ブログ

貿易における緊急関税制度(セーフガード)とは 概要やポイントを分かりやすく解説

 

貿易における緊急関税制度(セーフガード)とは、特定の輸入が急増し国内産業へ重大な影響がある場合に、国内産業市場の均衡を保つ為、関税引き上げや輸入数量制限を行う制度のことです。

 

この記事では、

  • 緊急関税制度(セーフガード)について知りたい
  • どのような流れで緊急関税制度が発動されるのか?
  • 実際に発動された緊急関税制度(セーフガード)は?

このような疑問にお応えしていきます。

 

ニュースなどでまれにセーフガードが発動されたと見聞きすることはありますが、その概要までは深く報道されませんよね。

この記事では、緊急関税制度(セーフガード)の概要や発動される流れなどをまとめています。

この記事を最後までお読みいただくことで、緊急関税制度(セーフガード)について詳しく理解することができるでしょう。

 

緊急関税制度(セーフガード)とは

 

緊急関税制度(セーフガード)は、ある特定の商品の輸入が急増した場合に国内産業への重大な影響を防止することを目的とした緊急措置のことで、1994年GATT第19条、WTOセーフガードに基づき、関税定率法によって規定されています。

 

■GATTとは?

  • 関税・貿易に関する一般協定のこと
  • 19条は緊急関税制度についての条項
  • General Agreement on Tariffs and Tradeの略称
  • WTO設立協定の一部のセーフガード協定によって定められている

 

緊急関税制度(セーフガード)の措置には、輸入品への関税引き上げ、輸入数量制限があります。

※措置内容の詳細については後述します

 

例えば、安価な輸入品が国内市場に急増することで市場相場価格が下落します。

市場相場価格が下落することで日本の生産者(国産)は販売価格を下げざるを得なくなってしまい、原価は変わらず利益だけが目減りし、下手すると倒産してしまう可能性もあります。

このような事態を防ぐため緊急措置として関税引き上げなどが実施されます。

 

このように、緊急関税制度(セーフガード)は国内産業の均衡を保つために大切な関税制度であると言えるでしょう。

 

セーフガードの発動要件

 

セーフガードが発動する要件は以下のとおりです。

  • 経済状況の変化により特定の貨物の輸入が増加していること
  • 特定貨物の輸入増加により国内産業に重大な影響が見込まれること
  • 特定貨物の輸入増加と国内産業への影響に因果関係(原因と結果が結びつている)があること
  • 経済上において緊急に必要であると認められること

 

ある特定の商品の輸入が急増し、国内産業に多大なる影響が見込まれた(見込まれる)場合、政府主導により上記項目の調査が実施されます。因果関係については輸入、生産、売上などの経済要素の変化によって判断されます。調査の結果、緊急関税制度が必要と判断された場合、緊急措置が実施されます。

 

内容措置

 

緊急関税制度(セーフガード)の措置内容には、「関税引き上げ」及び「輸入数量制限」の2つがあります。

 

関税引き上げ制度は、対象貨物(輸入品)への関税を上乗せし国内市場に出回る価格調整を行います。

価格調整を行うことで、国内品との価格バランスを保つことができます。

ただし、関税引き上げの上限は内外価格差までとなります。

 

■内外価格差とは?

同一商品の国内価格と海外価格の差のことを指します。

例えば1ドルを100円とした場合、

  • 国内:1個200円で販売
  • 海外:1個1ドル(100円)で販売
  • 価格差:100円(2倍)

 

内外価格差は100円(2倍)となりこの価格差の範囲が内外価格差です。

関税引き上げ制度に当てはめると、100円が上限値となります。

 

輸入数量制限は、文字通り対象貨物の輸入数量を制限し、国内市場のバランスを保ちます。

輸入数量制限を行うにあたっては直近3年の輸入数量平均を下回らないように調整します。

 

発動期間

 

緊急関税制度(セーフガード)の発動期間は、発動後最大4年以内、最長8年となります。

この期間には暫定期間も含まれます。

 

セーフガードの種類

 

緊急関税制度(セーフガード)には「一般セーフガード」と「特別セーフガード(SSG)」があります。

 

一般セーフガードは全世界に適用される緊急関税です。対象品目が農林水産物を含むモノ全般と範囲が広いのが特徴的です。

特別セーフガード(SSG)は、ウルグアイラウンド合意において関税化した農産品(米、小麦、大麦など)を対象とした措置です。

 

特別セーフガードは以下の資料に詳しく記載があります。

sg_3.pdf (maff.go.jp)

出典元:農林水産省

 

対象品目の輸入数量基準

 

