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デミニマスルールとは?概要や計算方法などを分かりやすく解説

デミニマスルールとは、国際貿易においてどこの産地の製品かを表すときに重要な役割を担う規定です。米国産のケーキや中国産の洋服、メキシコ産の雑貨など、スーパーや雑貨屋さんでよく目にする○○産という表示について疑問を抱いたことはありますか?その製品は、本当にすべてその産地で生産されているものなのでしょうか。国際貿易に設けられている興味深い制度、デミニマスルールについてご紹介します。

デミニマスルールとは?

デミニマスルールとは、輸入される商品に含まれる原材料が、HSコードの変更基準を満たさない場合であっても、ごく少量であれば無視してよいと認められた救済ルールです。
例えば、米国からクッキーが輸入されたとします。このとき、クッキーに含まれる原材料のメインとして考えられる卵や小麦粉など以外に、ごく数グラムしか使われていない原材料がある場合があります。このような時に適用されるのが、デミニマスルールです。

デミニマスルールの概要

「デミニマス」とは英語で「de-minimis」と書き、「僅少の非原産地材料」という意味です。日本語に訳すと、ちょっとよくわかりにくいですよね。簡単に言うと「僅少の非原産地材料」とは、「当該輸入品にごく少量しか入っていない原材料なら、関税分類変更基準を満たさなくても問題ない」というルールです。
デミニマスルールが適用されるほとんどのケースで、輸入品の原材料のうち完成品に占める割合の10%以下の原材料は、非原材料として認識されます。つまりごくわずかな原材料であれば、関税の基準を考えなくて良いのです。

デミニマスルールはHSコード毎に決められている

デミニマスルールは、HSコード毎に決められています。一般的にクッキーが輸入されると、クッキーの原材料すべてが羅列され、その一つ一つの原材料にHSコードという貨物の分類番号が振られます。振られたHSコードによって、「ごくわずかの非原産材料」として認識される割合が異なるのです。
例えば輸入品のクッキーのHSコードと、原材料それぞれのHSコードを比較します。違うHSコードで分類されていれば関税分類変更基準が適用され、輸入品のクッキーは米国の原産品として扱われます。一方で輸入品のクッキーの中に、米国以外の原産材料が含まれていたとします。その場合、輸入品のクッキーのHSコードと米国以外の原産材料のHSコードが一致してしまうのです。クッキーの材料に関税分類基準を満たさないものがあることで、米国のクッキーを「米国産」と記載できなくなります。
それを救済するのが、デミニマスルールです。本来であれば、非原産材料が含まれているクッキーは原産地認定されません。しかし、HSコード毎に決められたボーダーライン以下しか非原産材料が含まれていないのであれば、これを無視できるのです。

デミニマスルールの注意点

すべての商品にデミニマスルールが適用されるわけではないので注意しましょう。貿易取引する相手国や品目によって、ルールの内容も異なります。実際にデミニマスルールを使用する場合は、各協定を確認しましょう。

デミニマスルールの計算方法

デミニマスルールの計算方法は、当該商品の価格をもとにするものと、重量をもとにするものの2つあります。それぞれの計算方法をお伝えします。

価格をもとに計算

商品をもとに計算する方法は、輸入される商品のFOB価格を基準に計算します。このFOB価格には、純粋な原材料費だけでなく、人件費や利益、通関費や輸送費などすべてが含まれて決められています。価格をもとに計算する場合は、FOB価格に対して「ごく少量」の非原産材料の価格の割合は何%なのかを計算します。この割合が10%以下であれば、デミニマスルールが適用されるのです。

重量をもとに計算

重量をもとに計算する方法は、輸入される商品の総重量を基準に計算します。価格をもとに計算する方法と同様に、総重量に対して「ごく少量」の非原産材料の重量の割合は何%なのかを割り出します。この割合が10%を超えた場合は、デミニマスルールを適用できません。

EPA毎のデミニマスルール

一般的にFOB価格の10%がデミニマスルール適用のボーダーラインとされていますが、EPA毎に異なる割合の場合もあります。取引する相手国別に、適用される基準値をご紹介します。

日シンガポールEPAのデミニマス

  • 第20~21類(野菜、果実、各種食糧調整品など):FOB価格の7%以下
  • 第28~49類(化学工業品、プラスチック、ゴムなど):FOB価格の10%以下
  • 第50~63類(紡織用繊維とその製品):重量の7%以下
  • 第64~97類(帽子、傘、セメント、電子機器、武器など):FOB価格の10%以下

