パソコンを海外へ輸送する際は、通常の輸出物より確認事項が多く、取り扱いも変わってきます。
本記事では、パソコン輸出時の確認事項や注意点を説明します。
目次
パソコンを海外へ輸送する際の確認事項
パソコンを海外へ輸送するには、いくつかの確認事項があります。
確実に輸送を行うため、1つずつしっかり確認してください。
輸出許可を要する特定貨物に該当するか
海外へ輸送するパソコンが輸出許可を必要とする特定貨物にあたるか確認する必要があります。
特定貨物かどうかは、輸出貿易管理令によって規制されている「リスト規制」(輸出貿易管理令別表第1、1の項から15の項)と「キャッチオール規制」(16の項)によって確認することができます。
その際、輸出するパソコンが輸出許可を要するかどうかの判定(該非判定)を行うことが義務付けられています。
「リスト規制」とは?
リスト規制とは、軍事転用の可能性が特に高い貨物や技術に該当する場合、経済産業大臣に輸出許可申請を行わなければならない制度です。
通常のパソコンはリスト規制には該当しないため、輸出許可は不要となっています。
万一、輸出するパソコンがリスト規制に該当する場合は、安全保障上、経済産業大臣に届け出を行う必要があります。
「キャッチオール規制」とは?
キャッチオール規制は、軍事転用の可能性があることが分かった場合に、経済産業省へ許可申請を行わなければならない制度です。
キャッチオール規制では、リスト規制で規制されている物以外全てが対象となっています。
具体的には、大量破壊兵器や通常用関連へ転用できない食料や木材、紙製品等を除く全ての貨物・技術が対象です。
そのため、パソコンを輸送する際は「大量破壊兵器や通常用関連へ転用の恐れがないこと」の確認を行わなければなりません。
キャッチオール規制には一部ホワイト国と呼ばれる規制対象外の国々があります。
アルゼンチン/オーストラリア/オーストリア/ベルギー/ブルガリア/カナダ/チェコ/デンマーク/フィンランド/フランス/ドイツ/ギリシャ/ハンガリー/アイルランド/イタリア/ルクセンブルク/オランダ/ニュージーランド/ノルウェー/ポーランド/ポルトガル/スペイン/スウェーデン/スイス/英国/アメリカ合衆国/韓国
該非判定
該非判定とは、輸出するパソコンが経済産業省への輸出許可を要するかどうか「リスト規制」及び「キャッチオール規制」をもとに判定を行うものです。
該非判定は、外国為替及び外国貿易法によって義務づけられています。
具体的には下記の3点を確認します。
・輸出貿易管理令 別表第1の1~15項
・外国為替令第1~15
・キャッチオール規制
経済産業省への輸出許可申請を要する貨物に「該当」「非該当」の証明書(該非証明書)提出を求められる場合があります。
パソコンの製造元へ申請すれば約1週間で発行してもらえます。
(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html)
米国の再輸出規制
大半のパソコンには、アメリカ製の部品やソフトウェアが使われています。
そのため、日本だけでなくアメリカの規制も確認する必要です。
アメリカ製の部品やソフトウェアを使用したパソコンは、再輸出規制対象品に該当するため、アメリカの規定する輸出規制国(キューバ、北朝鮮、イラン、スーダン、シリア)への輸出時には、アメリカ政府の許可取得が必要となっています。
該当時は、国輸出管理規則(EAR)・米国大使館商務部へ連絡をしてください。
特定技術の国外持出し規制
パソコンだけでなく、パソコン内に収められている技術に関しても規制の対象です。
日本の技術を守るために、外為法で定められている「特定技術」を国外へ持ち出すことは規制されています。
USBやパソコンを用いて情報を国外へ持ち出す際は、経済産業大臣の役務取引許可を得る必要があります。
輸出国の規制
日本からパソコンを輸出するとき、輸入国の規制を確認する必要があります。
国によって規制が違いますので、それぞれ確認してください。
・中国→CCC(中国強制製品認証)認証
・EU諸国→電磁波環境両立性指令(EMC指令)
低電圧指令(LV指令)
特定有害物質使用制限指令(RoHS指令)
廃電気・電子機器指令(WEEE指令)
エネルギー使用製品の環境配慮設計要求統合指令(EuP指令)
輸出国がリチウム電池の輸入を認めているか
輸出する国がリチウムイオン電池の輸入を認めているのかの確認も必要です。
パソコンを輸送する際に気を付ける点
ここでは、パソコンを海外へ輸送する際に気を付けるべきことを説明します。
仕様が同じパソコンを繰り返し輸出する場合、該非判定の過去実績利用可能
仕様が同じパソコンを繰り返し輸出する場合、過去に行った該非判定の結果を利用することができます。
しかし、安全保障輸出管理関係の法令は頻繁に改正が行われるので最新の法令を留意する必要があります。
法改正が行われた場合、改正前の該非判定結果は無効になるので、注意が必要です。
短期間の海外旅行や海外出張には輸出許可申請不要
短期間の海外旅行や海外出張時に、本人使用を目的とするパソコン(暗号機能内蔵可)に関しては、輸出許可申請は必要ありません。
原則として、税関での該非証明書の提出も求められることもありません。
保険や補償金額の確認
海外輸送にはリスクがつきものです。
パソコンは高価な精密機器にあたりますので、万が一に備えて保険の加入などを行うことをお勧めします。
製品が故障の有無
海外へ輸送する際には、再三故障の有無を確実に確認するようにしてください。
故障したパソコンは、トラブルの原因になるだけでなく、電子機器の事故に繋がることもあります。
輸送中の事故は大変危険ですので、確実に確認するようにしてください。
輸送手段の選定
パソコンに内蔵されているリチウムイオン電池は航空輸送・海上輸送においても危険物指定されています。
衝撃や加熱によって高熱になり発火する恐れがあるため、梱包や輸送を適切に行う必要があります。
過去には、リチウムイオン電池に起因する重大インシデント発生した事例もあります。
どちらの手段を選ぶにしても適切な処理を行う必要があります。
輸送会社によって下記書類の提出が求められることがありますので、事前の準備が必要です。
・「該非判定書」
・「SDS(MSDS)」
・「UN38.3テストサマリー」
航空輸送
航空輸送において、リチウムイオン電池は危険物にあたりますので、単体か内蔵されているかによって取り扱いが違います。
・バッテリー・電池単体の場合
→航空危険物に該当するため輸送不可
・機器に内蔵されている場合
→容量や個数など基準をクリアすれば発送可能
海上輸送
海上輸送において、リチウムイオン電池は危険物に該当しますが、基本的にパソコンはSP188およびUN38.8を満たしているので、一般貨物として輸送できます。
また、海上輸送ではバッテリー・電池単体も輸送可能です。
リチウムイオン電池は「単体・機器同梱・機器組込」によって、輸送要件やUN番号(危険性や取り扱い方をルール化したもの)が異なりますので、輸送品の正しい情報伝達がとても重要です。
まとめ
ここでは、パソコンを海外へ輸送するときの流れや注意点を解説しました。
1つでも確認が漏れてしますと、輸送できない可能性も出てきます。
しっかり確認するようにしましょう。
疑問点などがあれば、是非弊社にお尋ねください!