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自由貿易とは メリット・デメリットとともに分かりやすく解説

今回は、自由貿易について解説します。

自由貿易とその対義語である保護貿易は、学校の教科書にも載っている定番の用語です。

多くの方がすでにご存知かもしれませんが、用語確認とともに、メリットとデメリット、自由貿易化の流れを確認していきましょう。

当記事では、次のような内容に沿ってお伝えします。

自由貿易とは

 

自由貿易とは、国家が輸入関税や輸入に制限を最小限にし、商品やサービスを自由に取引できる貿易形態を指します。

また国家が市場の力を信頼し、他国との経済的つながりを深めることで、国全体の利益を増やすことを目指しています。

自由貿易の対義語は、保護貿易です。
自由貿易と保護貿易は、経済政策における重要なテーマであり、これまで多くの議論が繰り広げられてきました。

歴史の中では、19世紀から20世紀初頭にかけて、多くの国が保護貿易を採用してきました。
例えば、イギリスの「航海法」や、アメリカの関税政策などが挙げられます。


しかし20世紀後半以降、経済のグローバル化が進む中で、自由貿易を推進する動きが主流となってきました。
GATT(関税および貿易に関する一般協定)の設立(1947年)や、その後のWTO(世界貿易機関)への発展(1995年)は、自由貿易を促進する重要な転換点として知られています。

また、21世紀に入ってからは、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)といった二国間・多国間の枠組みを通じて、自由貿易がさらに加速しています。
例えば、日本が推進しているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、自由貿易の具体的な成果の一つといえます。

保護貿易とは

 

保護貿易とは、自国の産業を保護するために国家が関税や非関税措置を講じ、
貿易に制限をかける政策を指し、輸入品との競争から自国産業を守り、国内経済の安定を図るために行われます。

自由貿易が輸入によって国内産業の衰退を招く可能性があるのに対し、保護貿易はその逆に、自国産業を強化しようとする意図を持っています。

貿易は国全体として利益をもたらし、人々の暮らしを豊かにする一方で、その恩恵が平等に分配されるわけではありません。
保護貿易は、輸入競争の影響を受ける特定の産業や労働者を保護するための手段として用いられます。


しかし消費者にとっては、保護された産業の製品が高価になったり、選択肢が減るといったデメリットを伴う場合もあります。

歴史を振り返ると、18世紀から19世紀にかけて、イギリスやアメリカなど多くの国で保護貿易政策が採用されていました。
例えば、イギリスの「穀物法」やアメリカの「スムート・ホーリー関税法」などが代表的な例です。


しかし、第一次世界大戦や第二次世界大戦後、世界経済の復興と安定を目的として、保護貿易を段階的に解消し、自由貿易を推進しようとする動きが加速しました。


その後のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)の設立や、WTO(世界貿易機関)への移行がその象徴と言えます。

保護貿易は現在でも、一部の国や分野で重要な政策として採用されています。
特に、先進国が自国の農業や労働集約型産業を守るために行う関税措置や補助金政策は、保護貿易の一例として挙げられます。

自由貿易のメリットとデメリット

 

自由貿易には、経済成長を促進する側面と、社会や産業に悪影響を及ぼす可能性の両面があります。
ここでは、自由貿易のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

自由貿易のメリット

輸出する商品の輸出国側産業が成長する

自由貿易により、企業は外国市場にアクセスできるようになり、新たな消費者層を獲得できます。
これにより、生産規模の拡大や輸出産業の成長が期待されます。
例えば、日本の自動車メーカーが世界各国へ輸出することで業績を伸ばしてきたのは、このメリットの代表例です。

輸入国消費者が商品を安く購入できるようになる

関税が撤廃または引き下げられることで、企業は輸入品をより低価格で提供できるようになります。
その結果、輸入国の消費者はより手頃な価格で多様な商品を購入できるようになります。
例えば、海外の農産物や家電製品が国内市場で安価に手に入るようになったことで、生活コストが下がるケースがあります。

経済の効率化とイノベーションの促進

自由貿易により、各国は比較優位に基づいた産業に特化するようになります。
これが資源の効率的な活用につながり、経済全体の生産性を高めます。
さらに、グローバル競争が企業の技術革新を促し、消費者にとってより優れた製品やサービスを提供する動機になります。

自由貿易のデメリット

 

