アパレルの輸出入では「法律」や「規制」をよく確認して貿易取引を行うことが大切です。
とは言え、専門的な知識が必要であるため、なかなか理解が難しいですよね。
でも、問題ありません。
この記事では、アパレルの輸出入においてあらかじめ知っておくべきポイント、注意点をわかりやすくまとめています。
この記事を最後までお読みいただくことで、アパレルの輸出入に必要な知識が得られるでしょう。
目次
アパレル貿易とは
衣料品や繊維製品の国際的な取引のことをアパレル貿易と呼びます。
アパレル貿易取引の概況は以下の通りです。
衣料品輸出国の世界1位は中国
WTOの世界貿易統計レビュー2022によると、中国が衣料品輸出国の世界1位です。
輸出額は1,760億ドル、シェア率は32.8%を占めています。
中国に続いて、衣料品世界輸出国2位はバングラデシュで輸出額340億ドル、シェア率は6.4%です。
2位以下は、ベトナム、トルコ、インドの順に続いています。
- ベトナム:輸出額310億ドル、シェア率5.8%
- トルコ:輸出額190億ドル、シェア率3.5%
- インド:輸出額160億ドル、シェア率3.0%
日本の繊維製品の輸出内訳
アパレル貿易における日本の繊維製品の輸出品目は不織布や生地などの割合が高い傾向です。
日本の繊維製品の輸出内訳は以下の通りです。
<日本の繊維製品の輸出内訳>
項目 | 数量 | 割合 |
その他 | 1016 | 10.6% |
製品(衣料品) | 706 | 7.4% |
炭素繊維 | 867 | 9.1% |
原料 | 968 | 10.2% |
糸 | 1106 | 11.6% |
不織布 | 2398 | 25.1% |
生地 | 2462 | 25.9% |
計 | 9523 | – |
参考
アパレルの市場規模
2020年代では毎年世界でおよそ800億点の衣服が購入されています。
その量はなんと20年前からすると4倍に当たると言われています。
日本の繊維産業における市場規模について見てみましょう。
■衣料品等の国内市場規模推移
- 2000年:約11.5兆円
- 2010年:約11兆円
- 2022年:約8.7兆円
参考
日本の市場規模は1990年代に入り減少傾向でしたが、2000年以降は横ばいの状況となっています。
2020年以降は、新型コロナ感染拡大による外出自粛の影響もあり再度国内市場は減少傾向にあります。
国内生産量においても減少傾向にあり、例えば化学繊維の推移では、
- 2003年:140万トン
- 2021年:10万トン
といったデータがあります。
ただし、アパレルの国内供給点数においては、1990年で20億点、2022年には、約37億点の1.8倍以上にも増加しています。
輸入浸透率(2022年)では数量ベースで98.5%であり、海外からの海外生産(輸入)割合が高い傾向です。
アパレルを輸出するときの注意点
アパレルを輸出するときは以下の点に注意しましょう。
- ダメージ梱包
- 防炎規制
ダメージ梱包
アパレルを輸出するときは、ダメージ梱包を行いましょう。
なぜなら、コンテナダメージなどがあった場合、商品破損に繋がってしまうからです。
■ダメージ梱包とは?
輸送中に商品が破損などのダメージを受けないように適切な梱包をすること
例えば、コンテナに小さな穴が空いていて、商品が水濡れしてしまうケースは往々にしてあります。
このようなトラブルから商品を守るためダメージ梱包が必要です。
■ダメージ梱包の例
- 製品をビニールで包む
- 強化段ボールを使用する
このように、アパレルを輸出するときはあらかじめダメージ梱包をして商品を守りましょう。
またシワを付けたくない商品は、ハンガーラックが備わったコンテナを使用するケースもございます。
防炎規制
米国には防炎織物法があり、アパレルを日本から輸出する場合CSPC基準を遵守する必要があります。
消費者製品安全委員会(CPSC)と税関国境保護局(CBP)の間で交わされた協定に基づき、
CBPが持つ到着前の貨物データにアクセスし、安全基準を満たしていない恐れがある貨物を特定します。
※防炎織物法はCPSC(消費者製品安全委員会)により管轄されています。
例えば、防炎織物法では難燃処理済みの製品を提供しなければなりません。
■難燃処理済みとは?
