EIRとは、コンテナのダメージ状況が記載されている書類です。
コンテナは船会社が所有しており、何度も繰り返し使用されるため破損リスクはついてまわります。
どこで負った傷なのか、コンテナの状況を記録しているEIRは、コンテナの品質維持には欠かせません。
この記事では、国際輸送においてのEIRの特徴や使い方をご紹介します。
目次
EIRとは
EIRとは、貨物を輸送するコンテナの外観状態が記載された証明書のことです。Equipment Interchange Receiptの略で、直訳すると機器受渡証という意味があります。EIRは船会社とコンテナの運送業者の間で受渡しされ、船会社の所有物であるコンテナのダメージの有無などの外観状態が記載されています。
EIRの特徴
コンテナの外観状態を細かく記しているEIR。特徴を3つご紹介します。
EIRの特徴①コンテナのダメージ状況が記載されている
EIRには、先に述べたようにコンテナのダメージ状況が記載されています。このダメージの確認は主に作業員の目視で行われ、コンテナ側面から内部、上部まであらゆる方向からコンテナの品質を確認をします。目視確認だけでは難しい場合は、ハンマー打ちをして確認することもあるようです。
ダメージと判定されるものとして、コンテナの亀裂や床の損傷、変形やフォークリフトの傷、運ばれた貨物の種類を表すラベルの残り、落書きなどが挙げられます。
EIRの特徴②コンテナの管理責任を明確にしている
EIRの存在意義として、管理責任の明確化が挙げられます。コンテナは、船会社の所有物です。何かコンテナを使って貨物を輸送したい場合は、船会社にコンテナを借りる予約をいれて使うことができます。所有者は船会社ですが、国際物流過程でコンテナを取り扱うのは船会社だけではありません。取り扱う業者が変わるタイミングで、EIRでコンテナの品質を確認してから貸出・返却を行い、コンテナがダメージを受けた場合の責任をはっきりさせる狙いがあります。
EIRの特徴③保険金請求のための補完書類となりうる
輸入した貨物に破損や水漏れが見つかった場合は、コンテナ自体の破損状況を確認します。もしコンテナに損傷が見つかった場合は、海上保険会社に連絡を入れます。そのときに必要になるのが、EIRです。EIRはコンテナがどこでダメージを受けたかを示してくれるため、責任の所在のヒントになります。
しかしEIRはあくまで人間による目視確認によって作成されているため、ダメージが見逃されている可能性も拭えません。EIRの発行は責任所在を明らかにするという目的だけでなく、保険金を請求するための補完書類としての役割もあります。
EIRの使い方
EIRは、
①コンテナターミナルからコンテナ運送業者にコンテナが引き渡されるとき
②貨物搬入済みのコンテナをコンテナ運送業者からコンテナターミナルに引き渡されるとき
の計2回のタイミングで使用されます。
①の場合は、貨物が搬入される前の空コンテナ、②の場合は貨物が搬入された後の実入りコンテナです。
コンテナを借りて輸送したい発送者は、まず船会社にコンテナの予約を行います。依頼を受けたコンテナ運送業者は、予約当日に空のコンテナが保管されているバンプールからコンテナを引き取り、ゲートを出るタイミングで作業員によるコンテナの外観チェックが行われます。傷やへこみ、穴や汚れの有無を確認してEIRに詳細を書き込まれ、ドライバーに渡されます。
その後貨物を搬入し終えたコンテナが、ターミナルに戻ってきたタイミングでEIRの再登場です。行きと同じように複数の作業員によってゲートでコンテナの外観の品質チェックが行われます。このとき、最初に記載されたEIRの内容と相違がない状態かを確認され、問題がなければ船によってコンテナが運ばれていきます。
EIRの記載事項と異なる破損がコンテナに確認された場合は、ダメージを与えた人が修理費用を負担することになっています。
この流れは輸出であっても、輸入であっても同じです。
EIRの記載事項
EIRの記載事項は、以下の通りです。
・コンテナが輸送される船名
・コンテナ番号
・コンテナの種類
・シール番号
・コンテナサイズ
・ドレー会社(コンテナ運送業者)
・搬出入の日付
・コンテナの総重量
・船積み港
・仕向け港
・商品詳細
・予約番号
・図によるコンテナのダメージ状況
EIRの問題点
EIR発行のためのコンテナの外観チェックは、作業員の目視確認で行われています。機械で行われていることではないため、どうしてもミスが発生してしまうのがEIRの問題点です。その理由は2つあります。
①作業員のダメージ見落とし
②作業員によるダメージ基準差
ダメージチェックの基準は、国際基準であるIICL(Institute of International Container Lessors)基準や船会社、ターミナルによって設定されている基準に沿って行われています。これらの基準を超えた破損がコンテナに見つかった場合は、修理の対象です。しかし貿易はさまざまな国家間で行われています。国の文化や性格の色によっては、EIR発行の外観チェックがきちんと行われているか怪しいときもあり、コンテナの管理責任の明確化は今後も課題のようです。
まとめ/コンテナのダメージを記録するEIR
コンテナの破損は、貨物の破損に大きな影響を与えます。何日も海の上で輸送されるコンテナは波や天候状況によって予想以上にダメージを受けるため、貨物の品質維持にはコンテナの品質が重要です。繰り返し利用されるコンテナのダメージをEIRに記載するという手順が踏まれることで、どこでついた汚れなのか、責任の所在を明確にすることができます。大切な貨物が無事に発送先に届くためにも、国際物流においてEIRは欠かせない書類です。