リチウム電池は、パソコンや携帯電話、ゲーム機器など私たちが日常的に使っているものに使用されています。そのため、海外に送る場合には、あまり意識しないかもしれません。
リチウムイオン電池は取り扱いを誤ると輸送中に火災を引き起こす可能性があるので、全てのリチウム電池は危険物とみなされます。
航空・陸上・海上、いずれも安全な輸送のため厳格なルールがあります。
ここではリチウムイオン電池の国際輸送時の注意点・必要な書類・ラベル・発送手続きを解説します。
リチウムイオン電池は海外に送れるの?
リチウムイオン電池は、特定の条件を満たし、輸送機関が定めた規則や規定を守ることで国際輸送が可能です。
ただし、その特性上、適切な取り扱いを怠ると火災や爆発の危険性があります。
まずは、送るリチウム電池の種類や輸送条件を確認しましょう。
リチウム電池の種類
リチウム電池は以下の2種類に分類され、それぞれ用途や輸送時の取り扱いが異なります。
- リチウムイオン電池
スマートフォン、ノートパソコン、MP3プレーヤーなどに最も多く使用される再充電可能なバッテリーです。これらは高エネルギー密度を持つ一方で、不適切な輸送によるショートや発熱の危険性が指摘されています。 - リチウムメタル電池
電卓や玩具などの小型機器に使用される、再充電不可の電池です。アルカリ電池よりも寿命が長いものの、万が一のトラブル時には発火するリスクがあります。
海外輸送できるリチウムイオン電池を使用した電化製品
リチウムイオン電池を使用した電化製品を海外輸送する際には、以下の条件を満たしていることが求められます。
- 破損していないこと
損傷がある電池は、発火や爆発のリスクがあるため輸送できません。 - 欠陥品やリコール品に該当しないこと
製造上の欠陥がある電池は、厳重な規制対象となります。 - 容量制限を守ること(SP188要件をクリアした非危険品のリチウムイオン電池)
単電池(セル)=20W以下であり、リチウム含有量が1g以下であること
組電池(バッテリー)=100W以下であり、リチウム含有量が2g以下であること
総質量(容器の質量を含む)が 30kg 以下であること。
輸送が制限されるリチウム単体製品
以下の製品は、日本郵便の配送方法(EMS/AIR/SAL/船便)においてすべて配送不可です。
- モバイルバッテリーや交換用バッテリー
- 充電機能付きケースを備えたワイヤレスイヤホン
- 電子タバコ
これらは発火やショートのリスクが高いため、航空会社や物流会社も輸送を拒否するケースが多くあります。
パッキング方法のポイント
リチウム電池を国際輸送する際の梱包には、以下の点を厳守する必要があります。
- 耐衝撃性のある梱包材を使用する
- 輸送中の衝撃や振動から電池を守るため、緩衝材でしっかり固定する
- 端子のショート防止する
- 電池の端子部分を絶縁テープで覆い、ショートを防ぎます
- 適切なラベルの貼付をする
リチウム電池は危険物?
リチウム電池は、その特性上、危険物に分類されることが多く、輸送時には厳格な規制と手続きが求められます。
特に、発火や爆発のリスクを考慮し、安全対策が義務付けられています。
リチウムイオン電池の規制が厳しくなった背景
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以降、国際輸送に対する規制が大幅に強化されました。
それに加え、スマートフォン用バッテリーなどの発熱や発火事故が多発したことで、リチウム電池に関する法制度や規定が見直され、輸送条件がさらに厳格化されました。
航空機での輸送時に特に注意すべきは、危険物の「航空搭載禁止」に該当するかどうかです。
航空危険物には、火薬や高圧ガス、引火性液体に加え、ヘアスプレーや化粧品などの日用品、そしてリチウムイオン電池が含まれます。
リチウムイオン電池は危険物に分類されます
リチウムイオン電池は、その輸送中に発火やショートを引き起こす可能性があるため、危険物として扱われます。
特に以下の条件を満たさない場合、輸送が禁止されることがあります。
- 形態や容量に応じた基準を遵守すること
例えば、リチウムイオン電池が機器に組み込まれている場合、規定の条件を満たせば輸送が認められます。これに対し、単体や破損した電池は通常、輸送が禁止されています。 - UN38.3試験に合格すること
国際輸送では、国連が定めた試験規定を満たすことが必須であるため、輸送中に発生し得る落下、衝撃、圧力変化などに対する安全性が保証されます。
※ここでの危険物とは、国際連合危険物輸送勧告(United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goods) の9つの分類と区分に1つ以上該当する物質を指します。
国連勧告輸送試験UN38.3とは
UN38.3は、リチウムイオン電池を国際輸送する際に必要な安全性認証試験です。
航空、海上、鉄道輸送すべてにおいて適用されるこの試験では、以下の8種類のテスト(T1~T8)に合格する必要があります。
- T1~T5: 落下や衝撃、振動、圧力変化などを同一電池で実施
- T7: 組電池に適用されるテスト
- T8: 単電池に適用されるテスト
リチウムイオン電池の国連番号 UN3480(単体)、UN3481(機器組込)
リチウム金属電池の国連番号 UN3090(単体)、UN3091(機器組込)
これらの番号は、輸送プロセス全体を通じて使用され、必要書類にも明記が求められます。
安全にリチウムイオン電池を国際輸送するポイント
リチウムイオン電池を安全に国際輸送するためには、厳格な規制や基準を守る必要があります。
