原産地証明書は、産品の信頼性を示すだけでなく、関税面での優遇を受けるためにも重要な書類です。
原産地証明書には、一般原産地証明書と特定原産地証明書の2種類があり、それぞれ目的と取得方法が異なっています。
本記事では、一般原産地証明書と特定原産地証明書について、それぞれの特徴、原産地を判定する基準、取得方法について詳しく解説をしていきます。
目次
原産地証明書とは?
原産地証明書とは、輸出入される産品の原産地証明書です。
原産地証明書のことを英語では「Certificate of Origin」と呼んでいます。
原産地証明書には以下の2つのメリットがあります。
- 特定の国からの輸入を制限・禁止している国への輸出手続きをスムーズに進められる
- 経済連携協定(英語:Economic Partnership Agreement)を結んでいる国に対して輸出した場合、貨物に対する関税率を下げてもらえる
貿易業務を行う上で、輸入にかかる時間とコストを節約できるため、原産地証明書はとても重要な書類です。
原産地を判定する基準とは?
原産地を判定する基準は3つあります。
完全生産品
輸出国のみで全ての生産が行われている産品です。
原産材料のみで生産された産品
一次材料と呼ばれる、輸出国が原産品の材料のみで生産・製造された産品です。
実質的変更基準を満たす産品
他国が原産地である材料に対して、日本で加工などの大きな変化を加え、外国に輸出する産品をいいます。
例えば、外国で生産された牛乳を、日本で乳製品に加工して、外国に輸出すれば、実質的変更基準を満たす産品になるのです。
実質的な変更を加えたと見なす基準は下記の3つです。
- 付加価値基準: 一定以上の付加価値を非原産材料に対して与えている
- 加工工程基準: 特定の加工(例:化学反応など)を非原産材料に加えている
- 関税分類変更基準:原料の関税分類番号(HSコード)の上4桁が変わるような大きな変更を加え、新しい関税分類番号を持つ別の製品として他国に輸出をする
どの基準が適用されるかは、輸出先との国際協定や、品目によって決められます。
原産地証明書には、一般原産地証明書と、特定原産地証明書の2種類があります。
それぞれについて、次項より詳しく見ていきましょう。
一般原産地証明書とは?
一般原産地証明書は下記の場合に必要な書類です。
- 輸入国の法律や規則で要求される
- 貿易相手との契約書、または信用状(L/C)で要求している
- 領事査証取得のために必要
- 輸入者で販売する際に原産地を保証したい
一般原産地証明書は世界各国で使用でき、取得は原則として輸出者が行います。
例外的に、日本とオーストラリアの協定においては、生産者からの申請が可能です。
一般原産地証明書は、原則、原本でなければ無効とされるので注意しましょう。
また、一般原産地証明書は、特定原産地証明書のように、関税面での優遇を受けられないことから、非特恵原産地証明書とも呼ばれています。
一般原産地証明書の取得方法
一般原産地証明書の発行機関は、各地の商工会議所の窓口です。
取得方法について見ていきましょう。
1.商工会議所に貿易登録をする
貿易登録とは、申請者が商工会議所に対して下記の誓約と届出をすることです。
- 証明申請に提出する書類に記載されている内容が全て真実で正確なこと
- 証明書が発給された後に、紛争・疑義が発生した場合は、商工会議所のルールに従って、商工会議所に迷惑をかけないかたちで処理をすること
- 証明書申請者の営業実態について届け出ること
- 証明申請者が署名すること
もし違反してしまうと、全国の商工会議所から証明発行停止と登録抹消を受ける場合があるので注意しましょう。
2.申請書類を提出する
一般原産地証明書の発行申請に必要な書類は下記になります。
- 証明依頼書: 商工会議所申請センターで入手する
- 原産地証明書:各地の商工会議所のホームページから書式をダウンロードする
全て英文で記入し、商工会議所が指定・販売する用紙に印刷する - コマーシャルインボイス:輸出入通関で使用するものを提出する
3.商工会議所の証明センター窓口で発給申請を行う
商工会議所の窓口でかなり厳しく申請書類のチェックを行うため、記載ミスや、署名の字体の崩れなどがないようにしましょう。
4.原産地証明書を受け取る
すでに同じ商品で原産地証明を取得している実績がある場合は、午前中に申請すれば、当日の午後には受け取れます。
午後に申請した場合は、翌日の午前中に受け取りが可能です。
申請料金については、申請先の商工会議所のホームページから確認できます。
特定原産地証明書とは?
