輸入貨物が生鮮植物である場合、木製の梱包材を使って輸入している場合などには、輸出国や輸入国で燻蒸処理を行うことがあります。
輸入貨物に対する燻蒸処理は、その貨物と一緒に付いてくる害虫や菌などが、輸入国内で蔓延することを防ぐための処理です。
適切に燻蒸処理が行わなかった場合、輸入許可が下りない、罰則が与えられるなど、主に輸入者に実害が生じる可能性があります。
いざ輸入の際にそのような事態とならないよう、燻蒸処理について理解しておきましょう。
今回は燻蒸処理について、その方法や対象物などを確認していきます。
目次
1.燻蒸処理とは
燻蒸処理とは、熱や薬剤などによって、貨物に付着する害虫や菌を駆除する処理のことです。
貿易においては、貨物への悪い影響を防止する、輸入国の法規制を受ける等の理由によって、燻蒸処理を行うことがあります。
貿易以外でも燻蒸処理は行われますが、この記事では貿易における燻蒸処理について解説します。
1.1.燻蒸処理の目的
貨物を輸入するとき、その貨物や梱包材には害虫などが付着していることがあります。
それらが輸入国に侵入し蔓延してしまうと、その国に悪い影響を及ぼすかもしれません。
そのような事態を防ぐために燻蒸処理を行います。
1.2.燻蒸処理の方法と費用
貨物や梱包材に対して、輸出国や輸入国で高熱処理か薬剤処理のいずれかを行うことが一般的です。
業者に依頼する場合、場所、貨物の種類などの条件によって費用が変動しますので、事前によく確認しておきましょう。
2.輸入貨物に対する燻蒸処理
輸入貨物に害虫などが付着している場合、燻蒸処理を行うことになります。
多くの国では燻蒸処理に関する法律が定められており、対象となる貨物、害虫、菌などは国によって異なります。
貨物を輸出するとき、輸入するときには、その国の法規制等を事前に確認しておく必要があります。
2.1.日本の法規制
日本では、海外から輸入される植物に対して検疫が行われています。
植物防疫と言われるもので、植物防疫法に基づきます。
対象となる植物を輸入する場合、検疫所にその旨を届け出て、輸入検査を受けなければなりません。
この検査に合格した後、輸入通関手続きに入ります。
検査に合格しなかった場合(不合格の場合)、燻蒸処理を行うか、その貨物を廃棄するかをしなければなりません。
対象となる植物は、栽培用植物、野菜、果物、木材、穀類などです。
ただし、家具といった木材加工品など、対象とならない植物もありますので、対象の適否については個別に確認が必要です。
3.木材梱包材に対する燻蒸処理
木材梱包材を使って貨物を輸出する場合、貨物だけではなく、その梱包材にも害虫などが付着することがあります。
輸入貨物と同様に、木材梱包材に対しても燻蒸処理を行うこととなります。
3.1.各国の法規制
木材梱包材については国際基準(ISPM15、国際貿易における木材こん包材の規制)があり、日本、EU、アメリカ、オーストラリアなど、多くの国がこの基準を採用しています。
この基準では、輸出国で木材梱包材の燻蒸処理を行うこと、燻蒸処理を行った木材梱包材にはマークを表示すること、などが定められています。
この基準に加えて、その国独自に規制を定めていることもあります。
全ての国で国際基準が採用されているわけではありませんので、輸出先の国の法規制について十分に確認しておきましょう。
3.2.処理表示(マーク)
国際基準を採用している国へ輸出する場合、燻蒸処理済みの表示(マーク)がある木材梱包材でなければなりません。
輸出前に適正に燻蒸処理を行っていたとしても、この表示(マーク)がなければ、輸入国ではそのようにみなされません。
木材梱包材を使って輸出する前には、この表示(マーク)の有無を確認しましょう。
4.燻蒸処理を避けるための工夫例
植物を輸入する場合や、木材梱包材を使って貨物を輸入する場合には、燻蒸処理について留意しておく必要があります。
ただし、輸入方法を変えることで燻蒸処理を確実に避けることも可能です。
今回は2つの工夫例を取り上げます。
ケースバイケースではありますので、選択肢の1つとしてご参考ください。
4.1.植物を輸出国で加工してから輸入する
植物検疫は、害虫などが付着する可能性のある植物が対象となっていますが、付着する可能性がなければその対象外となります。
例えば、コーヒーの生豆を輸入する場合、これは植物検疫の対象です。一方で、輸出国で焙煎されたコーヒー豆を輸入する場合、これは植物検疫の対象外となります。
このように、同じ植物であってもその状態によって、植物検疫の対象の適否、すなわち燻蒸処理の要否は変わります。
輸入貨物に対する燻蒸処理を確実に避けたい場合には、輸入国の法規制を確認の上、輸出国で貨物を加工する等の工夫を検討してみても良いでしょう。
4.2.アルミ製やプラスチック製の梱包材を使う
貨物を輸出する際に使う梱包材を、木製ではなく、アルミ製やプラスチック製に変更する手もあります。
これによって、これによって、燻蒸処理を確実に避けることが可能です。
特に、国際基準(ISPM15、国際貿易における木材こん包材の規制)を採用している国へ輸出する場合には、積極的に検討してみても良いでしょう。
梱包材を木製からアルミ製やプラスチック製を変えることで、燻蒸処理費用の削減、輸出先の国での輸入通関手続き時のトラブル回避など、一定のメリットを期待できます。
一方で、アルミ製やプラスチック製の梱包材は木製に比べて高価であること、梱包材の加工をしにくいことなど、デメリットもあります。
メリット、デメリット、コストなどから、総合的に判断されることをおすすめします。
5.まとめ
今回は、輸入貨物や木材梱包材に対する燻蒸処理についてご紹介しました。
害虫や菌などの付着は、貿易を行う以上避けることは難しく、必要な場合には適切に燻蒸処理を行わなければなりません。
主に輸入国に悪影響を及ぼすことの無いよう、輸入者や輸出者は特に留意しておくことが大切です。
一方で、これらのリスクを工夫次第では回避することも可能です。
ケースバイケースとなりますので、気になる点がある場合には起用物流会社等に事前に相談してみても良いでしょう。