今回は、海外へ商品を発送する時に必要な書類「インボイス(Invoice)」についてご説明します。
インボイスの種類、役割、作成時のポイントを知ることで、海外への商品発送がよりスムーズに行えるようになります。
目次
インボイスとは
インボイスとは、海外へ商品を送る時に必要な書類の1つです。
国際輸送でフォワーダーに輸送と頼むとき、EMSで発送する時、またDHLやFedEXやUPSなどクーリエで発送する時、どんな時でも必ず必要になります。
インボイスには、以下のような情報を記載します。
- 誰が
- 誰に
- どんな貿易条件で
- どこから
- どこに
- いくらの(単価)
- 何(商品)を
- いくつ(個数)
- 合計
インボイスの役割
続いて、インボイスが必要になる理由についてご説明します。
インボイスには大きく分けて3つの役割があります。
- 輸出する商品名、材質、数量を記した「明細書」
- 輸出者が輸入者に対して求める商品代金の「請求書」
- 輸出者が輸入者に対して送る商品の「納品書」
そのほかにも、インボイス上には誰から誰に送られているか商品の流れが分かるので、国際輸送の運送書類としての役割もあります。
インボイスが必要な理由
国内の運送では必要ないのに、なぜ海外に商品を送る時にはインボイスが必要なのでしょうか。
その理由は、税関での貨物確認や審査に利用される重要な書類だからです。
国境をまたぐ海外との商品の運送では、輸出時・輸入時を問わず、どんなに小さな荷物でも基本的に通関手続きが必要になります。
通関では、輸出入が制限されている品目のチェックや、関税・消費税の計算、輸出許可の判断などが行われます。
その際に、貨物の内容や数量、価格、取引条件などが正確に記載された「インボイス」が、審査や税額計算の基礎資料として求められるのです。
また、輸出者・輸入者双方の取引記録としても機能するため、インボイスは国際取引に欠かせない書類といえるでしょう。
インボイスの種類
インボイスには様々な種類があり、下記のようなものがあります。
- プロフォーマ・インボイス(Proforma Invoice)
- コマーシャル・インボイス(Commercial Invoice)
- シッピング・インボイス(Shipping Invoice)
- カスタムズ・インボイス(Customs Invoice)
- メーカーズ・インボイス(Makers Invoice)
プロフォーマ・インボイス
プロフォーマ・インボイスは見積書としての役割を持ちますが、正式なインボイスではないため、原則輸出入申告などには使用できません。
「プロフォーマ(Proforma)」は「仮の」という意味であり、通関時にはコマーシャル・インボイスを提出する必要があります。
コマーシャルインボイス
コマーシャル・インボイスは正式なインボイスです。
この書類をもとに輸出入申告が行われ、輸入時には関税や消費税の計算にも使用されます。
金額や数量などは、間違いのないように正確に記載しなければなりません。
シッピング・インボイス
シッピング・インボイスは、納品書や梱包明細書のような性格を持つ書類です。
そのため、通関時の申告書類としては使用されません。
カスタムズ・インボイス
カスタムズ・インボイスは、特定の国や取引条件によって税関に求められることがある専用の書式です。
ただし、通常はコマーシャル・インボイスで代用されるケースが一般的です。
イギリスやオーストラリア、カナダ、南アフリカ、ニュージーランドなどの特定の国では特定のフォーマットがあるため、
提出の必要があれば作成します。
上記4種類のインボイスの中でも一番重要なのは、コマーシャル・インボイスです。申告時には「インボイス(Invoice)」または「コマーシャル・インボイス(Commercial Invoice)」を書類として提出しましょう。海外の人とメールでやり取りする場合は、I/VやINV.などと省略して書かれる事があります。
メーカーズ・インボイス
メーカーインボイスは、仲介貿易(スイッチトレード)において登場する特殊なインボイスです。
例えば商社が中間業者となるケースでは、実際に貨物を製造・発送するメーカーが輸出元として発行するインボイスと、商社が最終顧客に発行するインボイスの2種類が存在することがあります。
このうち、メーカーが発行するインボイスは「メーカーズインボイス」と呼ばれ、金額を伏せて(ゼロバリューなど)税関手続き用に利用されることもあります。
メーカーインボイスは、商社や中間業者の価格戦略や契約関係を保護する役割を持つため、扱いには注意が必要です。
なお、メーカーインボイスとコマーシャル・インボイスが混在する場合は、それぞれの用途を明確に分け、誤って提出しないよう管理することが重要です。
インボイスの書き方
さて、ここからはインボイスの具体的な書き方について説明していきます。
以下は、日本郵便のインボイスフォーマットです。
(引用元:日本郵便HP)
上記の記載例を参考に、以下の項目を記入していきます。
- インボイス作成日(Date):インボイスを作成した日。商品を出す日付が指定されていることもあります。