特定原産地証明書とは、日本と経済連携協定を締結している国に産品を輸出した際に、一般税率よりも低い特恵関税(減税・無税)を適用してもらうための書類です。
特定原産地証明書を提出することで、輸入国の原産資格を満たしていることが証明できるため、輸入者が輸入通関時に払う関税を安くできるのです。
特定原産地証明書の取得は輸出者が行い、原則的に輸入国税関への原本提出が必要になります。
どのような場合に特定原産地証明書が必要になるか?
特定原産地証明書は、EPA、または、FTAの協定を結んでいる国・地域間での貿易に使用されます。
EPA(正式名称:Economic Partnership Agreement 日本語名称:経済連携協定)とは、特定の国、または地域間の貿易や投資促進を目的とした、輸出入の際に発生する関税の削減と撤廃、投資環境の改善についての協定です。
一方で、FTA(正式名称:Free Trade Agreement 日本語名称:自由貿易協定)は、特定の国、または地域間での関税を削減・撤廃し、貿易の障害をなくすことを目的としています。
EPAとFTAの違いは、FTAが貿易にフォーカスしていることに対して、EPAは人的交流や、知的財産保護など幅広い分野を含んだ協定であることです。
特定原産地証明書の取得方法
特定原産地証明書を発給できるのは、経済産業大臣から発給機関に指定されている日本商工会議所のみです。
各地の商工会議所では特定原産地証明書の発行はできません。
例外的に、日本とシンガポールの協定における特定原産地証明書だけは各地の商工会議所で発給しています。
特定原産地証明書発行申請のタイミングは、原則的には、船積みの確定から実際に船積みされるまでとされています。
しかし、実際には、船荷証券(B/L)確認後でも申請は可能です。
確実な申請を行うためには、申請時に入力する船名や、船積み地が分かる船荷証券(B/L)の内容を確認しましょう。
特定原産地証明書を取得する手順は下記の通りです。
- 輸出する産品の関税分類番号(HSコード)を確認する
- 輸出する産品のEPA税率を確認する
EPA税率は、日本貿易振興会(JETRO)のホームページから確認できます。
日本貿易振興会(JETRO)のホームページ - 輸出する産品に対してEPAが定めた規則を確認する
各協定ごとの規則については、日本商工会議所のホームページから確認できます。
日本商工会議所のホームページ - 輸出する産品の原産性を確認する
原産性とは、EPAで定める原産地規則に適合する原産資格のことです。特定原産品として認められるための必須資格になります。
各協定ごとの原産性については、日本商工会議所のホームページから確認できます。
日本商工会議所のホームページ - 日本商工会議所へ企業登録する
登録費は無料で、有効期限は2年間、1企業につき1登録までとなっています。 - 日本商工会議所に輸出する産品の原産品判定を依頼する
輸出する産品が、輸入地のEPAで定める原産地規則等に適合しているかについて、日本商工会議所で審査・判定をします。 - 特定原産地証明書の発給申請をする
6と7の工程については、オンラインでの申請が可能です。
発給申請を行ってから審査結果が分かるまでには、日本商工会議所で必要情報を受理してから2営業日かかります。 - 特定原産地証明書の受け取りと発給手数料の支払いをする
日本商工会議所により発給された特定原産地証明書を、「第一種特定原産地証明書」といいます。
また、特定原産地証明書は、経済産業大臣が認定した輸出者自らが発行することも可能です。
「第二種特定原産地証明書」と呼ばれ、日本とスイス、メキシコ、ペルーとのEPAにおいて使用可能です。
特定原産地証明書の書式名は、貿易が行われる国と地域によって変わります。
まとめ
原産地証明書を効果的に使用するためには、対象となる産品の特性、日本と輸出先の貿易関係を把握することが重要です。
この記事を読んだ方にオススメの記事はこちら!