今回は相殺関税制度について解説していきます。
当記事では、次のような内容に沿ってお伝えします。
1.相殺関税とは
相殺関税とは、輸出国の補助金を受けた貨物が輸入国の産業に損害を与える等の影響がある場合に、産業保護を目的として、輸入国がその貨物に課す割増関税のことです。
相殺関税は、WTO協定で規定されており、WTO加盟国については協定に基づいて相殺関税を課す権利が認められています。
補助金相当額を割増関税と相殺させることで、自国産業を保護します。
日本では、関税定率法第7条で相殺関税に関して規定されています。
2.なぜ相殺関税を課す必要があるのか
輸出国から補助金を受けた貨物によって、輸入国の産業が損害等の影響を受けることがあります。
自国産業が衰退してしまわないように、輸入国は保護を目的として相殺関税を課すのです。
輸出国政府からの補助金を受けた製造会社は、コストを抑えて製品を製造できるため、本来よりも安い価格で販売、輸出できます。
それらが輸入されることは、一見輸入者や消費者にとっては大きな恩恵となりそうです。
ただ、同じ製品を製造する輸入国側の製造会社にとっては、大きな脅威です。価格競争で不利となることがあるためです。
もしこの価格競争で輸入国側の製造会社が負けると、その会社は廃業や倒産をせざるを得なくなり、その国の産業は衰退していってしまいます。
このように、輸出国政府から補助金を受けた貨物が輸入されることは、輸入国産業の衰退に繋がってしまうことがあります。
そのような事態を防ぐために、要件を満たした場合には、WTOでは輸入国に相殺関税を課す権利が認められているのです。
3.日本における措置発動事例
日本では、2006年に韓国製のDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリー)等の貨物に対して、相殺関税の措置が発動された事例があります。
日本政府が同貨物に対する相殺関税の賦課が適当であると認め、対象となる貨物には関税率27.2%もの相殺関税が課されました。
なお、日本のほか、アメリカやEUにおいてもこの措置が発動されました。
この後、相殺関税の措置によって輸出会社の補助金による利益はなくなったと認められたため、日本政府はこの相殺関税の措置を2008年に廃止しました。
この事例以降、日本においては相殺関税の措置は発動されていません。
4.まとめ
韓国製のDRAM等の貨物に対する措置が発動されて以降、2023年現在までおよそ15年ほど経ていますが、日本では発動事例がありません。
日本における発動事例は少ないものの、相殺関税の課税要件が満たされれば、現在でも措置が発動される可能性はあります。
輸出入業を行っている方は、知識として相殺関税制度について確認しておきましょう。