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GATS協定とは 概要や影響を分かりやすく解説

GATS協定とは、サービス貿易における市場の拡大を目的とした協定のことです。

サービス貿易は簡単にいうとサービスの輸出入を指します。

(サービス貿易については、記事内で解説します。)

 

この記事では、

  • GATS協定の概要が知りたい
  • GATS協定における影響が知りたい
  • サービス貿易とは具体的どんなことなのか

 

このような疑問にお答えしていきます。

 

この記事では、GATS協定の目的や範囲、GATS協定の影響についてまとめています。

この記事を最後までお読みいただくことで、GATS協定がどのような協定なのか一貫して理解することができるでしょう。

 

GATS協定とは

 

GATS協定とは、世界貿易機関を設立するマラケッシュ協定(WTO協定)の一部でサービス貿易に関する一般協定のことです。

GATS協定の主たる内容は、特定のサービス分野における自由化の約束です。

そのため、各国は自国のサービス市場を他国に解放する義務があります。

サービス市場を他国に解放することで、国際的なサービス市場の拡大や各国の経済成長、消費者の選択肢の拡大に繋がります。

 

例えば、GATS協定加盟国では以下のような遵守すべき基本的なルールが定められています。

 

  • 最恵国待遇:すべての加盟国に対して同等の待遇を提供する
  • 透明性:サービス貿易に関する内容を透明にし、他国に情報提供する

 

このようなルールを基本としてGATS協定は構成されています。

 

■GATS協定の構成

  • 前文
  • 本文
  • 8個の附属書
  • 各国の約束表で構成

 

また、GATS協定は数ある分野のサービス貿易を4つのモードに分類していることが特徴的です。

※サービス貿易4つのモードについては記事中盤で解説しています

 

GATS協定にどれくらいの国が加盟しているかというと、2024年現在で164の加盟国となっています。

主な加盟国はアメリカ合衆国、日本、中国、欧州連合(EU)、インド、ブラジル、ロシア、オーストラリアなどです。

(GATS協定は世界貿易機関(WTO)の一部であることから、WTOの加盟国=GATS加盟国となります。)

 

このように、GATS協定はサービス貿易市場の拡大を目的とした多国間国際協定だと言えるでしょう

 

GATS協定とEPA/FTA

 

GATS協定とEPA/FTAは国際貿易の促進として関わりあいがあるため、合わせて覚えておくと良いでしょう。

EPA/FTAの原則はGATS協定に基づいています。

その中でそれぞれの協定には以下の特色があります。

 

  • EPA(経済連携協定):FTAの内容に加えて、投資・人の移動・知的財産保護など幅広い分野の協力を含む協定
  • FTA(自由貿易協定):特定の国や地域間で関税やサービス貿易を削減・撤廃することを目的とした協定

 

上記の通りEPA/FTAは、GATS協定の原則に加えて特定の国や地域でサービス貿易の自由化を促進することを目指しています。

このように、EPA/FTAはGATS協定を補完する形の協定であると言えるでしょう。

 

サービス貿易の定義

 

そもそもサービス貿易とはどういうことなのでしょうか。

サービス貿易とは国境を越えてサービスの輸出入をする国際貿易のことです。

例えば、日本からハワイへ観光旅行した場合、現地のホテル・レストランなどでサービスを受けることがあります。

このように、消費者が日本からハワイへ移動してサービスを受けることはサービス貿易に当たります。

その他にも、日本の銀行が海外に支店を開設し、現地で金融サービスを提供する場合もサービス貿易になります。

このように、国境を越えてサービスを提供したり受けたりすることを「サービス貿易」と言います。

 

GATS協定サービス貿易4つのモードとは?

 

GATS協定では、数あるサービス貿易を大きく4つのモードに分類しています。

 

■GATS協定サービス貿易4つのモード

  • モード1:国境を越える取引
  • モード2:海外における消費
  • モード3:業務上の拠点を通じてのサービス提供
  • モード4:自然人の異動によるサービス提供

 

以下で順番に解説します。

 

モード1|国境を越える取引

 

モード1では、サービス貿易の中から「国境を超える取引」を分類しています。

国境を越える取引とは文字通り、サービスが国境を越えて提供される形態を指します。

例えば、海外加盟国から自国に以下のようなサービス提供を受ける場合などです。

 

  • オンラインサービス
  • ソフトウェアのダウンロード

 

モード2|海外における消費

 

モード2では、サービス貿易の中から「海外における消費」を分類しています。

海外における消費とは、消費者が加盟国へ行きサービスを受ける形態を指します。

例えば、日本から加盟国へ「留学や観光」に行くことがそれに当たります。

モード2では物理的に移動が必要であることが特徴的です。

 

モード3|業務上の拠点を通じてのサービス提供

 

モード3では、サービス貿易の中から「業務上の拠点を通じてのサービス提供」を分類しています。

つまりは、サービス提供者が他国に拠点を置いてサービスを提供する形態のことです。

例えば、現地法人が提供する流通サービスなどがそれに当たります。

 

モード4|自然人の異動によるサービス提供

モード4では、サービス貿易の中から「自然人の異動によるサービス提供」を分類しています。

この場合、サービス提供者が一時的に他国で働くことがそれに当たります。

例えば、専門家が一時的に他国で仕事をすることや、海外アーティストが日本でコンサートを行うことなどです。

 

以上のように、GATS協定は4つのモードに大きく分類されます。

では、具体的にはどのようなサービスがあるのでしょうか?

