃を導入しています。このIATAが決めている運賃のチケットは通称”正規運賃航空券”とよばれ、予約の変更やキャンセルができるなど自由度の高いチケットになります。
しかしその分料金が高く設定されているのがデメリットです。この正規運賃航空券に対して、予約変更・キャンセル不可といった条件を加えることでチケット料金を安く抑えることのできる割引航空券などもあります。
IATAの歴史
IATAは1945年4月19日に、キューバのハバナで発足しました。第2次世界大戦後、軍用機での人・モノの往来が多くなったことを背景に、飛行ルートや航空規制を初めて規定したのがIATAです。当時の航空輸送の課題であった”チケット価格が高いことで一般庶民に定着しない航空輸送”を解決するために、収益構造の仕組みなどを全世界の航空会社に示しました。
1947年には、初めてIATAが主催する国際交通会議が開かれます。航空運賃の計算方法や収益配分、受託手荷物ルールやチケットのデザインなど、世界で前例のない国際基準を明確にしました。以降、全世界でIATAが主催する国際交通会議が定期的に開催されています。最新の国際交通会議は2019年に韓国で開かれました。
2015年には、飛行機内に持ち込み可能な手荷物のサイズを従来よりも小さいサイズに再規定しました。この再規定の背景には、旅客が大きい手荷物を機内に持ち込むことで、機内の収納棚のキャパシティを超えてしまうことが多く、預け入れ荷物に変更する作業や時間など、定時性への影響があったことが挙げられます。
このようにIATAは、常識に囚われず航空業界の発展のための活動を続けています。
IATAと旅行代理店
IATAは世界の航空会社に対してだけでなく、空港や旅行代理店、フォワーダーや国など、航空輸送を担うすべてのステークホルダーと関与しています。人・モノ輸送をスムーズに行うため、旅行代理店とフォワーダーにも支払方法や発券ポリシーといった基準を示しているのです。
航空運送をするには、航空輸送禁止品や割れ物の取り扱い方法など専門的な知識が必要になります。そのためIATAから承認を得た旅行代理店やフォワーダーであることは、航空輸送に関する知識を保有した企業であることの証明になるのです。IATAの承認を得ないと、大手の各航空運送会社との代理店契約を結べません。
IATAの環境問題への取り組み
IATAでは、2021年4月に「2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という目標を採択しました。2015年時点では、全世界で排出されるCO2排出量のうち2%が航空分野からの排出で占めています。この事実を考慮すると、CO2排出量ゼロというのはかなり大胆な目標であることがわかります。
IATAが脱炭素化を加速させる背景には、人々の環境問題への意識の高まりから「飛行機は温室効果ガスを多く排出する」というのが周知の事実となったことが挙げられます。飛行機は環境に良くないという世論から、各国の航空会社は環境に配慮した運航への姿勢が求められています。実際にANAやJALでは、2021年10月に両社共同で「2050年航空輸送におけるCO2排出実質ゼロ」に向けての取り組みを明らかにしました。SAFは持続可能な航空燃料と言われており、使用済みの調理油や植物などの再生可能エネルギー源から生産されます。炭素排出量を従来のジェット燃料よりも85%まで削減できることがわかっているため、世界でこのSAFを巡って競争が激化しています。
IATAとICAOの違い
IATAとICAOの違いは、構成される組織が異なることです。
IATAは世界の民間航空会社から構成される国際航空運送協会であるのに対し、ICAOは各国政府によって構成される国際民間航空機関になります。
ICAOは国際民間航空の安全と発展を目的として、シカゴで1944年に採択されたシカゴ条約に基づいて発足しました。具体的にはテロ対策のための条約の作成など、安全な国際航空運送のためのガイドラインを策定しています。
IATAとLCC
IATAには2018年時点で50のLCCが加盟しており、世界のLCCマーケットの83%をカバーしています。
IATAに加盟するとコストがかかり、大手航空会社のための団体であると認識されることも多いIATAですが、LCCの発展に焦点をおいたオペレーション開発も行っています。
まとめ 世界の航空輸送の安全と発展を担うIATA
安全を第一に、航空業界の発展を牽引するIATA。
世論の環境への意識の高まりや感染症による旅客需要落ち込みなど、航空業界は過渡期に差し掛かっています。
業界内で重要な役割を担うIATAの活躍に、今後の期待が高まります。
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