今回は非関税措置(NTM)と非関税障壁(NTB)についてご紹介します。
1.非関税措置と非関税障壁とは
非関税措置とは、輸入国政府が、自国産業の保護等の政策的な目的をもって、関税以外の方法で輸出入を制限する措置のことです。
英語では、non-tarrif measuresとなり、NTMと略されます。
非関税障壁とは、非関税措置によってうまれる主に輸出国側企業にとっての障壁のことです。
英語では、non-tarrif barrierとなり、NTBと略されます。
2.なぜ非関税措置がとられるのか
現代では、世界経済のさらなる発展を目指して、あらゆる国でFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)が次々と締結されています。
日本も同様の動きをとっており、2017年にはTPP(環太平洋パートナーシップ)を、2018年には日欧EPAを締結しています。
そのほとんどの協定には、その国同士で行われる貿易が促進されるように、輸入の際にかかる関税の撤廃や関税率の引き下げが合意内容として含まれています。
関税が無くなったり、関税率が引き下げられたりすれば、企業はより安く輸入品を販売でき、輸入国消費者はより安く購入できるようになります。
ただ、このようなメリットがある一方で、デメリットもあります。
輸入国産業の衰退など、輸入国側が何らかの影響を受ける恐れがあることです。
もともと関税には、自国産業の保護がその機能の1つとして期待されてきました(保護関税機能)。
貿易を行う国が相互に輸入品に対して高い関税をかけあう、貿易摩擦問題、貿易戦争問題が昔から発生してきたことは、言うまでもありません。
国産品と輸入品が競合状態にあるとき、輸入品の方が国産品より有利であれば(安ければ)、国産品は売れなくなってしまい、その産業は衰退していきます。
輸入国政府が政策的に輸入品に高い関税をかけると、逆に国産品に有利な状態に傾かせることができるため、その産業の保護に繋がります。
ただ、FTAやEPAを締結した国は、その相手国からの輸入品に対しての関税に関する取り決めがありますので、無条件で高い関税をかけることができなくなりました。
そこで、自国産業を保護しようとする一部の国では、関税以外の方法をとる動きが見られています。
3.非関税措置の例
非関税措置の例として、下記のようなものがあげられます。
- 輸入手続きの複雑化
- 輸入制限(例えば、輸入量上限の設定)
- 輸入品に対する基準の設定
- 外国企業に対する法人税の増税
FTAやEPAによる関税面での恩恵があっても、非関税措置によって、販売にかかる時間やコストが増えれば、その国から撤退せざるを得ない輸出企業が出てきます。
折角FTAやEPAが新たに締結されたにも関わらず、十分に恩恵を得られない状態となることがあるのです。
4.非関税障壁の撤廃を目指す動き
より自由な貿易を目指すために、近年では、関税の撤廃や関税率の引き下げだけではなく、輸入手続きの迅速化や共通化など、関税以外の項目が交渉内容に含まれることが多くなっています。
例えば、2018年に発効されたTPP11では、輸出者や輸入者自らが原産地証明書を作成できる、自己申告制度が採用されました。
従来多くのEPAで採用されてきた第三者証明制度と比べて、よりスピーディな輸入手続きが期待されています。
今後このように、貿易相手国との交渉によって、少しずつではあるかもしれませんが、非関税障壁の撤廃に向けて進んでいくことが期待できるでしょう。
5.まとめ
今回は非関税措置と非関税障壁についてご紹介しました。
非関税措置は輸入国政府による政策的なものですので、もし非関税障壁に関して不満があったとしても、現状は定められた法令等に従うしかありません。
一方で、少しずつ非関税障壁の撤廃に向けた動きも見られています。
輸出入業を行われている方は、引き続き協定に関する動きを注視していきましょう。