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一般税率と簡易税率の違いとは 少額輸送で重要な貿易の知識を解説

輸入貨物に適用される税率は課税金額により異なります。

課税価格が20万円以上であれば一般税率が、20万円を超えなければ簡易税率が適用され、税関に支払う関税額も変わります。

しかし、輸入申告時に輸入貨物に適用される税率を選ぶことができる場合があります。

申請時に適用できる関税を把握しておくことで、輸入通関にかかるコストを削減することができるのです。

本記事では、一般税率と簡易税率、両者の違いについて解説をしていきます。

一般税率とは

一般税率とは、海上コンテナなどに積まれて輸入される一般的な商業貨物に対して適用される関税率のことです。

各品目に適用される税率は財務省の定める実行関税率表を基に決められます。

実行関税率表

税率の種類は多岐に渡るため、一般税率を適用して輸入申請を行いたい場合は、通関業者を通して行なった方がスムーズに進められます。

簡易税率とは

簡易税率とは、数千種類ある一般関税率を7つの大分類に区分にしたものです。

簡易税率は、個人輸入、商業輸入の両方に適用することができます。また、関税、消費税、内国消費税がセットになっていることも特徴の一つです。

ここでは、簡易税率の税区分、特徴、免税条件、申告方法について解説します。

簡易税率の税区分について

簡易税率の区分は下記表の通りです。

輸入貨物にどの関税区分が適用されるかは税関によって決められます。

品目〔具体的な品目例〕 関税率
1 酒類
(1) ワイン
(2) 焼酎等の蒸留酒
(3) 清酒、りんご酒 等

70円/リットル
20円/リットル
30円/リットル
2 トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品 等 20%
3 コーヒー、茶(紅茶を除く)、なめした毛皮(ドロップスキンを除く)等 15%
4 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く)等 10%
5 プラスチック製品、ガラス製品、卑金属(銅、アルミニウム等)製品、家具 等 3%
6 ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 無税
7 その他のもの 5%

出典:税関

簡易税率の課税価格算出方法は2種類あります。

  • 個人使用の場合:海外商品価格 X 0.6 = 課税価格

注)個人輸入の場合は商品価格の60%が課税価格となるため

  • 商用目的の場合:海外商品価格 + 運送費 + 保険料 = 課税価格

なお、下記の場合は簡易税率は適用されません。

  • 関税がかからないもの(無税、または、免税)
  • 国内産業に影響があるため簡易税率の適用が不適当な物品
  • 免税範囲内の携帯品と別送品

注)携帯品と別送品の免税範囲は税関ホームページを参照してください。

  税関ホームページ

簡易税率の適用外となる主な輸入品としては下記があります。

  • 米などの穀物とその調製品
  • ミルク、クリームなどとその調整品
  • ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
  • たばこ、精製塩
  • 旅行用具、ハンドバッグなどの革製品
  • ニット製衣類
  • 履物
  • 身辺用模造細貨類(卑金属製のものを除く)

出典:税関

簡易税率の特徴

簡易税率には下記の特徴があります。

  • 複数の輸入貨物を合計計算して関税額を決める場合がある

複数の貨物を一度に輸入した場合、最も高い税率を全ての貨物に適用することで関税額を決めることが多いです。

例えば、3つの輸入貨物への関税率が8%、10%、20%だった場合に、全ての貨物に対して20%の関税がかかります。

簡易税率が適用される輸入貨物の量が非常に多いため、従来のように輸入貨物の種類ごとに個別の関税率を適用させることが難しいためです。

  • 証明書類の提出が免除される

輸入貨物に簡易税率が適用される場合、特定原産地証明書などの証明種類提出が不要になります。

少額輸入をする際にコストと手間を減らせることが簡易税率の利点です。

簡易税率ではなく一般税率を選ぶこともできる

一般的には簡易税率の方が一般税率よりも税率が低いです。

しかし、品目によっては一般税率の方が税率が低い場合もあり、こうした場合は一般税率の適用を選ぶこともできます。

上述の実行関税率と簡易税率区分を比較し、必要書類の有無などの工数も考慮した上で適用税率を選ぶようにしましょう。

ただし、適用税率を選ぶ際にはいくつか注意が必要です。

  • 一般税率での輸入申告を選んだ場合は、申告対象の輸入貨物すべてに一般税率が適用される
  • 通関後に 「一般税率→簡易税率」「簡易税率→一般税率」に再変更することはできない

