日本とシンガポールは「シンガポール経済連携協定(JSEPA)」を結んでおり、友好な貿易関係にあります。
経済連携協定の締結は関税の撤廃・削減、などの恩恵を受けることができます。
この記事ではシンガポールの特徴や輸出するときのポイント、注意点をまとめています。
この記事を最後までお読みいただくことで、シンガポールに輸出するときに役立つ知識を深めることができます。
目次
シンガポールの特徴
シンガポールへ輸出をする時はまず、どのような国であるのか理解を深めておきましょう。
シンガポールの大きさは日本の奄美大島と同じくらいで、面積にして約720平方キロメートルです。
人口は約564万人(2022年)ほどであり、言語は英語、中国語、マレー語、タミール語が公用語とされています。
シンガポールの主要産業は、製造業(エレクトロニクス、化学関連、など)ビジネスサービス、運輸、通信業、金融サービスなどです。
また、地の利を生かした中継貿易が特徴的です。
シンガポールの経済状況については以下の通りです。
■経済概況
- 2001年 建国以来最悪の成長率(-1.2%)
- 2002年~2010年は若干マイナス成長の年度もあるが基本V字回復で成長が続く
- 2010年~2020年では世界経済の停滞などの要因があり伸び悩み
- 2022年は、世界的なインフレで製造業などが伸び悩んではいたが6%の成長としている
上記のように、2001年以降は成長基調の経済状況が続いています。
また、以下のデータをご覧ください。
2021年 | 2022年 | |
各目GDP
(単位:百万シンガポールドル) |
569,364 | 643,546 |
1人当たり各目GDP
(単位:シンガポールドル) |
104,402 | 114,165 |
実質GDP成長率(単位:%) | 8.9 | 3.6 |
消費者物価上昇率(単位:%) | 2.3 | 6.1 |
失業率(単位:%) | 2.7 | 2.1 |
参考:シンガポール基礎データ|外務省 (mofa.go.jp)
実質GDP成長率は下落気味ですが、それ以外は良好な経済状況と見て取れます。
このようなデータから、シンガポールはビジネスチャンスの期待できる国であると言えます。
具体的な貿易状況については、輸出品目と輸入品目に分けて以下で解説します。
シンガポールの輸出品目
シンガポールの輸出状況は、2021年に約614(十億シンガポールドル)、2022年では約710(十億シンガポールドル)と増加傾向にあります。
主要輸出品目は、機械・輸送機器、鉱物性燃料、化学製品などです。
■輸出品目構成比
- 機械機器:56.9%
- その他原料、およびその製品:20.5%
- 化学品:12.3%
輸出品目構成比については以下のページで詳しく確認することができます。
シンガポールの貿易と投資 | シンガポール – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ (jetro.go.jp)
シンガポールの輸入品目
シンガポールの輸入状況は2021年に約545(十億シンガポールドル)、2022年では約655(十億シンガポールドル)と輸出同様に増加傾向です。
主要輸入品目は、機械・輸送機器、鉱物性燃料、原料別製品などです。
■輸入品目構成比
- 機械機器 52.8%
- 鉱物性燃料 22.1%
- 石油・同製品 20.3%
輸入品目構成比については以下のページで詳しく確認することができます。
シンガポールの貿易と投資 | シンガポール – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ (jetro.go.jp)
日本とシンガポールの貿易ポイント
日本とシンガポールは友好な貿易関係が築かれています。
なぜなら、日本とシンガポールは「シンガポール経済連携協定(JSEPA)」を結んでいるからです。
■EPAとは
経済連携協定のことで、関税の撤廃・削減、知的財産権の保護などを特定の国や地域間で取り決め、親密な関係を強化することを指します。
たとえば、関税がなくなることで価格競争力が有利になり貿易相手国としてのメリットがあります。
対日貿易の状況は以下の通りです。
- 輸出:2021年に974(10億円)、2022年に1292(10億円)
- 輸入:2021年に2201(10億円)、2022年に2934(10億円)
シンガポールは日本からの輸入が多い傾向にあります。
つまり、日本側としては輸出が多いことになり、EPAのメリットを活用していると見て取れます。
その他にも、日本とシンガポールの貿易ポイントとして優遇税制が受けられる輸出加工区があります。
輸出加工区
輸出加工区は、工場を設置する海外企業に対して「製品の輸出」を条件にした優遇税制地区です。
