輸入(承認・割当)申請書は、日本の産業の保護のために必要な書類です。
海外から安い製品が多く日本に流れ込むのを防ぎ、国産製品の価値を高めるために欠かせません。
本記事では、輸入割当の対象となる品目や、輸入(承認・割当)申請書を記入するときの注意点などをまとめました。
目次
輸入(承認・割当)申請書とは?
輸入(承認・割当)申請書とは、輸入制限されている品目を輸入する場合に経済産業省に提出しなければならない書類です。提出することで、輸入制限されている品目を割り当ててもらうことができます。
この輸入制限は日本国内の産業保護を目的として設けられ、制限対象品目の輸入可能数量や金額は、国内需要などに基づいて品目ごとに年1回決定されます。
輸入(承認・割当)申請書の特徴
輸入量の制限がかかっている品目を輸入したいときに必要な「輸入(承認・割当)申請書」。この書類に代表される特徴をお伝えします。
郵送もしくは電子申請のみ
輸入(承認・割当)申請の手続きは、すべて経済産業省の農水産室が申請窓口になっています。現在窓口での直接対応は行っておらず、郵送もしくは電子での申請が必要です。郵送にかかる時間の費用や時間が短縮できるため、経済産業省のHPでは電子申請がおすすめされています。
割当発表は年1回
輸入割当には年に1度「輸入発表」という、品目ごとの申請受付期間や資格、割当基準が公表されます。申請受付期間を過ぎてしまうとその年に割当申請ができなくなるので注意してください。
輸入割当制度とは?
輸入割当制度とは、輸入制限されている品目を輸出する場合に、貨物の数量や金額を輸入者に割当をする制度です。
外国為替及び外国貿易法をもとに輸入割当制度が設けられていて、経済産業省の農水産室が審査を行います。
輸入割当制度は通称IQ(Import Quota)と呼ばれます。
輸入割当の対象品目
輸入割当制度の対象品目は、水産物とオゾン層破壊物質等の2つがあります。
輸入割当対象の水産物
輸入割当制度の対象となる水産物には、18品目が該当します。
これらの品目は、生鮮や冷凍、塩水づけなど製品状態に関わらず割当対象になるので注意してください。
- あじ
- いわし
- さば
- すけそうだら
- たら
- たらの卵
- いか
- 干しするめ
- にしん
- こんぶ
- こんぶ調整品
- ほたて
- 干しのり
- 無糖の味付けのり
- 干しのり
- のりの調整品
- ばらの干しのあおのり、ひとえぐさ
- ぶり、さんま、貝柱と煮干し
- 韓国を原産地とするたら、ぶり、さんま、貝柱、煮干し、あじ、さば、いわし、ほたて
これらの品目ごとに、現在の輸入割り当て枠の残数を経済産業省のHPで確認できます。
輸入割当対象のオゾン層破壊物質等
モントリオール議定書附属書FのグループⅠとグループⅡに記載のある特定物質を輸入する場合には、輸入割当を受ける必要があります。
- テトラフルオロエタン(HFC-134)
- テトラフルオロエタン(HFC-134a)
- トリフルオロエタン(HFC-143)
- ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)
- ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)
- ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)
- ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)
- ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)
- ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)
- ペンタフルオロプロパン(HFC-245ca)
- デカフルオロペンタン(HFC-43-10mee)
- ジフルオロメタン(HFC-32)
- ペンタフルオロエタン(HFC-125)
- トリフルオロエタン(HFC-143a)
- フルオロメタン(HFC-41)
- ジフルオロエタン(HFC-152)
- ジフルオロエタン(HFC-152a)
- トリフルオロメタン(HFC-23)
これらの物質にはオゾン層破壊効果があるとして、世界で地球温暖化対策を目的に排出抑制に取り組んでいます。具体的には、エアコンや冷蔵庫、エアゾールなどで使われていて、日本では冷媒用途として多く使われています。
輸入(承認・割当)申請書の記載内容
輸入(承認・割当)申請書の記載内容は、「Ⅰ申請の明細」「Ⅱ輸入割当」「Ⅲ輸入承認」の3つに分けられます。
そのうち申請者の記入が必要なのは、「Ⅰ申請の明細」の欄のみです。「Ⅰ申請の明細」の中でも、「3 型及び銘柄」「総額」の2つの箇所は何も記入しないようにしてください。
申請者の記入が必要な記載内容は以下の通りです。
- 申請者氏名(個人名もしくは法人代表者名)
- 申請者住所
- 申請者電話番号
- 資格(法人の場合は、役職名)
- 申請年月日
- 関税率表の番号
- 商品名
- 原産国地
- 船積地域の国名(船積港)
- 数量と単位
これらの欄を申請者が記入して、両面印刷をしてください。表面の下部が切れて、裏面に印刷されないように注意しましょう。
輸入(承認・割当)申請書の注意点
輸入(承認・割当)申請書の注意点を2つ紹介します。
初めての申請は先着順
初めて輸入割当を申請する場合には、経済産業省の「先着順割当て」への申請が必要です。受付を開始してから、全申請者の品目別申請数量が上限に達した時点で締切になります。この申請には、品目ごとに年1回だけ受付期間が設けられているため、受付開始日を逃さないように注意しましょう。
品目の種類によって割当対象か否かが異なる
同じ品目であっても、該当品目の製品形態によって輸入割当申請が必要かどうかが異なります。「たら」を例に挙げると、たらのすり身やフィレは割当対象になるものの、缶詰や白子は非対象になります。
輸入割当制度と関税割当制度の違い
輸入数量や金額に同じように制限をかける輸入割当制度と関税割当制度ですが、違いを2つお伝えします。
違い①上限以上を輸入できるか否か
輸入割当制度と関税割当制度の違いは、「割り当てられた輸入数量・金額制限を超えて、当該貨物を輸入できるかできないか」です。
輸入割当制度は、割り当てられた貨物の上限以上の輸入はできません。一方で、関税割当制度は割り当てられた数量・金額上限を超えた場合でも輸入は可能です。その代わりに、高税率の関税が課されることになります。
違い②国内産業保護の仕方
輸入割当制度と関税割当制度は、ともに日本国内の産業保護が目的です。しかし、それぞれ国内産業保護の仕方に違いがあります。
輸入割当制度は、海外からの輸入量を制限することで国産製品の消費を促します。一方で関税割当制度は、上限を超えた貨物には高い関税をかけることで、国産製品よりも販売価格が高めに設定されます。
結果的に品質や価格を比較すると、国産製品の価値が高くなることを意図しているのです。
まとめ 輸入制限がかかっている貨物を割り当ててもらう「輸入(承認・割当)申請書」
国産製品の優位性を高めるために導入されている、輸入割当制度の申請に必要な「輸入(承認・割当)申請書」。
輸入する品目やその製品形態によって、申請が必要か否かが異なってきます。
経済産業省のHPに、どの商品が該当するのかなど誰にでもわかりやすく記載があるので、参考にしてみてください。
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