次で詳しく解説します。

 

GATS協定の範囲

 

GATS協定の適用範囲は、政府の権限の行使として提供されるサービスを除く、すべてのサービス貿易に関するものです。

具体的なサービスについては以下の表をご覧ください。

 

サービス分野 サービス例
1.実務サービス ・自由職業サービス

・電子計算機及び関連のサービス

・研究及び開発サービス

2.通信サービス ・郵便サービス

・クーリエサービス

・音響映像サービス

3.建設サービス及び関連のエンジニアリングサービス ・建築物に係る総合建設工事

・土木に係る総合建設工事

・設置及び組立工事

4.流通サービス ・問屋サービス

・卸売りサービス

・小売サービス

5.教育サービス ・初等教育サービス

・中等教育サービス

・高等教育サービス

6.環境サービス ・汚水サービス

・廃棄物処理サービス

・衛星サービス及びこれに類似するサービス

7.金融サービス ・全ての保険及び保険関連サービス

・銀行及びその他の金融サービス

・その他

8.健康に関連するサービス及び社会事業サービス ・病院サービス

・その他の人に係る健康さ-ビス

・社会事業サービス

9.観光サービス及び旅行に関連するサービス ・ホテル及び飲食店(仕出しを含む)

・旅行業サービス

・観光客の案内サービス

10.娯楽、文化及びスポーツのサービス ・興行サービス

・通信社サービス

・図書館及び記録保管所のサービス

11.運送サービス ・海上運送サービス

・内陸水路における運送

・航空運送サービス

12.いずれにも含まれないその他のサービス ・その他

 

上記はGATS協定の範囲の一例になります。

詳しくは以下のページで確認することができます。

WTO事務局のサービス分類|外務省 (mofa.go.jp)

 

GATS協定における日本の約束

 

日本はGATS協定の特定のサービス分野において「市場アクセス」と「内国民待遇」を約束しています。

 

市場アクセスでは、サービス提供者の数の制限や取引総額の制限などを約束しています。

例えば、外国の銀行が日本で支店を開設する際に制限を緩和することなどです。

 

内国民待遇では、外国のサービス提供者が不利な扱いを受けないことを約束しています。

具体的には、外国の法律事務所が日本で業務を行う際、日本の法律事務所と同じ条件で営業できるようにするなどがそれに当たります。

 

GATS協定における日本の約束については以下のページで詳しく確認できます。

協定の内容|外務省 (mofa.go.jp)

 

このように、日本はGATS協定を通して外国のサービス提供者に対しても国内のサービス提供者と同様の待遇を提供する義務があります。

 

GATS協定の影響

 

ここではGATS協定の影響について、良い影響・悪い影響について解説します。

 

まず、GATS協定の良い影響ですが、サービス貿易の自由化が進み経済が活発になります。

なぜなら、サービス貿易の自由化はサービス提供及びサービスを受ける消費者のマッチングが増えるからです。

例えば、各国がサービス貿易を解放することで、企業は新しい市場に参入しやすくなります。

それにより国際的なサービスが増加し、消費者がより多くのサービスを受けやすくなることに繋がっていきます。

このように、GATS協定は企業と消費者双方に良い影響をもたらします。

 

次にGATS協定の悪い影響ですが、国内産業への影響が考えられます。

なぜなら、サービス貿易が自由化するということは、競合が自国へ参入してくるからです。

例えば、外国企業のサービス品質・コストが国内産業を上回れば消費者がそちらに流れるリスクがあるでしょう。

つまりは、競合との競争にさらされてしまう訳です。

 

まとめ

 

この記事では、GATS協定の概要や影響について解説しました。

GATS協定とは、サービス貿易市場の拡大を目的とした協定のことです。

サービス貿易とは、国境を越えてサービスを提供したり受けたりすることです。

 

GATS協定では「基本ルール」、「サービス貿易4つのモード」などが軸として構成されています。

 

■GATS協定の基本ルール

  • 最恵国待遇:すべての加盟国に対して同等の待遇を提供する
  • 透明性:サービス貿易に関する内容を透明にし、他国に情報提供する

 

■GATS協定サービス貿易4つのモード

  • モード1:国境を越える取引
  • モード2:海外における消費
  • モード3:業務上の拠点を通じてのサービス提供
  • モード4:自然人の異動によるサービス提供

 

GATS協定はサービス貿易の自由化が進み経済が活発になる良い影響があります。

その半面、多国間競争にさらされることになり国内産業への打撃も考えられるでしょう。

 

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