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危険品の国際輸送をする際に知っておくべきこと

危険品の輸送には、普通の品の輸送とは異なるルールがあります。

これは危険品の安全な輸送を行うために、国連やIATA(国際航空運送協会)といった国際機関で各国共通のルールを定めているからです。

この記事では、国際輸送における危険品の基本情報、梱包とラベリング、必要書類、輸送方法ごとの特徴、少量危険品の輸出について解説をしていきます。

危険品とは?

危険品とは、国際連合危険品輸送勧告で定める9つの分類区分に1つ以上当てはまる物質のことです。

危険品の国際輸送は国連が定めた「危険品輸送に関する勧告(通称、オレンジブック)」のルールに従って行わなければいけません。

オレンジブックは、海上輸送、航空輸送の規則のベースになっています。

危険品クラスとUN(国連)番号について

国連が定める9つの危険品クラスは下記の通りです。

分類区分 分類
クラス1 火薬類 花火、導火線、発煙筒など
クラス2 高圧ガス類 ライター、消化器、殺虫剤など
クラス3 引火性液体類 ガソリン、印刷用インク、接着剤など
クラス4 可燃性物質類 マッチ、マグネシウム粉末、カルシウムなど
クラス5 酸化性物質類 漂白剤、硝酸アンモニウム肥料、エチルなど
クラス6 毒物類 医薬品、殺虫剤、消毒剤など
クラス7 放射性物質類 放射性同位元素、放射性医薬品など
クラス8 腐食性物質類 液体バッテリー、塩酸、水銀など
クラス9 有害性物質類 ドライアイス、リチウムイオン電池、リチウム金属電池など

参照元:全日本空輸株式会社

UN番号とは、危険品クラスに該当する品物を表す4桁の数字のことです。

UN番号は、例えば、UN0017といった4桁の数字で、危険品の危険性、使用すべき容器の種類や材質、梱包方法、取扱方法、積載できる数量と重量、隔離方法などについて表します。

UN番号の種類は3,000以上もあり、定期的に改定が行われています。

UN番号を使用することで、各国での危険品の取り扱いを統一することができるのです。

危険品の容器とラベル、SDSについて

ここでは、危険品の容器とラベルの規定、SDS(安全データーシート)について見ていきましょう。

危険品の容器

危険品の国際輸送には、UN容器を使用しなければいけません。

UN容器に表示がされているUNマークは、一般社団法人日本舶用品検定協会が、危険品の包装及び容器について、国土交通省が定める技術基準への適合を認定している証明になります。

UNマークを表示することで、海上・航空・陸上での危険品の国際輸送ができるようになるのです。

UN容器には、危険品の危険度に合わせた3つの等級があります。

容器等級 内容
容器等級I  危険性が高いもの
容器等級II   危険性が中程度なもの
容器等級III   危険性が低い

UN容器には、丸印内にUNの文字が記載されているUNマークの他に、下記の表記があります。

  • 容器の種類(材質・天板の種類を含む)
  • 容器の等級
  • 内容物の比重
  • 水圧試験圧力(キロパスカル)
  • 製造年(西暦の下2桁)
  • 容器の承認国名
  • 製造者の略号

危険品のラベル

危険品の国際輸送には3種類のラベルが必要です。

  • 危険品クラスを表示した正標札
    注)危険品に副次危険性がある場合は、副標札が必要
  • 国連番号のラベル
  • Proper Shipping Nameのラベル
    注1)航空輸送では正式輸送品目名、海上輸送では正式品名と訳される
    注2)正式品名とは商品名ではなく、危規則などに記載された品名のこと

危険品ラベルは、日本海事検定グローバルサポート株式会社のオンラインショップから購入できます。
日本海事検定グローバルサポート株式会社オンラインショップ

SDSとは?

SDS(Safety Data Sheet)とは製品の安全データーシートのことです。
SDSを見ることで製品のUN番号と危険クラスが分かります。

SDSは化学物質の製造者やメーカーが発行をして、使用者に渡しています。
SDSを入手したい場合は、メーカーのホームページからダウンロードするか、電話かメールで問い合わせをしましょう。

SDSには16項目の記載事項がありますが、国際輸送に関連するのは、科学的物質情報を記載した第9項と、輸送上の注意を記載した第14項、及び、適用法令を記載した第15項です。

危険品の海上輸送について

ここでは海上輸送での危険品の輸出と輸入について解説します。

輸出の場合

危険品の輸出は基本的には通常品の輸出と同じですが、別途、下記の書類が必要になります。

  • SDS: 和文と英文のもの
  • P/L(パッキングリスト):危険品自体の重量(NET WEIGHT)と、
    梱包された状態での重量(GROSS WEIGHT)が記載されたもの
  • 容器証明書:UN容器の容器コードが記載されたもの
  • 危険品明細書: 船舶所有者、または、船長に対して危険品の種類と数量、
    緊急時の連絡先や防災処置について申告し、貨物が関係法令に適合した運送に適していることを証明する書類
  • 危険品・有害物事前連絡表:危険品の輸送による労働災害を防止するために、輸送される危険品の数量、種類、数量、似姿、性状、取扱時の注意事項を記載した書類

