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従価税・従量税の違いと輸入関税の計算方法、関税制度の基本を徹底解説

物流業務ご担当の皆様、従価税と従量税という言葉をご存知でしょうか?

これらは輸入関税を計算する際に出てくる言葉です。倉庫会社や輸送会社といった通関業者に輸入申告の代行を依頼していると、基本的には業者が関税計算もまとめて対応してくれますので、ご存知ない方も多いかもしれません。

今回は、関税制度の基本である輸入関税の計算方法についてご紹介します。

 

関税とは?基礎から解説

 

今日の日本における関税とは、輸入品に課される税のことです。
外国から到着した貨物を日本に引き取る際に課されます。

納税義務者

 

関税の納税義務者は、貨物を輸入する者と規定されています。

輸入者はその通関業務を通関業者に委託することができますが、
どのように関税が計算されているか、通関業者は計算を間違えていないか、
納税義務者として関税制度の把握とこまめな確認が大切です。

実行関税率表

 

具体的に、輸入品目毎にどのように関税率が設定されているのかは、
実行関税率表によって確認する事ができます。

この表は税関のホームページに掲載されています。
年に数回改正されていますので、都度確認が必要です(2022年は計5回)。
自身の輸入している商品の税番を確認しておきましょう。

出典:税関ホームページ 実行関税率表

 

関税の計算方法|従価税・従量税・混合税の違い

 

関税額を計算する際、輸入貨物の価格または数量がその計算の基礎となります(課税標準)。

輸入貨物の価格を基準に関税を課すものを「従価税」、数量を基準に関税を課すものを「従量税」と言います。

関税率と同様、課税標準についても輸入品目毎に設定されており、
実行関税率表で確認できます。

従価税

 

実行関税率表では、「〜%」という形で表記されています。
輸入貨物の価格にこの割合を掛けて、関税を算出します。

従量税

 

輸入貨物の個数、容積、重量などの数量が課税標準となります。
肉、魚、酒類等で設定されています。

実行関税率表では、「〜円/l」や「〜円/kg」という形で表記されています。
従価税に比べて課税標準が明確なので、関税額の算出が容易です。

混合税

 

あまり多くはありませんが、従価税と従量税の両方を組み合わせて算出することがあります。
従価税と従量税のいずれか高い方(又は安い方)を関税とする場合と、
両方を併用し足して算出する場合の2種類があります。

実行関税率表では、「〜%又は〜円/kgのうちいずれか高い税率」などのような形で表記されています。
綿及び綿織物等の一部の品目で設定されています。

従価税と従量税の違い

 

このように、輸入する品目によって課税標準が異なります。
一度の輸入申告の中で、従価税設定の品目と、従量税設定の品目の両方が混ざっている事も珍しくありません。
複雑な計算式になることもありますが、1品目ずつに分けて関税額を算出しましょう。

実際に関税を計算してみよう

 

実際に納付すべき関税額を計算してみます。

例えば、
①焙煎されたコーヒー豆(課税標準となる価格は100万円、関税率は20%(従価税))、
②播種用(種まき用)の大麦(課税標準となる重量は1,000kg、関税率は46円/kg(従量税))、
これら2つの品目を輸入するとき、納付すべき関税額はいくらになるでしょうか。

従価税

 

①焙煎されたコーヒー豆の分を計算します。
課税標準×関税率=①の関税
1,000,000円×20%=200,000円

従量税

 

②播種用(種まき用)の大麦の分を計算します。
課税標準×関税率=①の関税
1,000kg×46円/kg=46,000円

納付すべき額

 

①と②の合計額が納付すべき額となります。

200,000円+46,000円=246,000円

なお、今回は不要でしたが、課税価格は千円未満切り捨て、合計額は百円未満切り捨ての端数処理が必要になります。
実際に計算する際はご注意ください。

実行関税率表で確認してみよう

 

関税率は貨物の種類によって非常に細かく設定されています。
表の見方は大変難しく、初心者の方は慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。

まずは、輸入品目がどこに分類されるのかを確認します。

ここでは、焙煎されたコーヒー豆(カフェインを除いていない)の基本税率を確認してみましょう。

分類を調べよう

 

第1類は動物、第2類は肉及び食用のくず肉、といったように商品は第1類から第97類まで分けられていますので
この中から当てはまる類を決定します。

焙煎されたコーヒー豆(カフェインを除いていない)は、第9類にあてはまります。

統計品目番号を調べよう

 

各類の中に、さらに項と号があります。
各項と各号の品名を確認し、それぞれを決定します。

焙煎されたコーヒー豆(カフェインを除いていない)は、0901.21-000に決定されます。

決定されたこの9桁の数字を、統計品目番号と言います。
この番号は輸入申告の際に使用します。

焙煎されたコーヒー豆の関税率

 

番号を決定できましたら、適用予定の税率を確認します。
表の横軸は、国定税率と各国との協定税率の列です。

今回は基本税率を確認してみます。
焙煎されたコーヒー豆(カフェインを除いていない)の行、基本税率の列を見てみますと、「20%」と記載されています。

つまり、焙煎されたコーヒー豆(カフェインを除いていない)の関税率は、20%(従価税)となります。

焙煎されていないコーヒー豆の関税率

 

ちなみに、焙煎されていないコーヒー豆(生豆、カフェインを除いていない)の場合、統計品目番号は0901.11-000に決定されます。

驚くべきことに、この品目の基本税率は無税です。

仮に課税標準100万円分のコーヒー豆を基本税率で輸入する場合、焙煎されたか、焙煎されていないかの違いで、関税だけでも20万円の差が出ることになります。この差は大変大きなものではないでしょうか。

もちろん、EPA協定税率等を適用することで、焙煎されたコーヒー豆であっても書類を提出することができれば、無税で輸入することができます。

このように、輸入品目と適用税率によって関税額に大きな差が出ます。
輸入の際は実行関税率表を事前によく確認しておきましょう。

修正申告と更生申告

 

統計品目番号の決定は大変難しい作業です。
通関士であっても、間違えることは珍しくありません。

番号の決定を間違えると、本来適用すべき関税率が変わり、納めるべき関税額に過不足が発生することがあります。

納めるべき関税の不足があった場合には修正申告が、関税を納めすぎていた場合には更生申告が必要になります。
修正申告を行う場合、本来の関税不足額に加えて、過少申告加算税が別途課される事もあります。

このような事態を避けるためにも、統計品目番号の決定はなるべく慎重に行いましょう。

事前教示制度

 

統計品目番号の決定で悩んでいる場合は、事前教示制度の利用をお勧めします。
これは、輸入の前に税関に対して、統計品目番号の照会を行いその回答を受けることができる制度です。
文書、メール、口頭での問い合わせが可能です。

まとめ

 

今回は、輸入関税の計算方法についてご紹介しました。
関税計算は、大変難しい作業ですが自社で輸入している商品がどの税番にあたるのか、荷主の責で確認し税率を確認するようにしましょう。

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