繊維製品が燃えにくい特別な処理されていること
特に子供用のパジャマなどが該当し、特に厳しい基準が設けられています。
ですから、アパレル輸出をする際は商品によっては防炎規制の基準を満たすことが必要です。
アパレルを輸入するときのポイントと注意点
アパレルを輸入するときは以下の点を抑えておきましょう。
- 関税の確認
- 輸入禁止品の確認
- 法律の確認
関税の確認
アパレルを輸入するときのポイントとして、関税を確認しておきましょう。
なぜなら、アパレル製品を輸入する場合EPA(経済連携協定)を利用することで通常よりも低い関税が適用されるケースがあるからです。
例えば、RCEPや日ASEANなどがそれにあたります。
また、LDC(後発開発途上国)から輸入する場合においては、特恵関税を適用することで低い関税が適用されるケースがあります。
輸入禁止品の確認
衣類や衣類付属品の輸入では特に規制は設けられていません。
ですが、以下は輸入禁止されているため注意が必要です。
- 原産地の虚偽・誤認表示のある製品
- 知的財産権侵害の物品
- (偽キャラクター、偽ブランド商品)
法律の確認
アパレルを輸入するときは法律についてもよく確認しておく必要があります。
ワシントン条約
アパレルを輸入するときはワシントン条約の対象かどうか確認しておきましょう。
ワシントン条約では絶滅のおそれのある動植物の国際取引を規定しており、該当品目は、経済産業省の輸入承認が必要になってきます。
※ワシントン条約とは?
ワシントン条約(CITES)は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制することで、
これらの種の保護を目的とした条約です。1973年にアメリカのワシントンで採択されたことからこの名前が付けられました
例えば、希少な動植物を一部でも使用しているものがそれに該当します。
(ワニ革、ヘビ革など)
鳥獣保護管理法
アパレルを輸入するときの注意点として、鳥獣保護管理法に抵触していないか確認しておきましょう。
輸入する商品が鳥獣保護管理法に抵触していた場合、「輸入禁止」と判断され商品を日本に持ち込むことができなくなります。
また、場合により罰則が科されることがあるため注意が必要です。
例えば、環境省が定める鳥獣の毛皮や羽毛などの加工製品などがそれに当たります。
輸入する場合は通関時に、輸出国政府機関が発行する適法捕獲証明書、または輸出許可証明書を税関に提出し確認を受けることが必要です。
関税法
アパレルを輸入するときは、関税法に基づく輸入禁止品にも注意しましょう。
なぜなら、関税法では、知的財産権を侵害する物品を輸入禁止品として定めているからです。
※知的財産権とは?
・特許権・意匠権・著作権などのように、他者のアイデアや創作物の権利のこと
輸入する商品がこれらに該当していないか確認した上で輸入手続きを進めましょう。
アパレルを輸出入する方法
ここでは、アパレルの輸出入の流れについて解説します。
アパレルの輸出の流れ
アパレルを輸出するときは、以下の流れで進めていきます。
- 荷造り
- 輸出通関手続き
- 船積
まず輸出する商品の荷造りをしていきます。
- カートンへ梱包
- パッキングラベルの貼付
このような作業を行い荷造りを終えると次に輸出通関手続きへと進みます。
〇輸出通関手続き
- 保税地域に搬入
- 輸出申告
- 輸出申告の審査
- (貨物検査)
- 輸出許可
輸出通関手続きはまず輸出申告を行い税関の審査を受けます。
アパレルの輸入の流れ
アパレルを輸入するときは以下の流れで進めていきます。
- 貨物の到着
- 保税地域に搬入
- 輸入申告
- 税関による検査
- 輸入許可
- 貨物の引き取り
海外から貨物が到着すると、輸出と同様に保税地域に貨物が搬入されます。
アパレル製品は、生地の混紡率、織り方、装飾等、税関から詳しく尋ねられることが多いため、注意が必要です。
税関による審査が完了すると輸入許可がおりて、貨物の引き取りが可能になります。
輸出入に必要な書類
アパレル貿易(輸出入)に必要な書類例は以下の通りです。
- 輸出申告書
- インボイス
- パッキングリスト
- S/I(シッピングインストラクション)
- 委任状
※通関業者と初めて取引を行うときに必要になる
初めて通関業者と取引を行う場合は委任状が必要になるため注意しましょう。
まとめ
この記事では、アパレルの輸出入についてのポイントや注意点を解説しました。
アパレルを輸出するときは、まず商品を守るためにもダメージ梱包を欠かさず行いましょう。
また、輸出先に防炎規制などの規制がないか確認しておくことも大切です。
関税率や輸入禁止対象の法律を確認しておくことで適切な輸入手続きが可能になります。
このように、規制や法律をよく確認しておくことでスムーズにアパレルの輸出入ができるでしょう。