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BT-BT FIOとは?在来船における基本用語と注意点を分かりやすく解説

国際輸送の現場では、コンテナ船とは異なる方式で貨物を運ぶ「在来船(Break Bulk Vessel)」が今も多くの分野で活用されており、特に大型機械や特殊形状の貨物など、コンテナに収まらない貨物の輸送では、在来船は不可欠な存在です。

その中でよく登場する専門用語が「BT-BT(ベースターム・トゥ・ベースターム)」と「FIO(Free In and Out)」です。
一見難しそうなこれらの言葉ですが、実は費用負担の範囲や荷役の責任分担を正しく理解するために非常に重要なキーワードです。

本記事では、在来船輸送におけるBT-BTおよびFIOの意味をわかりやすく解説し、実務で注意すべきポイントまで丁寧にご紹介します。
初めて在来船を利用する荷主や物流担当者の方にも安心して読んでいただける内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

在来船(Break Bulk Vessel)とは?

コンテナ船が国際物流の主役となって久しい一方で、在来船は現在でも重要な輸送手段として機能しています。
特に、コンテナ輸送に適さない貨物や、港湾インフラが整っていない地域での物流において重宝される存在です。

コンテナ船との違い

在来船は、貨物をひとつひとつ積み込む形式である点が、コンテナ船と大きく異なります。

コンテナ船は標準化されたコンテナをユニット単位で積載しますが、在来船はパレットに載せた貨物や大型機械、木枠に入った製品など、形も重量もさまざまな貨物を積載します。
貨物の形状や重量に合わせた荷役作業が必要になり、荷揚げや積み込みに時間がかかる傾向があります。
また、港の設備に依存せず、本船のクレーンで荷役が行える点も、在来船の柔軟な強みのひとつです。

在来船を利用するケース

在来船は、主に大型タービンや発電機、鉄骨、プラント設備などのような貨物の輸送に用いられます。
これらはコンテナでは収容できず、かつ特殊な固定やクレーン操作が必要となるため、在来船での個別輸送が適しているのです。
また、発展途上国や地方港など、コンテナ対応設備が整っていない港湾では、在来船が唯一の選択肢となる場合もあります。
結果として、在来船は現在でも重機械業界、エネルギーインフラ、建設関連の輸送において不可欠な存在として利用されているのです。

BT-BT(ベースターム・トゥ・ベースターム)とは

在来船輸送の契約条件としてしばしば登場するのが「BT-BT」という用語です。
この表現は、貨物の引き渡しおよび受け渡しの範囲、つまり船会社が責任を持つ荷役区間を示しています。
在来船の取引では運賃の内訳が複雑になりやすいため、BT-BTの意味を正しく理解することが物流コストの正確な把握に直結します。

BT-BTの基本概念

BT-BTとは、「Base Term to Base Term」の略称で、「船側から船側まで」の意味を持ちます。
具体的には、本船の船側で貨物を受け取り、目的地の船側で貨物を引き渡すという、運送人の責任範囲を明示する考え方です。
この条件では、船会社は港の岸壁やヤードでの荷役作業には関与せず、船のすぐ横(船側)での貨物の受け渡しのみを担います。
つまり、積み込み港での搬入(岸壁→船側)や、揚げ地港での搬出(船側→ヤード)については荷主側の負担となるということです。

この用語は特に、在来船のように荷役作業が複雑で、陸上から船までの物理的距離がある場合に明確な定義が求められます。

BT-BTにおける費用分担の仕組み

BT-BT条件では、港での荷役作業費用は運賃に含まれていないのが特徴です。
こうした費用は、通常、荷主または輸入者側が港湾業者と個別に手配・契約を結ぶ必要があり、例えば、以下のようなケースが想定されます:

・輸出港で港湾作業会社に対して、貨物を岸壁から船側まで運ぶ作業を依頼
・輸入港では、船側で貨物を受け取ったあと、指定ヤードまで運ぶための手配が別途必要

そのため、BT-BT条件に基づく契約を結ぶ場合は、自社あるいは現地代理店が港での実務手配を主導できる体制があることが前提となります。

BT-BTは、特に在来船の輸送に特有の表現であり、コンテナ輸送の一般的な運賃構造とは明確に異なる点に注意が必要です。

FIO(Free In and Out)とは

在来船の輸送条件において「BT-BT」と並んで頻出するのが「FIO(Free In and Out)」です。
こちらは貨物の積み込みと荷卸しにかかる費用の負担区分を示す言葉であり、船会社がどこまで責任を持つのかを明確にします。
FIOは在来船の運賃構造に深く関わるため、BT-BTとセットで用語を理解しておくと良いでしょう。

FIOの定義と意味

FIOとは、「Free In and Out」の略で、「積込費用(In)と荷卸費用(Out)は運賃に含まれない」という契約条件です。
この条件においては、船会社はあくまで航海部分のみを担い、荷役作業にかかる費用と実務は荷主側の責任となります。