日ASEANEPAのデミニマス

  • 第16類(肉、魚):FOB価格の10%以下
  • 第18類の1803.10,1803.20,1805.00(ココア):FOB価格の10%以下
  • 第19類(穀物):FOB価格の10%以下
  • 第20類(野菜や果物):FOB価格の10%以下
  • 第22.23類(飲料、アルコール、調製飼料):FOB価格の10%以下
  • 第21類の2103.90(各種の調製食料品のうち、ソースやマスタード以外のもの):FOB価格の7%以下
  • 第28~49類(化学工業品、プラスチック、ゴムなど) :FOB価格の10%以下
  • 第50~63類(紡織用繊維とその製品):重量の10%以下
  • 第64~97類(帽子、傘、セメント、電子機器、武器など):FOB価格の10%以下

日チリEPAのデミニマス

  • 第19~21類(穀物、野菜、果実、その他調整品):FOB価格の7%以下
    ※例外 2008.92(ミックスフルーツ、フルーツカクテルなど):FOB価格の10%以下
  • 第28~49類(化学工業品、プラスチック、ゴムなど) :FOB価格の10%以下
  • 第50~63類(紡織用繊維とその製品 ):重量の7%以下
  • 第64~97類(帽子、傘、セメント、電子機器、武器など):FOB価格の10%以下

日オーストラリアEPAのデミニマス

  • 第1~49類(動物性製品、植物性製品、化学工業品など):FOB価格の10%以下
  • 第50~63類(紡織用繊維製品):重量の10%以下
  • 第64~97類(帽子、傘、セメント、電子機器、武器など):FOB価格の10%以下

日メキシコEPAのデミニマス

  • 第1類(生きている動物):FOB価格の10%以下
  • 第4~15類(酪農品、植物性生産品、穀物など):FOB価格の10%以下
  • 第17~49類(調製食料品、化学工業の生産品、紙製品など)FOB価格の10%以下
  • 第25~27類(鉱物性生産品、塩、硫黄など):FOB価格の10%以下
  • 第50~63類(紡織用繊維製品):特定の繊維又は糸の重量が総重量の7%以下
  • 第64~97類(履物、傘、セメント、電子機器、武器など):FOB価格の10%以下

日インドEPAのデミニマス

  • 第15~24類(ラード、飲料など):FOB価格の10%以下
    ※例外 1604.20,1605.20,1605.90,2101.11,2101.20,2106.10,2106.90,2207.10,2207.20
  • 2501.00(塩):FOB価格の10%以下
  • 第28類(無機化学品、貴金属など):FOB価格の10%以下
  • 2906.11, 2918.14, 2918.15,2940.00(メントールなど):FOB価格の7%以下
  • 上記以外の29類(有機化学品):FOB価格の10%以下
    ※例外 2905.44(ソルビトール)
  • 第30~34類(医療用品、石鹸など):FOB価格の10%以下
  • 3505.10, 3505.20(接着剤):FOB価格の7%以下
  • 上記以外の35類:FOB価格の10%以下
    ※例外 3502.11、3502.19(アルブミン)
  • 第36~37類(火薬、写真用の材料など):FOB価格の10%以下
  • 3809.10, 3824.60(ソルビトールなど):FOB価格の7%以下
  • 上記以外の38(化学工業生産品):FOB価格の10%以下
  • 第39~45類(プラスチック製品、皮革製品など):FOB価格の10%以下
  • 第46類(わらなど):FOB価格の10%以下
    ※例外 4601.29,4601.94,4602.19
  • 第47~49類(木材パルプ、紙製品):FOB価格の10%以下
  • 第50~63類(紡織用繊維製品):FOB価格の7%以下
    ※例外 5001.00,5003.00,51.02,51.03,52.01~52.03,53.01,53.02
  • 第64~97類(履物、傘、セメント、電子機器、武器など):FOB価格の10%以下

日EUEPAのデミニマス

  • 第1~49項:FOB価格の10%以下
  • 第50~63項:繊維製品はFOB価格の8%以下、総重量の10%~40%以内
    ※注意 材料の構成等により、異なる許容限度が適用される
  • 第64~97項:FOB価格の10%以下

まとめ/デミニマスルールは救済制度

デミニマスルールは、輸入製品の原産地を示すための救済制度でした。デミニマスルールが適用される条件として、一般的に完成品に含まれる非原産材料の価格が、完成品FOB価格の10%以下であることが挙げられます。取引する相手国や協定によって、価格で判断するのか、総重量に対する割合で判断するのか、またそもそもデミニマスルールの対象製品なのかをしっかり調べることが大切です。

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