特に航空輸送では、危険物として特別な取り扱いが求められます。
以下に、輸送時の注意点と手続きを詳しく解説します。
バッテリー航空輸送安全ラベル規格
航空輸送では、規定に基づいたラベルの貼付が必須です。
このラベルが適切に添付されていれば、条件を満たしたリチウムイオン電池を機内に持ち込むことが可能になります。
- 持ち込み可能な個数
- 合計20個まで
- 機器に装着された1個+スペア2個まで
航空機の場合、原則預け入れは出来ません。
- ラベル要件
- 国連試験基準(UN Manual of Test and Criteria, Part III, sub-section 38.3)に合格した証明が必要です。
- ワット時定格値(Wh)が100Wh以下、または100Whを超えて160Wh以下であること。
- ワット時定格値は電池ケースの外側に明記されている必要があります。
※バッテリーが160whを超えるものは機内持ち込みは不可です。
リチウムイオン電池の航空輸送について
ICAO(国際民間航空機関)技術指針2023-2024版にもとづきIATA(世界の航空運輸関連企業団体)IATA DGR危険物規則書が改訂され、同63版が2023年1月1日より適用となりました。
リチウムイオン電池の航空輸送には、IATA危険物規則書に従って行う必要があります。
- 機内持ち込み手荷物:機内でご自身の席まで持ち込む手荷物
- 機内預け入れ手荷物:カウンターでお預けになるスーツケース等の手荷物
上記2種類に分類されます。機内持ち込み可能な手荷物(サイズ制限および総重量)の詳細などは、各航空会社によって規定が異なります。また、上記国際規制を満たしていても、輸送できない場合もありますので、あらかじめ渡航国、利用航空会社に確認をおすすめします。
リチウムイオンバッテリーは持ち込み手荷物としてのみ輸送可能で、預け入れでの輸送は出来ません。
リチウムイオン電池の海外輸送手続き
IATA DGR(航空危険物規則書)の危険物規則にしたがって梱包されている貨物にラベルを貼付し、申告済を証明する書類作成して添付します。
危険物申告書は危険物取扱資格保持者が作成する必要があります。
署名は荷送責任者または指定代理人が行う必要があります。
国によっては手書きラベルでは先方に届かなかったり、そもそも輸送自体を受け付けてもらえなかったりするので注意が必要です。ラベルをダウンロードし印刷するか、データを受付時に提示し送り状を受け取り貼付してください。
また、手続きが正しく行われなかった場合には、無申告危険物の輸送として法律で罰せられることがあります。危険物の航空運送には適切な申告手続きや梱包が必要です。
リチウムイオン電池の国際輸送梱包の仕方
では、リチウムイオン電池はどう梱包すればよいのでしょうか?
個別梱包及びオーバーラップに個別梱包箱に入れる外箱に指定のラベルを貼り付けます。
航空・海上・陸上・リチウムの状態(単独・同梱・内装)によって貼り付けるラベルの種類が異なるので注意が必要です。
リチウムイオン電池を国際輸送するときの注意点時必ず確認しよう
国際航空運送協会(IATA)の規則が一般的な基準となり、荷物に適用されます。
さらに、送り先国の輸出入制限や国際規制が厳格に適用される場合があります。
リチウム電池(リチウムイオン電池、リチウム金属電池)輸送について、2023年1月1日から適用されたIATA規則に基づき、以下の変更点が導入されました。
- ボタン電池のテスト要件の削除
一部のボタン電池について、従来求められていたテスト要件が廃止されました。 - A154に該当する輸送禁止
特定条件下での輸送が禁止されるケースが新たに追加されました。 - リチウム電池マークラベルの電話番号表示が不要となる
輸送ラベル上の電話番号記載義務が廃止され、表示が簡略化されました。 - セクションⅡオーバーパックの固定要件
オーバーパック(複数の梱包を一つの外箱にまとめる方法)について、輸送中の固定基準が厳格化されました。 - PI968 IB および PI965 IB 3mの積み重ね追加試験
これらの梱包仕様に対し、新たな積み重ね試験が義務付けられました。
輸送前に準備すべきこと
実際にリチウムイオン電池を国際輸送する場合、フォワーダー(自らは輸送手段を持たず貸物輸送を行う事業者)からSDS(安全データシート)の提示を求められます。SDSの内容から受託の可否を判断します。必要な書類はあらかじめ取り寄せ用意して下さい。
- SDS(安全データシート)の準備
フォワーダー(輸送代行業者)から提示を求められる場合があります。このデータシートには、電池の特性や安全情報が記載されており、輸送可否の判断に使用されます。輸送前に必要書類を取り寄せ、正確に記載しておきましょう。 - ラベルとマーキングの適用
IATA規則に準拠した輸送ラベルを貼付し、内容物を明確に示すマーキングを行います。不適切なラベルは輸送拒否の原因となるため、必ず正規のものを使用してください。 - フォワーダーへの情報提供
フォワーダーは、輸送条件を確認するためにさまざまな質問を行います。バッテリーの種類、容量、状態(単体・機器組み込み)、輸送方法など、詳細な情報を正確に提供する必要があります。
リチウムイオン電池の国際輸送は通常の貨物よりも厳しいのである程度の経験が必要です。
輸送規則に関する最新情報を確認することで、トラブルを未然に防ぎ、安全で効率的な輸送が可能になります。
リチウムイオン電池の国際輸送は、多くの注意点と手続きが伴いますが、規則を遵守することでリスクを最小限に抑えられます。
安全で適切なリチウムイオン電池の国際輸送の参考になれば幸いです。