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貿易におけるアンダーバリューとは 概要や注意点をわかりやすく解説

 

アンダーバリューとは、税関へ輸入申告する際に実際の価格よりも安い価格で申請を行い、関税や消費税を安く抑えようとする不正取引です。

実は、輸入後調査の状況によると令和4事務年度では追徴税額が98億円にも上り、主な申告漏れにアンダーバリューが散見されています。

 

■輸入事後調査の状況

 

令和4事務年度
調査を行った輸入者 3312者
申告漏れ等のあった輸入者 2437者
申告漏れ等の割合 73.6%
追徴税額【納付不足税額】 93億4,333万円
追徴税額【加算税額】 4億7,400万円
追徴税額【合計】 98億1,733万円

 

■主な申告漏れ等の事例

  • 輸入者がインボイスを改ざん
  • 輸出者と通謀して虚偽のインボイスを作成

※いずれもアンダーバリューに該当します

 

参考

輸入事後調査の状況等 : 財務省 (mof.go.jp)

 

この記事では、アンダーバリューの罰則、防止体制、注意点などをまとめています。

この記事を最後までお読みいただくことで、アンダーバリューについて一貫して理解が得られるでしょう。

 

貿易におけるアンダーバリューとは

 

アンダーバリューとは、税関へ輸入申告する際に実際の価格よりも安い価格で申請を行い、関税や消費税を安く抑えようとする取引です。

 

■課税方法の計算式

  • 小口輸入の関税額=(商品代金+保険料+送料)×関税率
  • 輸入消費税=(商品代金+保険料+送料+関税)×消費税率
  • 個人輸入の関税額=課税対象価格×関税率

 

上記のように、課税方法の計算式は商品代金や課税対象価格に乗じて課税されます。

従って安い価格で申告することで関税や消費税が安くなるわけです。

 

例えば、売買契約上では商品単価を10ドルとして、輸出者のインボイスでは商品単価を5ドルと記載したとします。

このまま、輸入申告すると差額の5ドルには関税や消費税はかかりません。

このように、実際の価格よりも安い価格で輸入申告することで関税や消費税が総じて安くなります。

 

とは言え、アンダーバリューは法律違反であり不正取引に当たります。

輸出入申告はルールに沿って行いましょう。

 

アンダーバリューの罰則

 

アンダーバリューは以下に該当し、関税法に抵触します。

  • 関税ほ脱犯
  • 無許可輸出入・虚偽申告犯

 

関税ほ脱犯

 

関税法第110条には以下の記載があります。

  • 偽りその他不正の行為により関税を免れる行為
  • 関税を納付すべき貨物について偽り、その他不正行為により関税を納付しないで輸入した者

 

アンダーバリューはこれらに該当するため関税法に抵触します。

刑罰は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又は、併科されます。

また、未遂であっても同罪とみなされその場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は、併科されます。

 

罰則の詳しい内容については、以下のページで確認することができます。

関税法 | e-Gov法令検索

 

無許可輸出入・虚偽申告犯

 

関税法第111条には以下の記載があります。

  • 輸出入申告や検査において、偽った申告又は証明をする、偽った書類を提出した貨物を輸出・輸入する行為

アンダーバリューは上記に該当するため関税法に抵触します。

刑罰は、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又は、併科されます。

また、未遂であっても同罪とみなされその場合、3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又は、併科されます。

 

罰則の詳しい内容については、以下のページで確認することができます。

関税法 | e-Gov法令検索

 

アンダーバリューの防止体制

 

アンダーバリューは「NACCSのレンジアウト」、「税関による事後調査」などによって防止体制が敷かれています。

 

NACCSのレンジアウト

 

輸出入申告にはNACCSというシステムが導入されており、膨大な貿易データが蓄積されています。

このNACCSの蓄積データから商品などの「平均価格」を算出することができます。

NACCSのレンジアウトとは、NACCSの蓄積データと申告額を照らし合わせ、申告額が平均価格に対して逸脱していないか自動検出することを指します。

 

