並行輸出とは「真正品」を正規ルート以外で商品を輸出することを指します。
並行輸出は知的財産権などの兼ね合いがあり少々分かりにくいかも知れません。
でも、問題ありません。
この記事では、並行輸出の概要からあらかじめ知っておくべきポイントをまとめています。
この記事を最後までお読みいただくことで、並行輸出の貿易形態から、どのような点に気を付けるべきか知見を増やすことができるでしょう。
目次
並行輸出とは
並行輸出とは、「真正品」を正規ルート以外で輸出することです。
※真正品とは
真正品とは、商標権者が法律に適した方法で製造販売された製品のこと
例えば、正規ルートでは、
- 商標権をもつメーカー
- 海外の輸入者(総代理店契約)
上記の二者において商品の輸出販売をすることが一般的です。
※総代理店契約とは
独占的・排他的な代理店・販売移転契約などの締結
対して並行輸出ルートでは、メーカーと海外の輸入者の間に正規代理店以外の第三者が介入する形になります。
- 商標権をもつメーカー
- 正規代理店以外の第三者
- 海外の輸入者
例えば、日本のメーカー(正規販売店)A社から第三者が商品を仕入れ、海外へ輸出することは並行輸出となります。
並行輸出に違法性はあるのか
並行輸出において「真正品」を輸出する場合に違法性はありません。
ですが、原則として商標権者の承諾がない場合において「商標登録した商品を輸出販売すること」は商標権の侵害に当たり、違法になる可能性があります。
なぜなら、関税法第69条規定において商標権を侵害している貨物の輸出はできないとされているからです。
※商標権とは、商品やサービスを独占できる権利のことです
ただし、一定の要件を満たした場合においては商標権の侵害にはなりません。
■商標権の侵害にあたらない要件例
- 商標権者から使用承諾を受けた真正品である
- 輸出側、輸入側の商標権者が同一である
- もしくは経済的に同一な関係にあり、商標登録表示が同一
詳しくは以下のページで確認することができます。
ブランド商品の並行輸入における留意点:日本 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る – ジェトロ
ちなみに、商標権以外にも以下のような権利についても守るべき必要があります。
- 特許権
- 実用新案権
- 意匠権
- 著作権
- 著作隣接権もしくは育成者権
これらの権利を侵害する物品は輸出してはならない貨物とされていますので注意しておきましょう。
コピー商品の輸出は違法
原則としてコピー商品の並行輸出は違法です。
なぜなら、コピー商品は知的財産権の侵害となるからです。
例えば、日本への輸出は(日本側からすると輸入)関税法第69条によりコピー商品は知的財産権を侵害するため輸入禁止とされています。
ですから、輸入国が知的財産権関連法の国際条約を結んでいる場合、コピー商品の輸出は知的財産権侵害に当たり、
10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し又はこれを併科されます。
並行輸出の際に知っておくべきこと
並行輸出をする際は以下の点を抑えておきましょう。
- EPAの利用
- 知的財産権
- メーカーによる並行輸出対策
EPAの利用
並行輸出においてはEPAの利用が難しいことを知っておきましょう。
なぜなら、正規ルートの輸出販売ではないことから「原産地証明書の発行が難しい」ことが想定されるからです。
※EPAとは
- 関税を削減する仕組みのこと
- 輸入国が関税を削減することができる
- EPAには特定原産地証明書が必要
例えば、EPAでは原産地証明書を輸出国側で発行し、輸入国側の税関に書類を提出することで関税が削減されます。この原産地証明書は原則メーカーから取得します。
並行輸出では「正規販売ルート」ではなく「第三者による販売ルート」で商品が輸出されます。
メーカーが正規販売ルートではないことを懸念し、原産地証明書の対応が難しくなることがあるかもしれません。
このようなことから、並行輸出におけるEPAの利用は一度メーカーに問い合わせてみる必要があるでしょう。
知的財産権
並行輸出の際は、知的財産権について知っておきましょう。
なぜなら、万が一輸出した商品が知的財産権を侵害してしまった場合、損害賠償責任や刑事責任を負う可能性があるからです。
知的財産権は人々が作り出したアイデアや創作物を守る権利のことです。
例えば以下のような権利がそれに当たります。
- 特許権
- 意匠権
- 商標権
- e.t.c…
特許権では発明を、意匠権では物品の形状や模様などを保護します。
商標権においては消費者等に対して商品の出どころなどを知らせる商標が保護されます。
「真正品」の並行輸出に違法性がないとは言え、これらの権利を侵害してしまう可能性がないかの確認は必要です。
例えば、並行輸出した先で知的財産権の法的要件を満たせなかった場合、商品メーカーのイメージダウンに繋がってしまうことが考えられます。
ですから、並行輸出をする場合は知的財産権について知見を増やしておく必要があるでしょう。
メーカーによる並行輸出対策
もちろん、メーカーも並行輸出の対策を行っていないわけではありません。
ここでは、メーカーによる並行輸出対策について知っておきましょう。
例えば、卸し先企業との契約書の中に仕入れた商品を勝手に輸出しないなどの「並行輸出に関する文言を記載する」ケースがあるそうです。
ただし、日本には独占禁止法があるため必要以上に独占性を記載できません。
※独占禁止法とは?
公正かつ自由な競争を促進し、消費者の利益を保護するために、企業が守らなければならないルールを定めた法律のこと
つまり、メーカーは並行輸出対策を講じていますが、輸出禁止の強制まではできていない実情だと考えられます。
また、商品へロット番号を記載することで、「どこへ商品を卸したのか」後追いできる対策を講じています。
並行輸出と並行輸入の違い
並行輸出と並行輸入の違いは何でしょうか?
日本と海外の輸出入において確認してみましょう。
■並行輸出とは
- 日本国内で仕入れた真正品を正規ルート以外で海外へ「輸出」する
■並行輸入とは
- 海外で仕入れた真正品を正規ルート以外で日本国内へ「輸入」する
- (正規販売店や免税店で購入した商品を日本で販売するなど)
このように、並行輸出は真正品を正規ルート以外で「輸出」することです。
対して、並行輸入は真正品を正規ルート以外で「輸入」することを指します。
つまり、並行輸出と並行輸入は商品の流れによる呼称の違いだと言えるでしょう。
並行輸出の注意点
並行輸出の注意点として、輸出先の法令に気を付けましょう。
なぜなら、場合によって輸出先で法令違反となり商品が差し止められてしまう可能性があるからです。
例えば、日本で購入した食品商品を並行輸出し、輸入先の国で法的基準を満たせない場合商品は差し止められてしまうでしょう。
特に、eBayなどのオンラインマーケットプレイス上では、個人でも簡単に輸出することができてしまうことから、より一層の注意が必要と考えられます。
このようなことから、並行輸出では法令違反とならないように、輸出先の法令を事前に確認することが大切だと言えるでしょう。
まとめ
この記事では、並行輸出の概要や知っておくべきことについて解説しました。
並行輸出は「真正品」を正規ルート以外で輸出することです。
「真正品」を並行輸出することに違法性はありませんが、コピー商品を並行輸出することは違法とされています。
また、「真正品」と言えども知的財産権を侵害しないような配慮が必要です。
並行輸出では輸出先の法令をよく確認した上で商品を輸出することが大切です。