海外展示会に出展する企業の担当者の仕事は多岐に渡ります。
本記事では、担当者として押さえておくべきポイントを10個紹介します。
会期前、会期中、会期後に意識すべきことを知っておくことで、よりよい出展効果を得ることができるでしょう。
目次
1. 海外展示会参加への準備は会期の1年以上前には始めること
出展を希望する海外展示会の選定と、出展スペースへの申し込みは、開催日の1年〜1年半には始めている必要があります。
また、出品物、出品物を現地へ運ぶ国際輸送会社、ブースの装飾・施工業者についても開催日の9〜12ヶ月前には決定していないといけません。
人気の海外展示会ともなると、開催の数年前にもかかわらず、すでに空いている展示スペースがないということが十分にありえます。
人気の高い海外展示会の主催団体は、代表部や代理店を日本に持っていることが多いです。代表部、または代理店と日頃からコネクションを持っていれば、出展スペースの確保がしやすくなります。
早めに行動することが大切です。
2. 展示会開催国の文化と商習慣を事前に調べ、製品パッケージも翻訳する
展示会開催国の文化と商習慣のリサーチと、製品パッケージの現地語、または、英語への翻訳をしておきましょう。もし現地語への翻訳が難しい場合は、英語に翻訳します。
現地の文化と、法律やライセンスなどを含めた商習慣を予め理解しておくことで、バイヤーとの商談、コネクション作りをスムーズに進めることができます。
また、海外のバイヤーは、読めない言語(日本語のこと)がパッケージに書かれている商品は取り扱いたがらないことが多いです。
最初の段階でパッケージの翻訳が出来ていれば、バイヤーからの心象が良くなります。少なくとも、パッケージ表記だけでも翻訳しておいた方がよいでしょう。
しかし、韓国や中国などのアジア諸国の場合は、日本語のパッケージにした方が印象が良い場合もあります。現地のニーズを予め調べた上で判断しましょう。
3. 展示会参加前に出品物の価格、納期、決済条件などを決めておく
海外展示会には購買権限を持つ来場者が多く集まります。展示会の場で商談が成立することも珍しくありません。
商機を逃さないためにも、下記について出展前に把握しておくことが大切です。
- 販売価格
- 決済条件
- 在庫
- 納期
- 最小と最大ロット
- 販売店、または代理店契約の取引条件
- 仕様、色、素材などの変更ができるか
- 現地の相場と競合
その場でチャンスを掴みきるための準備をしておきましょう。
4. 出展前に知的財産権などの出願は済ませておく
海外展示会には、展示品のデザインや技術情報が盗まれるリスクが存在します。
出展前に下記の権利の出願は必ず済ませておきましょう。
- 知的財産権
- 特許権
- 意匠権(デザインに関する権利)
- 実用新案権(出展物の構造、形状、組み合わせに関わる「考案」についての権利)
- 商標権
一部例外はありますが、権利の保護をしていない状態で出展したり、技術情報が記載されたカタログを配ったりしてしまうと、以降は権利の取得が原則としてできなくなってしまいます。
特に、デザインと技術については、権利の取得において重要になる「新規性」が出展により失われてしまうため注意が必要です。
また、知的財産権は、日本国内だけでなく、国ごとに登録をする必要があります。
出展先と販売先だけでなく、海賊版対策をしておく必要がある国での取得も検討すべきでしょう。
権利関係については一度すべて整理をしておいた方がよいです。
日本貿易振興機構(ジェトロ)で知的財産保護についてのアドバイスを行っているので、相談してみてもよいでしょう。
5. 可能な限り沢山展示するのではなく、出展目的に合う代表的な品物を陳列する
出展目的に合う代表的な品物を、来場者が見てすぐにわかるかたちで展示することが必要です。海外展示会の来場者は可能な限り多くの企業ブースを効率的に回りたがるからです。
展示ブースも空間的に余裕を持ったレイアウトにする方が、視覚効果があります。出品物の色とサイズ違い品については、カタログや色見本、ブース内倉庫に見本を用意することで対応できます。
また、展示会のテーマや、色・柄・素材のトレンドを意識した展示内容にすることも大切です。
6. アテンド体制を確立する
ブースアテンドは営業、技術、受付担当だけでなく、決裁権のある責任者、通訳者、現地アドバイザーなどで行います。
