今回は、自由貿易について解説します。
自由貿易とその対義語である保護貿易は、学校の教科書にも載っている定番の用語です。
多くの方がすでにご存知かもしれませんが、用語確認とともに、メリットとデメリット、自由貿易化の流れを確認していきましょう。
当記事では、次のような内容に沿ってお伝えします。
目次
自由貿易とは
自由貿易とは、国家によって輸入関税関税が課されたり、輸入に制限をかけたりすることなく、自由に行える貿易のことです。
国家が積極的に貿易を推進し、利益の獲得を目指します。
自由貿易の対義語は、保護貿易です。
自由貿易と保護貿易については、主に経済学的に昔から論争が続いてきたテーマです。
歴史的には保護貿易長く推進する国が多かった一方で、近年では自由貿易を目指す国が多くなっています。
保護貿易とは
保護貿易とは、自国産業を保護するために国家によって制限がかけられている貿易のことです。
自由貿易は輸入国内産業の衰退に繋がる可能性があり、国家が高い関税率を設定したり、非関税措置をとったりして自国産業を保護しようとするものです。
貿易によって国は利益を獲得でき、人々の暮らしは豊かになりますが、いつでも誰でも利益を享受できるということではなく、悪影響を受ける人々が出てきてしまう可能性があります。
貿易の歴史を見ると、長い間多くの国が貿易の保護的政策をとっていましたが、第一次世界大戦や第二次世界大戦後の後、少しずつ保護貿易を解消しようとする動きが出てきました。
自由貿易のメリットとデメリット
自由貿易にはメリットとデメリットがあります。
自由貿易のメリット
自由貿易のメリットとしては、下記のような例が挙げられます。
①輸出する商品の輸出国側産業が成長する
外国に商品を輸出し消費者を増やすことができれば、生産規模を拡大しようとする等の動きに繋がり、輸出産業が成長することになります。
②輸入国消費者が商品を安く購入できるようになる
関税が無くなったり、関税率が引き下げられたりすれば、企業はより安く輸入品を販売でき、輸入国消費者はより安く購入できるようになります。
自由貿易のデメリット
自由貿易のデメリットとしては、下記のような例が挙げられます。
①輸入国産業が衰退する恐れがある
輸入関税には、自国産業の保護がその機能の1つとしてあります。
自由貿易のためにその関税が国家によってかけられないとなれば、輸入国産業の衰退してしまうかもしれません。
国産品と輸入品が競合状態にあるとき、輸入品の方が国産品より安ければ、国産品は売れなくなってしまいます。
②失業者増の恐れがある
①のとおり輸入国産業が衰退した場合、企業は雇用を維持できなくなり、輸入国産業に関わる従業員が失業してしまう可能性があります。
自由貿易化の流れ
近年では、自由貿易を目指す国が多くなっています。
我が国日本もその国の1つです。
GATTとWTO
GATTとは、関税及び貿易に関する一般協定のことで、英語のGeneral Agreement on Tariffs and Tradeの略です。
関税などの貿易の際に障壁となるものをなくし、自由な貿易体制の実現を目指した協定です。
1947年にスイスのジュネーブで署名され、署名国組織はWTOの前身となりました。
日本は1955年にGATTに加盟しました。
WTOとは、世界貿易機関のことで、英語のWorld Trade Organizationの略です。
1995年に発足した国際機関で、GATTは貿易自由化という目的とともにWTOに引き継がれました。
GATTは物品のみを対象とした協定でしたが、WTOは物品だけではなくサービス等も対象に含めた国際機関です。
GATTとWTOには協定と組織という違いがあり、WTOという貿易に関する組織化よって自由貿易を目指した形となりました。
現在、WTOには164カ国が加盟しています。
FTAやEPAの新規締結
直近10年間ほどにおいては、2国間で自由貿易協定(FTA:略Free Trade Agreement)や経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)が新たに締結されるケースが多くなっています。
WTOに多くの国が加盟する中で、各国の利害が複雑に絡み、進展が難しくなっています。
2国間での協定締結であれば、WTOと比較してスピーディに交渉を進めることができます。
日本の動き
1955年にGATTに加盟するなど、日本も自由貿易を推進してきました。
現在のWTOなってから今までも同様の動きとなっています。
2国間では、2015年には日オーストラリア経済連携協定が、2021年には日英経済連携協定が発効されています。
また、地域的な経済連携協定についても締結または交渉が進んでいます。
参加予定であったアメリカが離脱してしまいましたが、2017年にはTPPを締結しました。
2020年には、ASEAN10カ国と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドが参加する地域的な包括的経済連携協定(RCEP)に署名しました。
RCEPは東アジアを中心とする地域的な協定ですが、日本にとっては初めてとなる韓国がこの協定参加国に含まれていることもあって、非常に注目されている協定となっています。
まとめ
今回は自由貿易についてご紹介しました。
自由貿易にはメリットとデメリットがあり、自由貿易と保護貿易のどちらが良いのかという論争は昔からずっと続いてきました。
これからも経済学者を中心に論争は続いていくことでしょう。
我が国日本のスタンスとしては、これまで自由貿易を推進してきており、直近ではFTAやEPAを新たに相次いで締結しています。
貿易取引を行う方であれば、是非ともこれらの協定を有効に活用したいところです。
経済連携協定について気になる点があれば、起用物流会社に聞いてみても良いかもしれません。