対象地区では税制や事務手続き、工場用地取得などの優遇税制を受けることができます。
シンガポールの輸出加工区は、シンガポールの南西部ジュロン工業団地に立地しており、アジアNIEsの一つにも選ばれています。
■アジアNIEsとは
アジアNIEsは「Newly Industrializing Economies」の略称です。
日本語で新興工業経済地域のことを指し、アジアの工業部門において特に経済成長の著しい国・地域を意味します。
シンガポールへ輸出する際は、優遇税制が受けられる輸出加工区も検討の一つとしておくと良いでしょう。
シンガポールへ輸出するには
シンガポールへ輸出するには関係書類を用意し、各種手続きが必要です。
ここでは、「輸出入手続き」と「必要書類」に分けて解説します。
輸出入手続き
シンガポールとの輸出入に必要な手続きは以下の通りです。
■輸出入に必要な手続き
- ユーザー登録
- 輸出入申告の免除規定
- 輸入申告
- 輸出申告
- 積み替え(トランシップ)申告
- 諸税
まず、ユーザー登録を行い、その後各種手続きを行うことで製品の輸出入が可能になります。
また、シンガポールは「ネットワークド・トレード・プラットフォーム(NTP)」と呼ばれるシステムが導入されていますので、覚えておきましょう。
NTPでは、申告・許可通知・関税・諸税・手数料などの支払いに至るまでの手続きが自動的に一括処理されます。
必要書類
シンガポールへ輸出する際の必要書類は以下の通りです。
- インボイス
- パッキングリスト
- 船積依頼書
- 委任状
インボイスは発送先情報・製品数量・金額・取引条件など輸出に当たって必要な詳細情報が記載されています。
パッキングリストは「荷姿・重量」など貨物に特化した書類です。
船積依頼書は船会社・航空会社がB/L(船荷証券)やAWB(航空運送状)を作成するために必要となります。
委任状は、通関業者と初取引となる際に必要です。
円滑な取引を行うためにも、輸出書類は記載漏れなどが無いように作成しましょう。
シンガポールへ輸出するときの注意点
シンガポールに輸出するときは以下の点に注意しましょう。
- 輸入規制品目
- 関税
以下でそれぞれ解説します。
輸入品目規制を確認しておく
輸入品目規制は言い換えると「日本からシンガポールへ輸出できない品目」になります。
輸入品目規制はシンガポール税関、内務省シンガポール警察、国立公園庁などそれぞれの所轄省庁によって定められています。
輸出違反とならないように、あらかじめ確認しておきましょう。
■輸入品目規制
- チューインガム
- (歯科治療・薬用チューインガムは除く)
- ピストル型のライター
- リボルバー方のライター
- 爆竹
- サイの角
- 絶滅危惧種の野生動物とその製品
- スキャニングレシーバー
- 軍用通信機器
- 噛みたばこ
- たばこ類似品(電子たばこ、加熱式たばこ)
- 薬物乱用規制の第4付表に記載されている規制薬物
輸入品目規制については以下のページで詳しく確認できます。
貿易管理制度 | シンガポール – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ (jetro.go.jp)
関税を理解しておく
関税は各国によって違いがありますので、あらかじめ確認しておきましょう。
シンガポールの関税には一般関税(輸入税)、物品税、特恵関税があります。
■一般関税(輸入税)
課税対象品目は、HS番号(8ケタベース)で4品目のみ
■物品税
物品税とは、内国税のことで、輸入品にも課税されます。
上記の輸入税に物品税を含めた「シンガポールの輸入課税品目」は大きく分けて以下の4種類です。
- アルコール製品
- たばこ類
- 自動車
- 石油製品およびバイオディーゼル混合燃料
■特恵関税
特恵関税とは、FTA(自由貿易協定)やGSP(一般特恵関税制度)などをシンガポールと締結した場合の貿易(輸出入)に適用されます。
ただし、自由貿易協定で定める原産地規則を達成していることが条件になるため注意が必要です。
特恵関税の適用対象は以下の輸入課税品目の4品目です。
- 黒ビール
- ビール・エール
- 薬用サムス
- その他サムス
関税制度は以下のページで詳しく確認できます。
関税制度 | シンガポール – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ (jetro.go.jp)
まとめ
この記事では、シンガポールへ輸出するときのポイント、注意点について解説しました。
シンガポールは地の利を生かした中継貿易が特徴的です。
また、輸出、輸入共に増加傾向であり貿易が盛んな国であると言えます。
シンガポールには輸出加工区のように優遇税制を受けられる地区がありビジネスチャンスが期待できます。
輸出の際は、「輸入品目規制」がある為あらかじめ確認しておきましょう。