たとえば、ある工場から大型の機械を港へ運び、在来船で出荷する場合、以下のような費用負担構造となります。

・港での荷役作業(岸壁から船への積み込み):荷主負担
・本船による航海:運賃に含まれる
・到着港での荷役作業(船から岸壁への荷下ろし):荷主負担

このように、船会社が運ぶことに専念し、積卸し作業や関連する費用は別途発生する点がFIOの最大の特徴です。

FIOとBT-BTの違い

FIOとBT-BTはしばしば一緒に用いられる用語ですが、厳密には示す対象が異なります。

・BT-BT:責任の範囲=船側から船側まで
・FIO:費用の範囲=積み込みと荷卸しは含まない

つまり、BT-BTは物理的な貨物の引き渡し地点を示す条件であり、FIOは費用負担に関する条件です。
両者は似て非なるものであり、「BT-BTかつFIO」という表現でセットで登場する場合、それは船会社が船側から船側までの輸送のみを担い、荷役費は含まないという意味になります。

BT-BT/FIO契約時の実務上の注意点

BT-BTやFIOといった条件は、契約書や船積み指図書に記載される重要な要素ですが、単に言葉の意味を知るだけでは不十分であり、実際の業務では、これらの条件に基づいた手配やコスト管理、現地対応など、具体的な実務が発生します。
ここでは、BT-BT/FIO契約時に特に注意すべき実務的なポイントを整理します。

コスト計算の誤解に注意

BT-BTおよびFIOの条件において最も陥りやすいのが、「運賃に何が含まれているか」という誤解です。
FIO条件では、船会社の運賃に積み込み・荷卸しの費用が含まれていないため、これらは別途、自社で見積もる必要があります。
一見して運賃が安く見えても、港での荷役作業費用が高額になるケースは少なくありません。

たとえば、特別な大型クレーンを必要とする貨物や、危険物・長尺物などは、標準的な荷役よりも高い料金が発生します。
また、港によって荷役業者の数や料金体系が異なるため、同じ貨物でも港ごとにトータルコストが変動する点にも注意が必要です。
こうした背景から、運賃総額を比較する際は、FIO条件であれば必ず港湾荷役費も含めた「実質コスト」を見積もることが重要です。

荷役業者との調整が不可欠

FIOやBT-BTの契約条件では、積地・揚地いずれにおいても、荷役作業の手配は荷主側の責任であるため、荷役業者との交渉・スケジュール調整は避けて通れません。
特に港の混雑状況や労働者の確保、天候などによって作業時間が左右されるため、早めの手配・現地との密な連携が不可欠です。

さらに、港によってはローカルルールや作業順序、書類提出手続きが複雑な場合もあります。
たとえば、アフリカや中東の一部の港では、事前に現地代理店を通じた通関手続きや、独自の荷役計画の提出が求められることがあります。
こうした点を把握しておかないと、貨物の引き取りや積込みに遅延が発生し、デマレージ(滞船料)など余計なコストが発生する可能性もあるのです。

そのため、BT-BT/FIO条件のもとで輸送を行う際には、現地経験のあるフォワーダーや港湾代理店と提携することが、リスクを軽減するためには現実的な手段となります。

貿易契約書やB/L記載のチェックポイント

在来船を利用する輸送契約では、BT-BTやFIOといった条件が契約書や船荷証券(B/L)にどのように記載されているかが非常に重要です。
誤解やトラブルを避けるためにも、書面上での確認作業を怠らないようにしましょう。
以下では、実務上特に注意すべきポイントをご紹介します。

BT-BTやFIOが記載されているかを確認

まず、輸送契約書(海上運送契約)に「BT-BT」や「FIO」などの条件が明記されているかをチェックすることが第一歩です。
運送人やフォワーダーが口頭で伝えた内容と、実際に契約書に記載されている内容が一致しているとは限らないため、「Base term to Base term」や「FIO」などの文言が、契約書やオファーシート上に明確に記載されているかを必ず確認してください。

FIOSTや拡張形の用語にも注意

実務では、「FIO」単独ではなく、「FIOST」や「FIOST and Liner Terms」などの複合的な用語で表現される場合があります。

・FIOST(Free In, Out, Stowed and Trimmed)
積込・荷卸しだけでなく、船内での積付け(Stowed)、バランス調整(Trimmed)も荷主負担。

・Liner Terms(定期船条件)
定期船でよく見られる運賃込み条件で、荷役費用も含まれている。

こうした複合用語は、契約条件がさらに細かく設定されていることを示しており、費用負担の範囲が曖昧になりがちです。
必ずそれぞれの用語の意味を確認し、輸送会社や船社と明文化された合意を交わすことが、トラブル回避のための第一歩です。

まとめ

在来船を利用した国際輸送では、コンテナ輸送にはない独特の契約条件が存在します。
中でも「BT-BT(Base Term to Base Term)」と「FIO(Free In and Out)」は、貨物の引き渡し範囲や費用分担に関わる重要なキーワードです。

BT-BTは物理的な引き渡しの範囲を、FIOは運賃に含まれる/含まれない費用の内容を定義しており、両者の違いを理解することで、輸送にかかるトータルコストを正確に把握することができます。
同時に、これらの条件に基づいた輸送では、荷役業者との連携や現地港湾事情の把握が求められるため、信頼できるフォワーダーや代理店との連携も欠かせません。

また、契約書やB/Lの記載内容は曖昧にせず、FIOやBT-BT、さらにはFIOSTなどの拡張形についても明確にしておくことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。

在来船輸送は一見すると複雑に感じられますが、基本用語と仕組みを押さえておけば、貴社の物流戦略において大きな強みとなるでしょう。
本記事を参考に、ぜひ正確な理解と実務対応を進めてみてください。

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