貨物を輸出または輸入しようとする際、通関業者にその手続きの代行を依頼していることが一般的です。
そのため、自ら通関手続きを行なった経験がない方も多いかもしれません。
実は、通関手続きは自ら行うこともできます。
今回は、自社通関について、メリット・デメリットと輸入通関手続きの流れをご紹介します。
当記事では、次のような内容に沿ってお伝えします。
目次
通関手続きとは
貨物を輸出又は輸入しようとする際は、当該貨物の品名、数量、価格等の必要事項を税関長へ申告し、その許可を受けなければならないこととされています。(関税法67条)
輸入申告にかかる一連の手続きのことを輸入通関手続き、輸出申告にかかる一連の手続きのことを、輸出通関手続きと言います。
なぜ通関手続きが必要なのか
通関手続きは、関税法に基づいて、輸出者及び輸入者に対してその申告が義務付けられています。
多くの国家は、武器や軍事転用される可能性のある貨物が、テロリスト等の国家安全保障を脅かす危険な人物や組織に渡ることを防ぐために、貿易管理を行なっています。
我が国日本でも、安全保障の観点から法令に基づいて貿易管理を行なっています。
通関手続きの義務付けは、国家による貿易管理のうちの1つと言えます。
誰が通関手続きを行うのか
関税法では、輸出者及び輸入者に対してその申告が義務付けられています。
一般的には、輸出者及び輸入者が自ら通関手続きを行わず、依頼を受けた通関業者が代わってその手続きを行なうことが多いです。
自社通関とは
通関手続きは、通関業者に依頼して代わって行なってもらうことができますが、もちろん輸出者または輸入者が自ら行うこともできます。
会社自らが通関手続きを行うことを、一般的に自社通関と言います。
メリット
自社通関の最大のメリットは、コストを抑えられることです。
通関手続きを業者に依頼した場合、輸入申告料(または輸出申告料)、取扱手数料等を支払う必要があります。
自ら通関手続きを行えば、これらの支払いが不要となります。
通関業務の各料金額は、通関業者によって異なりますが、輸入申告料1件につき11,800円、輸出申告料1件につき5,900円と設定されていることが多いです。
具体的な料金額は、各通関業者のホームページ等で確認してください。
もし輸入通関手続きを自ら行えば、通関業者に依頼したときより、1件につき少なくとも10,000円以上のコスト削減を期待できるでしょう。
デメリット
最大のデメリットは、適正かつ迅速な通関手続きを行えないリスクが大きいことです。
一般的に、通関手続きは複雑で難しいとされています。
もし適正な通関手続きを行えなかった場合、過少申告加算税や重加算税といった追加コストが発生したり、関税法等違反により罰則が課されたりする可能性があります。
また、迅速に通関手続きを行えなかった場合、輸入後の業務スケジュールの変更を余儀なくされたり、特に生鮮食品など、貨物そのものが時間の経過によるダメージを受けたりする可能性があります。
自社通関をおすすめできる方
以下の方は、自社通関を検討してみても良いかもしれません。
- なるべくコストを抑えたい方
- 通関手続きに関する専門的知識や経験を有している方
- 通関手続きに関して相談できる相手をお持ちの方
- 輸入品目または輸出品目が少ないなど、申告内容が比較的シンプルな方
自社通関にはメリットとデメリットがあります。
それぞれを十分に検証、検討した上で判断されることをおすすめします。
自社で行う輸入通関手続きの方法
今回は輸入通関手続きの方法をご案内します。
自社で輸入通関手続きを行う場合は、紙による申告と、税関にある窓口電子申告端末による申告の、いずれかの方法で行うことができます。
紙による申告
必要事項を紙に記入して、税関に輸入を申告する方法です。
輸入申告書は、税関窓口またはインターネット上でのダウンロードによって入手できます。
窓口電子申告端末による申告
税関の窓口に設置されている端末を使って申告する方法です。
この端末では、NACCSという輸出入・港湾関連情報処理システムによって、輸入申告、輸出申告、修正申告等の手続を電子的に行うことができます。
品目統計番号や取引価格等の必要事項を入力することで、課税価格の算出、輸入関税や消費税等の税額計算を自動で行なってくれるので、大変便利です。
端末を利用して申告を行うためには、税関窓口に用意された端末利用申込書を提出する必要があります。
輸入通関手続きの流れ
自社通関の場合も、通関業者に依頼した場合も、基本的に通関手続きの流れは同じです。
ただし、予備申告制度やAEO輸入者(特例輸入者)制度等を利用すると、それぞれ流れが異なります。
今回は、最も一般的な輸入通関手続きの流れをご案内します。
保税地域への貨物搬入
輸送方法が船でも飛行機でも、外国から到着した貨物は保税地域と呼ばれる場所に搬入されます。
外国貨物は、例外を除いて、保税地域以外の場所に置くことができません。(関税法30条)
保税地域とは、税関の管轄下にある、外国貨物の保管、加工、製造、展示などができる場所のことです。
保税地域に貨物が搬入されると、通関手続きを行うことができます。
輸入申告
必要書類と一緒に輸入申告書を税関に提出して、輸入申告を行います。
申告の際必ず提出する書類は、
①インボイス
②パッキングリスト
③B/L等の海上運送状又は航空貨物運送状
④運賃や保険料の明細書
です。
そのほか、申告内容によって、原産地証明書や検疫所承認証などの書類が追加で必要となります。
税関による書類審査・検査
税関が、提出された輸入申告書やその他書類を確認します。
税関の判断次第では、税関職員が実際に貨物を確認することもあります。
また、コンテナで輸入する場合には、そのコンテナをX線検査装置に通すことによって検査されることもあります。
初めて輸入申告を行った場合は、かなりの確率で税関検査となっているようです。
税関による書類審査と検査は、実際に申告してみないとどのようになるかは分かりません。
何度も輸入を行なっている実績があっても、税関検査となることもあります。
輸入許可
税関による審査や検査を無事に終えると、税関から輸入許可書が交付されます。
輸入許可を得た時点で、外国から到着した貨物は内国貨物に変わります。
貨物の引取り
輸入許可後、輸入者は貨物を保税地域から引取ることができるようになります。
ここまでが、輸入通関手続きの一連の流れになります。
まとめ
今回は、自社通関について、メリット・デメリットと輸入通関手続きの流れをご紹介しました。
ただ、現状自社通関が一般的ではないことを考慮すると、やはり通関手続きは通関業者に依頼する方が安全、安心かもしれません。
通関業は、通関業法によって財務大臣から許可を受けた者のみが独占して行える業であり、通関手続きが誰でも行える簡単なものとは決して言えないためです。
また、通関業者は通関手続きだけではなく、税関検査の立会い、保税運送承認申請、保税滅却承認申請なども依頼すれば対応してくれます。
通関業者は、困った時の力強い味方となってくれることでしょう。
自社通関のメリットとデメリットを十分に検証、検討した上で判断されることをおすすめします。