緊急関税制度(セーフガード)には輸入数量基準が設けられています。

以下は、令和6年3月29日公表された基準数量の一部です。

※29項あるうちの10項までを参考として記載しています

 

項 概要 輸入基準数量 協定対象外輸入基準数量
1 低脂肪乳 0トン 0トン
2 飲用乳 100トン 100トン
3 クリーム 66トン 57トン
4 粉乳類 22479トン 19067トン
5 無糖れん乳 1995トン 1995トン
6 加糖れん乳 30トン 30トン
7 ヨーグルト 13トン 13トン
8 バターミルク 18トン 18トン
9 ホエイ及び調製ホエイ 52824トン 43262トン
10 その他の乳製品 11718トン 5441トン

このような形で、緊急関税制度(セーフガード)の基準数量は法律「関税暫定措置法第条の3」に基づいて都度公表されます。

 

基準数量については、以下で確認することができます。

セーフガード対象品目の輸入数量等の公表 : 税関 Japan Customs

出典元:税関

 

緊急関税制度(セーフガード)が発動するまでの流れ

 

緊急関税制度が発動するまでの流れは以下の通りです。

  • 利害関係者からの申し立て
  • 調査開始
  • 暫定発動(200日以内)
  • 認定(通報)
  • 利害関係国との協議
  • セーフガード措置が発動する

 

利害関係者からの申し立て

 

緊急関税制度(セーフガード)は特定の輸入商品の利害関係者から申し立てがありスタートします。

緊急関税については以下の機関で対応しています。

  • 経済産業省貿易経済協力局、貿易審査課
  • 電話番号:03-3501ー1511

 

詳しくは、以下で確認ができます。

貿易経済協力局 (METI/経済産業省)

出典元:経済産業省

調査開始

 

利害関係者から緊急関税制度(セーフガード)への申し立てがあると、関係官庁より申し立ての整合性について実態調査が行われます。

  • 対象貨物の輸入増加率
  • 対象貨物の輸入増加量
  • 増加した対象貨物の国内市場シェア率
  • 対象貨物の販売・生産
  • 利害関係者からのヒアリング

 

これらの調査期間は原則1年以内とされています。

 

暫定発動

 

対応が遅れてしまうことで、国内産業への多大なる影響を及ぼしてしまう可能性がある場合、暫定措置が発動されます。

とは言え十分な証拠があることが前提となります。また、暫定発動における措置は関税引き上げのみとされ期間も200日以内となります。

 

認定(通報)

関係官庁調査の結果、対象貨物の輸入増加により国内産業への多大なる影響に因果関係があると判断されると、事実認定されます。

 

利害関係国との交渉

措置内容が決定後、セーフガードを発動させない解決策はないか利害関係国と協議が行われます。

 

セーフガード措置が発動する

利害関係国との協議で解決に至らなかった場合、正式にセーフガード措置が発動されます。

セーフガード措置は、暫定期間を含んだ原則4年とされます。

 

緊急関税制度の事例

 

緊急関税制度(セーフガード)は日本でも発動した事例があります。

生しいたけ、ねぎ、畳表の急激な輸入増加に伴い2001年に中国に対して、暫定で緊急関税を発動させています。

以下で当時の調査内容や概要が確認できます。

セーフガード関係情報:農林水産省 (maff.go.jp)

出典元:農林水産省

 

他国ではアメリカやベトナムなどで発動した事例があります。

 

アメリカ

  • 2002年に日本、欧州連合、中国、韓国が輸出する鉄鋼製品に対して発動
  • 2009年に中国が輸出する乗用車、トラック用タイヤに対して発動
  • 2018年に太陽光パネル、洗濯機への追加関税を課すことを発表

 

ベトナム

  • 2016年に、中国の鉄鋼製品の過剰生産、輸出に対してベトナム商工省が発動

 

まとめ

 

今回は、緊急関税制度(セーフガード)について解説しました。

緊急関税制度(セーフガード)は特定の商品の輸入急増による国内産業への重大な影響を防止する緊急措置のことです。

緊急措置は関税引き上げ、輸入数量制限によって行われます。

緊急関税制度(セーフガード)は利害関係者からの申し立てに始まり、政府を中心として調査を進めて行きます。

  1. 利害関係者からの申し立て
  2. 調査開始
  3. 暫定発動
  4. 認定(通報)
  5. 利害関係国との交渉
  6. セーフガード措置が発動する

 

生産者、販売者独自では輸入数量や価格コントロールが難しいため、場合により緊急関税制度(セーフガード)を通すことで国内産業の均衡を保っています。

 

>>弊社サービスについてのお問合せ・お見積りはこちらから!

 

PAGE TOP
advanced-floating-content-close-btn無料相談・お見積もり