輸入の場合

危険品を輸入する予定がある場合には、まず、SDSの第15項を見て、輸入予定品が危険品に該当するかを確認しましょう。

SDSの第15項に危険品を対象とする法令が記載されていれば、輸入予定品は危険品に該当します。

次に、品物が輸入可能かの確認が必要です。

輸入通関を申告する前に、他法令での承認や許可が必要な品物があります。
最低限の事前準備として、輸入予定品が下記の3法令に抵触するかどうかを確認しておきましょう。

  • 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
  • 毒物及び劇物取締法施行規則
  • 麻薬向精神薬原料輸入規制

輸入できることが分かった後で、輸入手配を行います。

輸入時に税関申告を行う際には、B/L、P/L、インボイス、アライバルノーティス以外にも、
SDSと、その他の法令で必要とされる許可書が必要です(該当する法令がなければ不要)。

輸入後の国内での貨物の輸送や保管は日本の消防法、毒劇物取扱法に基づいて行う必要があります。

また、危険品はコンテナヤードでの長期間保管ができないため、危険品を取り扱える倉庫への移送が必要です。

国内法についても事前に確認をしておかないと、輸入後に保管場所がないといったトラブルが起きる可能性があるので注意しましょう。

危険品の航空輸送について

航空輸送で危険品を輸出する際には、まず、輸出対象品のSDSから危険品としての特性を確認しましょう。

航空機での危険品の取扱と梱包条件は、IATA(国際航空運送協会)が定めています。

IATA危険品規則書(IATA Dangerous Goods Regulation)で定める、危険品の特性に合わせた要求事項に全て適合しない限り、貨物の航空機への搭載は許可されません。

IATA危険品規則書の定めに従って、輸出者は規定量以下の危険品を容器へ収納し、マーキングとラベリングを行なった上で、航空会社へ貨物と危険品申告書を提出します。

危険品が貨物専用機、または、旅客機のどちらに搭載されるかについても、IATA危険品規則書が定める危険品の分類や、数量、容量によって決められます。

少量危険品の輸出について

ここでは、少量危険品の輸出について見ていきましょう。

危険品が少量の場合はUN容器を使わなくても良い場合があります。

少量危険品用表示を輸送物にすれば、国連番号、正式品名、危険品クラスの表示も不要です。

どのような場合に少量危険品に該当するかを見ていきましょう。

  • 危険品の容量、または、質量が危険品リスト(別表第1)の「少量危険品の許容容量又は許容質量」欄に記載されていること
  • エアゾール(UN1950)等の物品危険品以外の危険品が、危険品リストの「小型容器又は高圧容器」の欄に記載された、内装容器と外装容器を組み合わせた容器に収納されていること
  • 危険品リストの「少量危険品の許容容量又は許容質量」欄に記載された容量、または、質量以下であること
  • 少量危険品であることをラベル表示していること
  • 輸送物1個あたりの、輸送時の総重量が30kg以下であること

少量危険品の航空輸出と海上輸出のメリットとデメリット

ここでは、少量危険品を航空輸出、または、海上輸出した場合の、それぞれのメリットとデメリットについて見ていきましょう。

航空輸出のメリットとデメリット

メリット

  • 貨物の輸送手続きと輸送時間が短い

デメリット

  • 輸送費用が海上輸送より高額になる(一般的には約3倍かかる)
  • 旅客機に搭載できる危険品の数量は厳しく制限されているため、大量輸出には向かない
  • 貨物専用機はフライト数が少なく、輸送費用が割高になる
  • 航空機の積載スペースは船に比べて小さいため、搭載できる貨物のサイズが制限される

海上輸出のメリットとデメリット

メリット

  • 航空輸送に比べて輸送費用が安い
  • 大量輸送ができる
  • 航空輸送に比べて危険品の梱包ルールが厳しくない

デメリット

  • 輸送に時間がかかる
  • 航空輸送よりも輸送に必要な工程が多い
  • 貨物の最小単位が通常1M3のため、危険品が少量であることに対して割高になる
  • 危険品が他の貨物との混載ができない隔離規定品の場合には、
  • 少量でもコンテナ1本を使用するため輸送費が割高になる

危険品の性質、納期、費用、各輸送方法のメリットとデメリットを総合的に判断した上で、海上輸送か航空輸送にするかを判断すべきでしょう。

まとめ

危険品の国際輸送を行うためには、国際ルールを理解した上で、梱包、ラベリング、書類手続きを行うことが大切です。

思わぬ納期の遅れや、追加費用の発生等のトラブルを防ぐためにも、危険品の国際輸送に対する要求事項に基づいた手配をしましょう。

危険品の特性を理解することで、最適な輸送方法を選ぶことができ、効率の良い貿易業務を行なっていけます。

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