輸入における評価申告とは、輸入貨物に対する課税価格を決めるための手続きです。
評価申告は一見複雑に見えますが、特徴の一つ一つを理解することでスムーズに行うことが可能です。
本記事では、課税価格の算出方法、評価申告書の提出が必要・不要な場合、個別申告と包括申告の違い、税関による事後調査、評価申告書について解説をしていきます。
目次
輸入における評価申告とは
輸入時の課税価格は、通常、下記の合計から算出されます。
- インボイス価格
- 運賃明細書に記載された金額
- 保険証券に記載された保険料
評価申告は、上記以外にも課税対象がある場合に、税関に対して行う納税申告のことです。
課税価格の算出方法
課税価格は、現実支払価格に、加算要素を合計することで算出されます。
課税価格 = 現実支払価格 + 加算要素(発生する場合のみ)
現実支払価格とは、輸入者が輸出者に支払った、もしくは、支払うべきインボイス価格のことです。
一方で、加算要素とは、インボイスに含まれない価格のことで、主に下記のことをいいます。
- 輸入港までの運賃、輸送関連費用(コンテナ取扱料、保管料など)
- 輸入港まで保険料
- 仲介手数料
- その他の手数料 ※買付手数料は含まれない
- 輸入貨物の輸送に使用される梱包資材、容器の費用
- 輸入貨物の梱包、仕分け、包装作業の費用
- 買い手が売り手に対して、無償、または、値下げをして提供する物品と役務
(例:材料、技術、部品、鋳型、設計、工具など)
- ライセンスに関連するロイヤリティ(例:特許権、商標権、意匠権など)
- 直接的、または、間接的に売り手に帰属される収益
輸出入者のコンプライアンスに係る情報が含まれているため、課税価格は輸入者が計算して、通関業者に提出することが多いです。
評価申告書の提出が必要な場合
下記のような場合には、評価申告書を税関に提出することが必要です。
- 輸入取引のインボイス価格が現実支払価格と異なっている場合
- 輸入取引に係る加算要素がある場合
- 売り手と買い手が、特殊関係(例:親会社と子会社)にあることで、通常とは異なる輸入取引価格になっている場合
- 輸入貨物の販売地域が限定されている、または、使用制限があるなど特別な事情がある場合
- 例外的な算出方法で課税価格を決める必要がある場合
評価申告書の提出が不要な場合
反対に、下記のような場合は評価申告書の提出は必要ありません。
- 輸入貨物に対して関税が発生しない場合(無税、または、免税)
- 輸入貨物に対して従量税のみが適用される場合
※従量税とは、輸入貨物の数量、容量、面積に対してかかる関税のこと
- 輸入貨物の仕入書ごとの課税価格が総額100万円以下である場合
※同じ取引先同士の継続取引の場合を除く
評価申告書の提出は要求されませんが、課税価格を関税定率法が定める計算方法で算出することが必要になります。
個別申告と包括申告の違い
個別申告とは、納税申告を行う都度に評価申告書を提出することです。
一方で、包括申告とは、同じ内容の輸入取引を継続的に行う場合に、課税価格の計算方法と取引継続期間(最長2年間)を記載した包括申告書を、納税申告前に税関に提出することです。
包括申告のメリットは2つあります。
- 個別での評価申告を行う必要がなくなる
- NACCS経由で輸入申告をする際に、税関発行の包括評価申告受理番号を入力することで、評価額の自動申請ができる
ただし、包括評価申告をするためには、申請者が一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)から輸出入者コードの発給を受けていることが必要です。
税関による事後調査
税関は評価申告に漏れがなかったかを確認するために、輸入許可日から3年、または5年後に事後調査を行います。
事後調査でよく税関から指摘を受ける内容の一つに、加算要素の申告がされていないことです。
もし事後調査で申告されていない加算要素が発見された場合は、税金の追加徴収の対象になります。
申告漏れがあると、税関担当者のチェックがさらに厳しくなるので注意が必要です。
事後調査の際に特に厳しくチェックされる項目は下記の2つです。
- 商品価格にはなんの価格が含まれているか
- 課税価格は適切な関税率で算出されているか
とはいえ、課税価格に含まれるべき価格を輸入者で全て把握するのは難しい場合もあります。
常日頃から、課税価格について分からないことがあれば、税関の関税評価担当者に相談しておいた方がよいでしょう。
また、関税評価官との相談後に、輸入許可がおりた申告書に評価漏れがあることが発見された場合は、修正申告を行うことができます。
修正申告は自社と取引のある通関業者に依頼します。追加で申請する費用がある場合は、
追加費用の根拠となる書類の提出が必要です。
事後調査で税関の指摘を受けないための準備を常にしていることが大切です。
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評価申告書についての解説
評価申告書には2種類あります。
- 輸入貨物の評価(個別・包括)申告書I
- 輸入貨物の評価(個別・包括)申告書II
それぞれの特徴を見ていきましょう。
評価申告書Iの解説
評価申告書Iは下記の2つの場合に使用されます。
- 現実支払価格がインボイス価格と異なっている場合
- インボイス価格から加算要素を足す、または、控除要素を引くことで課税価格を算出する場合
調整項目として評価申告書Iに記載するのは下記3点です。金額と計算式を記入しましょう。
- 現実支払価格のうちで、インボイス価格に含まれないもの
- 加算要素
- 控除対象になる費用
評価申告書Iは下記リンクから取得可能です。
評価申告書IIの解説
評価申告書IIは下記の4つの場合に使用されます。
- 売手が買手に対して、輸入貨物の使用と販売に制限を課している場合
- 通常の計算方法で輸入貨物の課税価格を算出できない場合
- 輸入取引によって売手に帰属される収益額が不明の場合
- 売手と買手の特殊な関係性が価格に影響している場合
評価申告書IIは下記リンクから取得可能です。
評価申告書IとIIが両方必要な場合
下記のような場合には、評価申告書IとIIを両方提出する必要があります。
- 無償で取引がされている場合
- 輸入貨物自体は航空輸送されているが、特例措置により航空便ではなく、船便の運賃で請求がされている場合
上記位以外にも、関税定率法の4条の2〜6の適用対象になっている場合には、両方の申告書の提出が必要です。
関税定率法 | 内容 |
関税定率法第4条の2 | 同種又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定 |
関税定率法第4条の3 | 国内販売価格又は製造原価に基づく課税価格の決定 |
関税定率法第4条の4 | 特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定 |
関税定率法第4条の5 | 変質又は損傷に係る輸入貨物の課税価格の決定 |
関税定率法第4条の6 | 航空運送貨物等に係る課税価格の決定の特例 |
出展:関税定率法
まとめ
輸入における評価申告には複雑なところもあるため、輸入者だけで全てを把握し、適切な判断をすることが難しいことがあります。
どうしてもわからないことがあれば、取引先の通関業者や、税関の担当者に相談をすることで、申告時や事後調査でのトラブルを避けることができるでしょう。