課税価格1万円以下は関税と消費税は免税

輸入申告される貨物の課税価格総計が1万円以下であれば、関税と消費税、地方消費税は免税になります。関税が少額の場合は、免税にして税関と申請者の手間を減らした方がよいという判断によるものです。

「課税価格総計」の意味合いは下記になります。

  • 1インボイスに含まれる複数の貨物の合計課税金額
  • 1つの箱に同梱されている複数の貨物の合計課税金額
  • 差出人、受取人、発送時期が同じな複数の貨物の合計課税金額

また、個人輸入では、海外商品価格の60%が課税金額のため、約16,666円までは免税対象です。

一方で、商用輸入では、海外商品価格 + 運送費 + 保険料の合計が1万円以下で免税となります。

ただし、関税法で日本の産業に影響があるとされている物品は免税の対象外です。

簡易通関の申告方法について

申告時に輸入申告書に「少額貨物簡易通関扱」と記載して税関に提出します。簡易通関では下記の項目の記載を省略できます。

  • 申告種別符号
  • 船(取)卸港
  • 積載船(機)名
  • 入港年月日
  • 船荷証券番号
  • 船(取)卸港符号
  • 船(機)籍符号
  • 貿易形態別符号
  • 原産国(地)符号
  • 輸出入者符号
  • 減免税条項適用区分符号

少額輸入貨物の輸入申告時に発生した関税については、下記の方法で輸入者に請求されます。

  • 国際郵便物の場合

郵便局が税関に関税の立て替えを行い、輸入者に対して「国際郵便物課税通知書及び納付書・領収書」を発行し、配達時に輸入者から取扱料と関税を徴収します。

なお、一般税率を適用したい場合は、簡易税率での関税の支払いはせずに、税関外郵出張所へ一般税率の適用を申し出ましょう。

国際郵便物課税通知書に「一般税率適用希望」と書き、サインか捺印をした上で、通知書を送ってきた税関外郵出張所に郵送、または直接届けることで申請ができます。

  • 国際宅配便の場合

国際輸送業者で輸入通関時に立て替えを行い、輸入者が貨物受け取り時に清算します。

国際宅配便使用時の一般税率への切り替え手続については、各輸送業者にご確認ください。

一般税率と簡易税率の違い

一般税率と簡易税率を分けるのは、輸入貨物の課税金額の違いです。

一度に輸入される貨物の課税価格が20万円を超えれば一般税率、超えなければ簡易税率が適用されます。

「煎ったコーヒー」を個人輸入する場合を例にして、簡易税率と一般税率で課される税金の違いを見ていきましょう。

  • 簡易税率の場合

まず、商品価格の60%である課税価格がいくらかを算出します。

海外商品価格¥195,000 x 60% = 課税価格¥117,000 

次に、課税価格に対して税率を適用します。

課税価格¥117,000 x コーヒーの簡易税率15% = 関税¥17,550

課税価格¥117,000 x 消費税率10% = 消費税¥17,000

コーヒーの簡易税率

  • 一般税率の場合

海外商品価格¥380,000 x 60% =   課税価格¥228,000

課税価格¥228,000 x 煎ったコーヒーの一般税率20% = 関税¥45,600

課税価格¥228,000 x 消費税率10% = 消費税¥22,800

煎ったコーヒーの一般税率

簡易と一般で適用される税率が異なることがわかります。

まとめ

関税は輸入貨物の価格競争力に影響する重要な要素です。

一般税率と簡易税率のどちらを選んだ方がコストと工数面でメリットがあるかを考慮し、有利な方を選んでいきましょう。

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