輸入国産業が衰退する恐れがある

自由貿易により輸入関税率が下がると、輸入品が国内市場に流入します。
結果、輸入品と競合する国内産業が価格競争に敗北し、衰退してしまう可能性があります。
特に、発展途上国の農業や繊維産業などが先進国からの安価な輸入品に圧迫される例は顕著です。

失業者増の恐れがある

輸入品の増加により国内産業が衰退した場合、企業は雇用を維持できなくなります。
その結果、従業員が解雇され、失業者が増えるリスクがあります。
特に、製造業の一部では安価な輸入品との競争が激化し、工場閉鎖やリストラが進んだケースが少なくありません。

経済格差の拡大

自由貿易の恩恵を受けるのは、必ずしもすべての人々ではありません。
輸出産業や先進国の高度な技能を持つ労働者は恩恵を受けますが、
競争にさらされる産業や労働者は不利益を被る可能性があり、地域間や階層間の経済格差が拡大する恐れがあります。

自由貿易化の流れ

 

近年では、多くの国が自由貿易を目指して積極的に行動しています。
日本もその一員として、国際的な枠組みや二国間の協定を通じて自由貿易を推進しています。

GATTとWTO

 

GATT(関税及び貿易に関する一般協定)は、貿易の障壁となる関税やその他の規制を緩和し、自由な貿易体制を実現することを目的とした国際協定です。
1947年にスイスのジュネーブで署名され、1955年に日本も加盟しました。

GATTは当初、物品の貿易のみを対象とした協定でしたが、1995年に設立されたWTO(世界貿易機関)へと発展しました。
WTOは物品に加えてサービスや知的財産なども対象とする包括的な国際機関であり、自由貿易をより幅広い分野で推進しています。
GATTが「協定」であるのに対し、WTOは「組織」である点が大きな違いです。

現在、WTOには164カ国が加盟しており、国際貿易のルール作りや紛争解決の場として機能しています。
ただし、加盟国の多様な利害関係が交渉を複雑にし、最近ではWTOでの交渉進展が難航するケースも増えています。

 

FTAやEPAの新規締結

 

WTO交渉が停滞する中、近年では二国間や地域的な自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)や経済連携協定(EPA: Economic Partnership Agreement)が多く締結されています。
これらの協定は、関税の削減や貿易ルールの整備に加え、投資やサービス、知的財産の保護など幅広い分野での協力を目的としています。

FTAやEPAは、多国間交渉に比べて迅速に締結できるため、各国が経済戦略の一環として活用しています。

 

日本の動き

 

日本もまた、自由貿易を推進する国の一つです。
1955年にGATTへ加盟し、その後もWTOやFTA、EPAを通じて自由貿易を積極的に進めてきました。

二国間協定の例

  • 2015年に発効した日オーストラリア経済連携協定は、農産物や鉱産物の貿易を円滑化し、両国の経済関係を強化しました。
  • 2021年には、EU離脱後のイギリスとの経済関係を維持するため、日英経済連携協定が発効しました。

地域的協定の例

  • 2017年には、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)を締結。
    当初アメリカが参加予定でしたが、離脱後も日本が主導して協定を成立させました。

2020年には、ASEAN10カ国に加え、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドが参加するRCEP(地域的な包括的経済連携協定)に署名。この協定は、東アジア地域を中心とする広域経済圏を形成するものであり、日本にとって初めて韓国と直接の経済協定を結んだ点でも注目されています。

まとめ

 

今回は、自由貿易について、その基本概念、歴史、メリットとデメリット、さらには自由貿易化の具体的な流れについて解説しました。

自由貿易には経済の成長や消費者の利益を促進する一方で、国内産業や労働者に悪影響を与える可能性があるという両面性があります。
そのため、自由貿易と保護貿易のどちらが優れているかという議論は、経済学者を中心に長年続いており、今後も解決のないテーマであり続けるでしょう。

日本はこれまで一貫して自由貿易を推進してきました。
特に近年では、FTAやEPAなどを積極的に締結し、国際貿易の拡大と経済連携の強化を図っています。
これにより、輸出産業の成長や消費者利益の向上といった成果が見られる一方で、国内産業の競争力を高めるための政策や支援も重要な課題となっています。

貿易取引を行う方であれば、これらの協定の内容をしっかり把握し、自社のビジネスにどのように活用できるかを検討することが必要です。
例えば、特定の輸入品にかかる関税が下がる場合、仕入れコスト削減や価格競争力の向上につながる可能性があります。

経済連携協定に関する疑問がある場合は、専門家や物流会社に相談することで、より具体的なアドバイスを得ることができます。

 

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