例えば、NACCSでは以下のようなデータが蓄積されています。

  • 輸出入申告データ
  • インボイス(商品価格、品名、数量、種類など)
  • パッキングリスト(梱包荷姿、梱包内容など)
  • t.c……

 

このようなNACCSのデータと申告額を照らし合わせた際に、

  • L=価格が低い
  • H=価格が高い

 

と表示され、申告額と平均価格の価格差が確認できます。

 

同一商品で明らかに価格が逸脱している場合レンジアウトとなり、税関による審査が行われます。

税関の調査では、インボイス価格に対するヒアリングが実施され問題なければ審査は終了します。

 

税関による事後調査

 

税関による事後調査とは、輸入後に正しい輸入申告であったか調査することです。

税関にはこの権限が与えられており、インボイスなどの貿易に関わる明細と入出金記録を照合して不正行為がないか調査します。

万が一事後調査によってアンダーバリュー取引が判明した場合は、正規の納税額の納付が必要です。

場合によっては、過少申告加算税、重加算税などが課せられる場合があります。

 

■貿易における過少申告加算税とは

税関の調査により納税申告が適正でないとした場合において、修正申告や更生が行われた場合に課されます。

修正申告等により、原則増加した税額の10%に相当する金額が課されます。

 

■貿易における重加算税とは

過少申告加算税が課される場合に、輸入者が意図的に隠蔽等により納税申告していた場合に課されます。

正しい納税額の基礎税額に35%に相当する金額が加算されます。

 

アンダーバリューの注意点

 

アンダーバリューの注意点は以下の通りです。

  • サンプル品の取り扱い
  • 通常品と無償代替品の同時輸入
  • 消費税還付などの免税

 

サンプル品の取り扱い

 

サンプル品というと広く一般的に無償や安価のイメージがあります。

ですが、サンプル品とは言え税関への申告は「本来商品価格(購入金額)」で申告しなければなりません。

ちなみに、サンプル品は輸出相手が良かれと思い低い金額で入れてくるパターンがあるため注意が必要です。

 

通常品と無償代替品の同時輸入

 

貿易においては、貨物の輸送距離が長いことから輸入時に商品欠損があることはそこまで珍しくありません。

欠損品対応として、無償代替品と通常品を合わせて輸入する場合において、無償代替品においても通常品と同じ価格で輸入申告する必要があります。

無償代替品を加算せずに申告するとアンダーバリューとなってしまう可能性があるため注意が必要です。

 

詳しくは以下のページで確認できます。

欠損のある輸入品の代替品を無償で提供される場合の関税等の適用:日本 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る – ジェトロ (jetro.go.jp)

 

消費税還付などの免税

 

輸出品は特定の要件を満たすことで消費税還付などの免税を受けることができます。

免税を受けるには、免税要件を満たしている証明としてインボイス等の書類が必要です。

ですが、アンダーバリュー取引となると実取引と書類にズレが生じて免税が受けられなくなる可能性があるため注意が必要です。

 

アンダーバリューの対策

 

アンダーバリューの対策として、輸入通関前にインボイスをよく確認しましょう。

輸入通関が完了してしまうと、修正申告の手数料はもちろん過少申告加算税が課されてしまいます。

 

例えば、輸入通関前に以下の点を抑えておきましょう。

  • 輸出者に間違いのない商品価格をインボイスへ記載してもらうようあらかじめお願いする
  • 輸入通関時に再度インボイスをチェックする

 

万が一間違いなどによりアンダーバリューとなってしまった場合は、輸入通関前であればインボイスの差し替えで対応できます。

輸入通関後の場合は、速やかに税関へ修正申告しましょう。

 

まとめ

 

この記事では、アンダーバリューについて解説しました。

アンダーバリューとは、関税や消費税を安く抑えようとする不正取引です。

アンダーバリューの対策として以下の点を抑えておきましょう。

  • あらかじめ輸出者に間違いのない商品価格をインボイスへ記載してもらうようにお願いする
  • 輸入通関時に再度インボイスをチェックする

 

万が一手違い等により、アンダーバリューとなってしまった場合は、速やかに税関へ修正申告しましょう。

 

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