- ご依頼主(Sender,Shipper):会社名、部署名、担当者、会社住所、電話番号、Email、などを記入します。
- お届け先(Addressee,Consignee,Receiver):会社名、部署名、担当者、住所、電話番号、Email、納税番号など必要事項を相手に確認して記入しましょう。
- 郵便番号(Mail Item No.)、請求書番号(Inovice Number)など:荷物が特定できる番号を記入しましょう。
- 運送手段(Shipped per):EMSなら“EMS”、その他 by seafreight, by airfreightなど船や航空便を使う場合は、本船名やボヤッジ番号、便名と発着の場所や日時を記入します。
- 支払い条件(Terms of Payment):T/T(送金)やL/C(信用状)などの条件があれば記入します。
- 原産国(Country of Origin):商品の生産地の国名
- 正味重量(Net weight): 梱包前の商品1個の重さ
- 数量(Quantity, Q’ty):その商品の個数。単位も記入しましょう。(例:pc, pcs, setなど)
- 単価(Unit Price,Unit Value):取引で輸出するなら販売価格、プレゼントや個人使用、サンプルであれば市場価格、また値引きがあれば値引き後の価格を記入しましょう。
- 通貨(Currency):日本円であればJPY、米ドルであればUSDと記入します。(¥、$は不可)
- 合計額(Total Amount, Total Value):商品ごとの合計金額を記入します。
- 総合計(Total):インボイス全体の合計金額を記入しましょう。
- 建値(インコタームズ、Incoterms):EXW,FOB,DAPなど。
- 郵便物の個数(Number of pieces)、貨物の個数(Total Pieces, Total PKGS):梱包後の箱等の数を記入します。
- 総重量(Gross Weight):梱包後の総重量。
- 署名(Signature):自署
- 有償(Commercial Value):販売する商品の場合はこちらを記入します。
- 無償(No Commercial Value):プレゼントや不良品など支払いが無いものの場合、こちらに記入します。(無償の場合でも、単価や金額が0円(ドル)では送れません。市場価格など一般的な価値で金額を必ず記入しましょう。)
- 贈り物(Gift)、商品見本(Sample)など:無償の理由を記入します。
- 内容品の記載(Description):発送物の品名は具体的な名称を記入しましょう。また用途や材質、成分なども記入するのが良いでしょう。なぜなら、内容物に不明な点があると、税関で開封されたり、輸入国で輸入許可が下りず商品が戻ってくる可能性があるからです。税関で輸入関税を決め算出するために、商品がどの分類になるかを確認するために内容品は詳細な品名を書くようにしましょう。
インボイス作成時のポイント
英語での記載がオススメ
インボイスを書く際の言語としては、英語やフランス語、または送付先で通じる言語が基本とされています。
世界中の税関で共通言語として使われることが多いため、特別な事情がなければ英語で記載するのが最も無難です。
読み手の税関担当者が内容を正確に理解できるよう、簡潔かつ正しい表現を心がけましょう。
ファーマットは自由
インボイスの形式やデザインに法的な決まりはなく、基本的に自由です。
会社独自の様式を使っても問題ありませんが、「誰が」「何を」「いくらで」「何個送るのか」などの取引内容を正確に反映する情報は必須です。
また、インボイスナンバーや発行日、取引条件(インコタームズ)なども明記しておくと、トラブル回避につながります。
品名はなるべく詳しく記載する
商品名は単に「食品」や「雑貨」などの大まかな分類ではなく、用途・材質・構成成分などを含めて詳しく記載するのが望ましいです。
例えば「Snack(お菓子)」や「Japanese Green Tea Leaf(日本茶葉)」などのように、具体性を持たせることで通関での誤解を防ぎ、スムーズな輸送につながります。
無償提供品(サンプルなど)を送付する場合
インボイスは本来「請求書」としての役割を持ちますが、サンプルやプレゼント、無償提供品など支払いの発生しないケースでも、必ずインボイスを添付する必要があります。
税関申告に必要な金額となるため、その際には単価欄を「0」とするのではなく、市場価値(Fair Market Value)を記載し、正確な金額を明示しましょう。
なお、「No Commercial Value」「For Customs Purpose Only」「Sample – Not for Resale」などの表現を加えることで、無償提供であることを明確にできます。相手国の輸入規制や免税措置に関わることもあるため、念のため事前に確認しておくと安心です。
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