航空貨物の運賃は通常の輸送手段に比べて割高です。
そのため、国際貿易の促進を目的として、航空運賃特例が設けられました。
この特例により、企業はコストを抑えつつ迅速な輸入が可能となります。
ここでは「航空運賃特例とは何か」「航空運賃特例が適用される貨物」やそのときの「保険料」を解説します。
目次
航空運賃特例とは
航空運賃特例とは、正式には「航空運送貨物に係る課税価格の決定の特例」と言い、課税価格を決める際に定められている規定です。
貨物の輸送を行う際に、航空機で輸送した場合でも、航空機以外の通常の輸送方法による運賃と保険料に基づいて、輸入する貨物の課税価格を決定する制度です。
この特例は、関税定率法第4条の6および関税定率法施行令第1条の13で定められており、適用される貨物に条件があります。
つまり、条件を満たした航空貨物においては、課税価格に加算すべき運賃と保険料を「航空機による輸送方法以外の通常の輸送方法による運賃と保険料」として扱うことになります。
これは、物流や国際貿易を円滑かつ効率的に行うために定められている措置です。特定の該当する貨物や輸送条件に応じて、課税価格の優遇が行われています。
適用される貨物
航空運賃特例に該当する貨物は特定の条件を満たす必要があります。
適用される貨物は以下の通りです。
無償の見本や試作品
無償の見本や試作品は、課税価格が20万円を超えないものに限り認められています。
災害救助貨物
災害の際の救助や公衆衛生を保つために、緊急に輸入する必要があると認められる貨物や、その他これらに準ずる目的のために輸送される貨物に適用されます。
入国者の携帯品
転入以外の目的で日本へ入国する人が、その際の携帯品や、別送して輸入する貨物(自動車・船舶・航空機を除く)のうち、「個人が使用する目的」や「仕事上必要な場合」は航空運賃特例が適用されます。入国者の携帯品は、課税価格の総額が20万円以下のものに限られています。
寄贈物品などの貨物
個人的な使用のための寄贈品は航空運賃特例の対象となります。
製造遅延等による運送方法変更貨物
以下の場合、航空機によって運送された貨物は航空運賃特例が適用され、課税価格が優遇されます。
・貨物の遅延
・輸入者に起因しない要因によって日本への貨物の遅延または、遅延が生じる際に、輸入者以外の人によって運送方法変更され、それに伴う費用を負担する場合
保険料
航空運賃特例貨物における保険料を算出する場合、「運賃率」は船会社「保険料率」は保険会社へ問い合わせをしましょう。「貨物の種類」と「運送期間」「経路」を伝えることで、情報を得られて、航空運賃特例にかかる保険料を算出できます。
しかし、船会社や保険会社へコンタクトが取れない場合など、上記の方法によって算出することが困難な場合、輸入者は、輸入申告実績に基づき「通常要すると認められる運賃および保険料の額」として「税関長が輸入申告実績を基に毎年決定する公示額」を当該輸入貨物の運賃及び保険料として申告します。
つまり、航空運賃特例における保険料は、以下のように「運賃率表」と「保険率表等の資料」によって輸入貨物に係る単位当たりの運賃と保険料を求め、これに基づいて算出しましょう。算出された額を基に申告することになります。
FOB 価格帯 | 付保されていない貨物に係る
通常の運賃 |
付保されている貨物に係る
通常の運賃及び保険料 |
6万円以下 | 次の式により算出される額:
FOB 価格×0.095 |
左欄の額に 3,000 円を加えて
算出される額 |
6万円超
10 万円以下 |
6,100 円 | 9,100 円 |
10 万円超 | 次の式により算出される額:
6,100 円+(FOB 価格-100,000 円)×0.023 |
(FOB 価格に左欄の額を加算した後の額が 100 万円以下の場合)
左欄の額に 3,000 円を加えて算出される額 (FOB 価格に左欄の額を加算した後の額が 100 万円を超える場合) 左欄の額に次の式により算出された額を加えて算出される額: (FOB 価格+左欄の額)× 0.003 |
参照:https://www.customs.go.jp/koujigaku/koujigaku20240401-20250331b.pdf
※適用期間:令和6年4月1日から令和7年3月 31 日まで
※FOB:FOBとは「Free on Board」の略。インコタームズ(国際貿易取引条件)の1つで、「本船渡し」「本船積み込み渡し」のことを言います。
航空運賃特例において注意すべきこと
・評価申告制度
評価申告制度とは、課税価格を求めるための計算方法です。具体的には、インボイス価格だけでは課税価格が求められない場合に利用されるものです。例えばキャラクターなどのライセンス料などインボイスに記載されていない費用を加算する必要があります。この場合には、評価申告書IIで明示しなければならないことになっています。
評価申告制度と航空運賃特例が両方が適用されるときには、評価申告書IIだけでなく評価申告書Iの提出も必要です。課税価格を求める際には、航空運賃特例によって算出された運賃及び保険料も考慮する必要があるので注意が必要です。
・特殊貨物
危険品などの特殊貨物の場合には追加料金が必要になることがあります。そのため、事前に確認しておくことが必要です。
まとめ
航空運賃特例は、特定の条件を満たした場合のみ適用される航空輸送を利用した際の高額な運賃による課税負担を軽減するための制度です。輸入コストの削減と輸送の迅速化を両立させるために、多くの企業が活用しています。
航空運賃特例用の可否や課税価格の計算など複雑ですので、不明点がある場合には、取引先の通関業者や、税関の担当者に相談をすることをおすすめします。