それぞれの役割と目標を明確にした上で、会期中は緊密にコミュニケーションを取るようにしましょう。
アテンド業務のポイントについてまとめました。
- 会期中は、展示会の開始前と終了後に短時間でもミーティングを毎日行い、当日の予定と目的の共有、課題の検証などを行う
- ミーティングで決めたことや、何らかの予定変更がある場合は全員に共有する
- 必ず来訪者リストを作成する(連絡先、商談の内容、関心を持ってもらえた品物やサービスなどの情報を記録しておく)
- 来場者からの評価を知るためにアンケート調査を行う
- 可能な限り競合他社のブースを視察する
- シンポジウムやセミナーに参加して、製品や業界のトレンドについて学ぶ
- 会期中の主要なイベントスケジュール、VIPの来場予定も把握しておく
- 展示会全体の入場者数データを取っておく(展示会終了後の出展効果分析のため)
自社ブースでの対応だけでなく、他社や展示会全体を視野に入れたアテンド体制を構築しておきましょう。
7. 主催者が提供するプログラムを有効活用する
海外展示会の主催者が、商談相手の紹介やアポイントメントを取得してくれるプログラムがある場合があります。
また、会期中にプレゼンテーションや、各種コンペティションを開催する展示会も多くあるので、積極的に参加するようにしましょう。
自社のプレゼンテーションが好評を得たり、コンペティションに入賞することで、商機を呼び込むことができます。
8. 通訳任せにせず、交渉の権限を持つ担当者でフォローする
現地のバイヤーに対する商品やサービスの紹介は通訳に任せられますが、取引条件に話が及んだ場合は交渉の権限を持つ担当者でフォローすることが必要です。
バイヤーのニーズを直接確かめ、商談成立の可能性を高めるためにも、通訳に全てを任せるのではなく、担当者を交えて直接コミュニケーションを取るようにしましょう。
担当者でも商品やサービスについて一通り英語で説明し、想定される質問に回答する練習をしておいた方がよいです。
また、通訳には下記について事前に理解してもらうようにしておきましょう。
- 商品の内容
- ターゲット顧客
- 出展目的
- 通訳に求める役割
- 商談の記録を残すこと
9.防犯対策をする
海外展示会で盗難が発生する確率は高いので、しっかりとした防犯対策が必要です。特に会期の前後は、出品物がダンボールごと無くなったり、パスポートや財布を盗まれたりしやすくなります。
海外展示会における防犯対策をまとめました。
- 出品物を木箱、またはパレットに梱包して、盗難のリスクを減らす
- 小物は持ち去られやすいので、通路側に陳列しない
- 貴重品はホテルのフロントに預けるか、金庫に入れる
- 会場には最低限の現金、クレジットカードしか持ち込まない
- カタログと商品の価格表をむやみに配らない
- 買う気のなさそうな来訪者とは名刺交換のみ行い、後日身元を調べるようにする
- 写真撮影は禁止する
- 夜間は鍵付きの展示台の中に出品物をしまい、ブースの入口を布などで覆っておく
- 警備会社にブースの夜間警備を依頼する
- 会期終了後の撤収作業時は持ち運びしやすい物の盗難に気をつける
- 国際輸送会社への荷物の引き渡しには必ず立ち会う
万が一、盗難にあってしまった場合は、直ちに主催者、現地警察、保険会社に連絡しましょう。
(また展示会開催中は、訪問客も多くなります。展示会場への行き帰りの電車内など、スリが多発する傾向にあるので、十分注意しましょう。)
10.展示会終了後のフォローアップが重要
展示会終了後の顧客フォローはとても重要です。
遅くとも帰国後1週間以内には、招待に応じてくれた顧客、関心を示してくれたバイヤーに対して礼状を送りましょう。その際、必要に応じて、追加資料やサンプル、見積の送付、問い合わせへの回答などを行います。
顧客に対して丁寧なフォローアップを行い、信用を得ることで、商談が成立する可能性を高めることができるでしょう。
メールや出張だけでなく、現地駐在員で顧客フォローが行えれば理想的です。
また、金額の大きな商談になる可能性がある場合は、相手の信用調査を行うようにします。
まとめ
海外展示会を成功させるためには、会期前、会期中、会期後にやるべきことのポイントを押さえることが重要です。
煩雑な業務に流されることなく、海外顧客獲得という成果を得ていきましょう。